陸の孤島『ライブシアター栗橋』に行ったことはあるだろうか。
都内から電車で1時間、さらに徒歩で30分の場所にあるストリップ劇場だ。
劇場の多くは歓楽街や駅の近くにあるのに対し、田園地帯にある特異な劇場である。
その立地ゆえ一見客は少なく、場内は『見覚えのある客』、
いわゆるストリップに通いなれたファンによって占められている。
入場料は都内の劇場より1,000円ほど高い。
交通のアクセスも不便。
では、なぜ栗橋に客が集まるのか。
ひとつは出演者の良さにあると考えられる。
過去の出演者を調べると、実力と人気を備えた踊り子が多い。
それぞれに客を抱えているから、固定客が通うのは理解できる。
場内が明るいため、ポラが綺麗に撮れるという付加要素もあるだろう。
しかし、それだけではない。
この劇場の最大の特徴は、精神面で踊り子と客の距離が近いことだ。
周囲に娯楽がない閉鎖空間で踊り子と客が長時間一緒に過ごすことによって、
両者の間に特別な感情が生まれているのだ。
それは踊り子と客の会話を聞いていてもわかる。
他人だが近しい関係である会社の同僚や、サークル仲間と話すような気安さがある。
場内に一見客という『外敵』がおらず『見覚えのある客』ばかりなので、安心感があるのだろう。
俺はこの光景を見ていて、ある事件を思い出した。
1973年8月にストックホルムで発生した銀行強盗の人質立てこもり事件だ。
銀行という閉鎖空間で強盗と人質が長時間一緒に過ごすことによって、
被害者であるはずの人質が、強盗の手助けをしたり警察の邪魔をしたのだ。
後にこの心理状態は『ストックホルム症候群』と名づけられた。
栗橋に来る客はこのような特別な感情を求めて来ているのかもしれない。
俺はこの心理に『クリハシ症候群』と名付けた。