こんにちは。いわもんです。

まだまだ不自由な生活が続きますねあせる
昨年のマラソン大会の中止ラッシュの頃は、「今年はダメでも来年こそは…」となんて希望を抱いていましたが、今年も年内の大会はなかなか難しそうですね。

この原稿を書いているのは2021年の9月上旬ですが、ここ数日のニュースは新型コロナウイルス関連を除くと、自民党総裁選についての記事が紙面を賑わしています。
一方で、今回のテーマである「銀行」についてのニュースも2つほどありました。

1つは、某メガバンクの障害ですね。金融機関は社会インフラの一部で、数年に1回発生するだけでも大問題なのに、今年に入ってからでも6回目で、一体をやっているんだろうと呆れてしまいますね。プンプン

もう1つは、住信SBI銀行やSBI証券を運営するSBIホールディングスが新生銀行に対し、TOBを始めるというニュースです。このSBIは「第4のメガバンク」構想というものを掲げ、地方銀行(地銀)への投資を活発化させています。アップ

 

菅総理が以前、「地方銀行は多すぎる」とコメントをしましたね。地銀の事業はその地域での寡占となるので、本来は独占の有無など厳しくチェックされるのですが、政府は独占禁止法の特例法を制定し、地銀の再編を後押しする姿勢を示しています。
このように、近年地銀の再編が注目されており、前述のSBIの動きもこの再編の動きの一つとして注目されています。

なぜ、再編が必要なのかはてなマーク
それは、地銀に限らずメガバンクも当てはまるのですが、収益性や今後の事業環境が厳しいからです。
少子高齢化による人口減少、そして人口の都心集中によって、そもそもπが少なくなっています。
また、預かったお金をより高い金利で貸し付ける金利差の利ざやを得ることが銀行の本来のビジネスモデルの核ですが、長年の金融緩和による低金利で利ざやが稼げません。そもそも、金利が下がったところで、企業の投資意欲が乏しく、貸付ニーズがない状況にあります。
そんなπが少ない中、同じ地域で複数の地銀がより低金利で客を取り合う過当競争を続ているため、地銀の体力がどんどん損なわれているのです。

また、『フィンテック』という単語が出てくるように、他業種から銀行の一部機能を脅かす流れも出てきています。

企業体力が弱くなれば支店を統廃合せざるをえなくなるなど、社会インフラとしての役目を果たせなくなることを金融庁は危惧しているのです。びっくり

世の中の評価はどうかというと、株価指標の一つであるPBR(株価純資産倍率)は軒並み1倍を下回っています。
1倍を下回ると、帳簿価額よりも市場価格の方が低い状態であり、解散価値より低いいわゆる「割安株」という状況です。低PBRの企業を見ると、ほとんどが地銀です。何と0.2倍台という地銀もあるんですね…。昔、IR(投資家向け広報)をやっていましたが、IRに積極的な企業とあまり重視していない企業は二分割されるものです。IR活動の現場で地銀はほとんど見かけなかったですね。上場している以上、もっと企業価値向上に努めるべきだと思いますが。キョロキョロ
また、少し前まで新卒の人気業種トップは銀行でしたが、既に敬遠されているという報道もあり、就活生の人気も落ちてきています。

このような状況に対し、地銀の現状、そして今後起こり得る再編の可能性について解説している本が今日ご紹介する本です。

 

 

著者は、銀行の勤務経験があり、銀行業界を分析するアナリストを長年務めていた方です。
なかなか過激なタイトルですが、その内容は悲観的なものではなく、また著者の主観の偏りもなく、今後起こり得るであろう流れを正確に分析されています。

目次は次の通り。
第1章 適者生存の時代
第2章 悩み多き地銀
第3章 3つの道
第4章 持続可能な地域金融
今後再編の展開(頭の体操)
地銀64行の独自分析

 

第1章では、これまでの金融業界の歴史を振り返っています。スルガ銀行の問題もありましたが、この環境下での銀行の収益源のあり方の解説は勉強になりました。

 

第2章では、地銀の現状と現在のビジネスモデルの限界について触れられています。この章で腑に落ちたことは、そりゃそうだろと言われればその通りですが、日本の銀行法では銀行は「株式会社」であることを求められているということです。よく銀行は「銀行は雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」と揶揄気味に言われますが、株式会社であれば他のステークホルダーがいて、しかもほとんどが上場企業であれば企業価値向上が求められるわけですから、社会インフラがどうこうは置いておくとすれば、危険なところには投資をしない、より収益性のあるところに投資をすることは、企業経営にとっては至って当たり前のことなんですね。だからこそ、小説やドラマで描かれるジレンマみたいなものが生まれざるを得ないんですね。

 

第3章では、第2章での課題を踏まえ、「持株会社への移行」や「業務提携」等のメリットやデメリットについて著者独自の視点で考察されています。前述のSBIの動きについても細かく解説されています。

 

第4章では、第3章で紹介された3つの道の先にある展望について述べられています。

その後にも、さまざまな見解が述べられており、付録の地銀64行すべてについて現状の評価と今後の課題等のまとめはなかなかの読み応えです。身近な地銀の分析を読むと面白いのではないでしょうか。

 

このような事業環境下だけではなく、近々、東証の市場再編とコーポレートガバナンス・コードの改訂も控えており、上場企業としての地銀のあり方にも厳しい目が向けられることとなります。

 

私自身、経理をやっているので、金融機関の担当者とそれなりに接触しています。それもあり、この本の客観的な分析はとても勉強になり、より興味深く今後の再編について注視できるようになりました。

興味を持った方はぜひ読んでみてくださいウインク