織部泰助著『死に髪の棲む館』を読みました。

 

 横溝正史賞を受賞ということで、そういう先入観があったからかもしれませんが、横溝っぽい作品です。とはいえ、角川ホラー文庫に入っているのでホラー小説かと思っていたら、本格ミステリでした。一言でいえば、ホラー風味のある本格ミステリです。

 

 ある人物の自伝のゴーストライターを務めるために九州の山村を訪れた主人公。その家では男が髪の毛で首をつる自殺事件が起きていた。その家は死者に髪をつめるという奇妙な風習があった。さらに死体に付き添う「死に番」という習慣もあり、主人公は死に番を任されてしまう。すると、死体が入れ替わっていた、という事件です。その後も事件が続きます。そこに怪談師の女探偵が現れ、主人公とともに事件に挑みます。

 

 冒頭に家の見取り図がついていて、最初から本格味満載です。内容も密室だったりアリバイだったりと、王道本格ミステリをやっています。無妙という怪談師のキャラクターがたっていて、これは好みが分かれそうです。幽霊の話が出てきたりして怪談味はあるのですが、この探偵役が登場するシーンというか、その会話がけっこうコミカルで、ホラー度を下げている気もします。作者は1990年生まれで、私より10歳以上若い人ですが、若い人が書いているなあ、という感想です。

 

 後半は仮説が立てられては崩されるを繰り返す展開で、アントニー・バークリーのロジャー・シェリンガムものを想起させます。総じて本格ミステリのつぼを押さえている感じで、ファンなら楽しめる出来だと思います。