中小企業診断士の津賀です。三球・照代師匠を思い出して、昭和8年に出来た御堂筋線をどうやって入れたのか気になり、調べたところ、「梅田から牛で平野町まで引っ張り、搬入口から入れられた」とわかり、すっきりした今日この頃です。

もはや、今、僕の中ですっきりしないのは、STAP細胞の一件がどうだったのかってことです。誰が、何を、いつ、なぜ、どのように捏造したのかということが今一つはっきりしない中で、小保方さんを始め、関係者の処分が決まって、一応の幕引きをしたというところ。僕は科学者ではないので、STAP細胞の科学的な検証には知見がありません。もしかしたら、STAP細胞を再現できる科学者が今後現れるのかもしれませんが、そこはノータッチ。理研という組織で1科学者の捏造意図で、ここまでのスキャンダルが起きる組織構造や組織文化といったものに興味があるというところです。

利害関係者が多い割りに、捏造の極悪人は小保方さん1人で、他の人は濃淡あるけど過失としての体(てい)で処分を受け、捏造あるいはそれを幇助したとはされていないようです。日本どころか世界の頭脳集団のような科学者による共著の論文において、小保方さん1人の捏造意図でこんなことができるなんて。。。通常は思えないですよね。

そのあたり、背景やら僕自身がニュース、新聞で見切れていないことが前提として不足しているため、わけのわからん推理小説のようなストーリーに仕立て上げたような話(製薬会社の陰謀だとか、小保方さんが魔性の女だとか、国からカネを取るためだとか、笹井さんが山中さんへの対抗心からだとか的な)も、一応それっぽく仕上がったりするため、僕自身、思考が気持ち悪くなってしまっていました。

実際、AMAZONで「STAP細胞」で検索すれば、これはこれは・・・な本がたくさんw

そんな中で、選んだ本はコレです。

捏造の科学者 STAP細胞事件/文藝春秋

¥1,728
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もちろん、この本が真実という保証も無いわけですが、毎日新聞の科学環境部記者で本件の関係者とも情報交換の多かった著者であることから、報道されている事実をベースにもっとも情報量の多い方の著書だろうという意図で選びました。

結論から言えば、本を選んだ意図としては”当たり”でした。科学環境部記者らしく、一定の科学的見地から関係者の話をかみ砕くことができ、科学者達からの信望も得て、メール等で多くの情報を持っていたことをベースに書かれており、否定する材料の無い憶測で推理小説を作ってしまう人の本が多そうなこの事件において、事実と意見を峻別しながら書かれていると思います

ただし、「誰が、何を、いつ、なぜ、どのように捏造したのか」という問いには、明確な答えを与えてくれるものではありませんでした。それでも、STAP細胞が発表されてから、捏造と認定され、著者が懇意にメール等のやりとりをしていた笹井氏の自殺のことまで、よくまとめられた本だと思います。疑問の完全な払拭にはならないまでも、ここまで事実中心に究明されているSTAP細胞の本はそうは無いかもしれません。

興味が重なり、連続して↓を読む予定ですw

日経サイエンス 2015年 03月号/日経サイエンス

¥1,440
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さて、書評というか所感というかですが

1)主な論文への関係者、小保方さん、若山さん(元理研、山梨大教授)、笹井さん(自殺、理研CDB副センター長)、丹波さん(多能性幹細胞研究チームリーダー)、バカンティさん(ハーバード大教授、小保方さんの人件費を負担)のかかわり方、これまでの業績、立場、本事件での言動がよくまとまっているように思います。

2)上記人物の小保方さん以外の方の「日本人」科学者の業績が本当に素晴らしいもので、本論文でも、そのネームバリューが大きく影響し、生データの検証などが行われない論文に至ったように言われています。

3)バカンティさんが謎。在米ということもあり、バカンティさんへの日本の記者への追求は甘いしね。科学者としてのこれまでの業績も微妙な感じがしないでもないです。もっとも、天下のハーバード大の調査はしっかり入り、バカンティさんは1年間の長期休暇(実質的に左遷?)に入っているため、確実に「クロ」な人だと思われます。

4)バカンティさんは、小保方さんのハーバード大における師匠であり、実際ここが黒幕なんだろうなとは僕の感じ方なんだけども、その「バカンティ-小保方ライン」のSTAPネタに、ノーベル賞候補レベルの日本の科学者達(笹井さん達)が踊らされてしまっていることは、科学云々ではないところで、会社組織上の問題なんだとして、しっくりきました。

5)だから、論文発表して、すぐにネット上で科学者たちから、突っ込みが入るようなことをノーベル賞候補者達の目をすり抜けて、発表されてしまっているのだと。

一言にすれば、「ハロー効果」ってやつですね。

ハーバード大教授の提唱で、その秘蔵っ子たる小保方さんに対して、理研の科学者達がハロー効果でやられてしまい、そういう研究者への敬意なのか、生データや実験ノートの確認までは失礼かな?みたいになって、できていません。

小保方さんの人件費を払う主がハーバード大であり、理研では、既述ビッグネームの科学者が複数小保方さんに関わり、誰が小保方さんの管理者として実験の有効性を担保するかというところがあいまいなプロジェクトになっているように思います。論文の査読(査読者非公開)などでは、科学の世界は非常に厳しいように思うのですが、身内のやりとりについては、甘くなってしまいがち・・・なのかもしれません(そうじゃない科学者はたくさんいるとは思います)。

バカンティさんの愛弟子として理研にいることをで、また、若山さんや笹井さんといった超一流の科学者達が共著のため、双方の領域への突っ込みが甘くなってしまうこともハロー効果ですね。「誰々のやった仕事だから大丈夫」という信頼は確かに必要ではあると思いますが、外部に報告する際の品質のチェックというのは、内部の信頼関係を崩すものではなく、外部への信頼を担保するものだと自分自身再確認できました。

結局、この組織上の問題としての行き着くところは、一次データの重要性とか、現場の確認とか、普段から気をつけるべき基本動作ってことか~。だとすると、しっくりくる反面、レベルの低い話として処理されてるな・・・と

ま、とにかく僕と同じように、STAP細胞の一連の流れについて、一定以上の品質のまとめが見たいという方、オススメです。

ただ、小保方さんやバカンティさんほどの人達は、捏造の意識があったのだとしたら、いずれこうなるリスクを容易に予知できたと思います。それでも、捏造することにどれだけのメリット(動機)があったのか、その部分は引き続き、僕の疑問として残るようです。執筆時期が2014/11なので、もう少し経ってから、さらに事実を重ねたものをリリースして欲しいなとも思います。