プライド 4話 「男の友情と女の意地」 (2)


ハルは、ロッカールームで渉に渉専用のユニフォームを渡します。

ハル:「はい、容子さんにはこれ」

そう言って、ハルは封筒を渡します。

容子:「里中君.....」  

ハル:「パートやめられたって聞いたし。これからは、毎月俺が、ちゃんと」

そう言って未亡人の容子にお金を渡すハル。

容子:「必要ないの。気持ちは嬉しいし、とってもありがたいんだけど、本当にもう大丈夫なのよ。パートやめたって言ったのはね、新しい就職先が決まったからなの」
  「兵頭さんに紹介して頂いて。来週から勤めるの」

そこへ兵頭が入ってきます。

兵頭:「里中。他人の余計な心配はもうやめろ

ハル:「他人?いや、安西さんは俺の」

兵頭:「彼女を縛るのはよせ

ハル:「縛る.......?」

兵頭:「死んだ亭主を思いながら生きる、か.......。それはな、女を物としてしか考えてない男のエゴじゃないか」

ハル:「エゴ.....?」

兵頭:「ああ。エゴだ」

ハル:「でも安西さんが容子さんを愛したってのは事実でしょ?」

容子:「里中君」

兵頭:「愛などと簡単に口にするな。おまえは今まで誰かを真剣に愛したことあんのか?」

里中:「はい?」

2人は近づいて睨み合います。

容子:「やめて!」

ハルはその場を後にします。

容子は立ち止まって、

容子:「あなたはどうなの?」

容子は部屋を後にします。


 
その頃、友則は1人でこの前ハルと訪れた、サークルのいるバーへ。


そしてその頃、大和と百合は車内から海に沈む夕日を眺めています。

百合:「綺麗ね。夜景の次は海辺の夕日?」

大和:「ちょっと、定番すぎたかな」

百合:「ううん。正攻法で攻められる方が嬉しい。誕生日とか、クリスマスとか、キリスト教徒でもないクセにやっぱりシャンパンにバラの花にロウソクって、女の子みんな弱いと思う

大和:「意表をつかれるのは苦手?」

百合:「時々は楽しいかもしれないけど、安心感の方が大切かな。嘘とか隠し事されるのが一番苦手

大和:「嘘?」

百合:「一編で嫌いになっちゃうかも

しかし、大和はここで勇気をふりしぼって、本当の自分を明かします。

大和:「俺、ほんとは金持ちなんかじゃないんだ。この車も、実は借り物なんだ。......そう言ったら君がガッカリするかと思って言えなかったんだけど。だけど、君への気持ちは本物なんだ。誓って嘘なんかじゃなくて」 


ここはしっかりと気持ちを伝えて、男気を見せた大和。

百合:「そんなこと気にしてたの?」
  
大和:「え?」

百合:「あなたがお金持ちじゃなくても、あたしはもうあなたを好きになってるから。いまさらお金なんて関係ない」

大和:「ほんと?」

百合:「ええ」

嬉しくなって、大和は百合の手を握ります。

キタァァァァ......!!!!!(ノ_・、)

イイ男とイイ女.......やっと結ばれる.......最高!!

大和は感動して、百合に口づけしようとします。

と、百合はクスクス笑い出します。

大和:「えっ?」

百合:「こういうのって楽しいわね。お互い分かり合った嘘つき合って」

大和:「あぁ.......ああ」

サァァァァァァ.............(;゚∇゚)

先程の歓喜はなんだったのか......絶望感が押し寄せます。

大和は大きく息を吐きます。


 
その頃、友則は真理子の仲間らに殴り倒されていました。

友則:「お前らにはもう金はやらねぇ~!

蹴られ殴られのやられたい放題の友則......。



その頃、ハルは亜樹の家を訪れます。

亜樹の家をノックするハル。

亜樹は気付いていながらもドアを開けません。

そこで亜樹がくしゃみ。

ハル:「いるじゃん」

亜樹:「留守です」

ハル:「寒いから開けて」

亜樹:「じゃあ合言葉を言ってください」

ハル:「メイビー?」

亜樹:「ブー、外れ」

ハル:「あ、えー、カワイイ亜樹ちゃん?」 

亜樹:「嬉しいけどブー」

ハル:「わかんねぇよ」

亜樹:「じゃあ開けられません」

ハル:「なんだよそれ、もうめんどくせーな」

亜樹:「あんだって?」

ハルは笑って、
ハル:「今志村けん入ってなかった?ねぇ?あんだって?何.....何だこの野郎」(モノマネ)

亜樹がドアを開けます。

亜樹:「あたしはね、理由もなく怒ったりしません。ただ、ヌルい人が嫌いなの。ズルい人にムカムカするの

ハル:「それどっかで聞いたんだよな」

亜樹:「誰かさんの偉そうな発言です

ハル:「誰かさんって.....あ、俺か

亜樹:「あたしは、言うこととやることの違う人は大嫌いなの。スポーツマンなのに、タバコプカプカ、お酒ガブガブなんて全然ストイックじゃないわよね?

ハル:「わよね

亜樹:「だけど、まだ若いのに、引退後の生活考えてるなんて、もっとスピリッツに欠けるんじゃないの?

ハル:「また宇宙戦艦がママになんかチクったでしょ?

亜樹:「聞いて良かったわ。ハルがそんな人だったなんてね

ドアを閉める亜樹。

それにしても、宇宙戦艦て......笑

なぜかクスッと笑うハル。

ドアに向かって、
ハル:「俺的には、そういう亜樹の.....そんな感じ好きですね。......正義感が強いっていうか、心のキャンバスが白い感じ」

亜樹は一瞬ドアを見ます。

ハル:「あ、ねぇ、ねえ?でもさ、絵の具はちゃんと選ぼうよ。っていうか、安い絵の具に染まんのはやめようよ

相変わらずポエマーなハル笑。

亜樹:「な....何よ」 

そう言われたらそうなるよね~笑

ハル:「何よ、何よ偉そうに?」

亜樹:「何よ......」

ハル:「なんなのよあなたは。あなた何様よ?......俺はハル様だから。そうそう

亜樹:「あたしは、アキ様よ

ハル:「じゃあ、秋と春ってどっちが偉いんですかね

亜樹:「秋は実りの季節です。食欲の秋です

ハル:「でも、春よ来い~って歌はあるけど秋よ来い~なんてないじゃん

亜樹:「うん....じゃあ....えっと、うーん.....えっと......

ハル:「ああ、亜樹の方が偉いか」 

亜樹:「......え?

ハル:「ホラ、例のさ、橋の待ち合わせ彼氏、愛してたんでしょ?

亜樹:「.....そうよ。過去形にしないでほしいんだけど

動揺している亜樹。

ハル:「俺、そういうの知らねぇからさ、愛とか。だから、亜樹の方が偉いよ」

少しうつむく亜樹。

ハル:「あ、そう、友、友則いるじゃん?

亜樹:「え?」

ハル:「あいつさぁ、金持ちのボンボンにはまぁ確かに見えんだけど、親父がやってる会社、多分継がないと思うんだよね」

亜樹:「どうして?」

ハル:「いや、昔で言うと......二号さんっていうかさ、まぁ今で言ったら、愛人との間にできたっていう。未だに戸籍上も認知されてないみたいだし」

亜樹は驚きを隠せません。

ハル:「ホラ、アイツさ、今普段軽いキャラ装ってるけど、若い時はそれ知ったとき、もうヤツなりにグレたらしいよ。族とか入って。......で、同期で今のチームに俺と一緒に入って、まぁ当時は俺ともさんざんやり合ったんだけど、なんか、男同士ってなんかそういうとこ不思議なんだけどさ、あるんだよね。なんか、殴り合って理解し合うっていうのが。まぁ今時のガキはどうか知んないけど

後半、少し笑いながら話すハル。


亜樹もそれをドア越しに微笑みながら聞いています。  


 
その頃、友則はバーの屋上に一人で立っていて........




ハル:「......母親は愛情じゃなくて、父親に捨てられたくないという一心で自分を産んだ。そういう罪悪感からか、いい暮らしもして、小遣いも腐るほど貰ったらしいんだけど、本当にあいつが欲しかったのはそんなもんじゃないって。それを分かって欲しくて金を使ったっていうか、もう撒いたに近いんじゃない?友達にも知り合う女にも。でもそういうことにもだんだん飽きてきて、きっとあいつ自身で分かったんだろうね。周りの人間が、金のない自分には全く興味がないってこと。......で、いつしかホッケーに出会って、.....あ、氷の上だと、そういう空しさとか、全部消えるんだって」
  「......あいつ、ホンモンだよ。.......ホントのアイスマンだよ、アイツ」

亜樹は、ドアを見つめます。

ハル:「俺さ、なんかそういう、苦しんだり悲しんだりしたヤツのこと、好きだから。.......逃げないで、ちゃんと自分と向かい合ってるヤツ、俺、.........好きだからさ


寒そうにするハル。

亜樹は、ドアを開けます。

ハル:「寒っ」

亜樹は優しく、
亜樹:「どうぞ

ハルは亜樹の優しい顔を一瞬見て、中に入ります。



その頃、友則は屋上で、何万円もののお札が入った封筒を取り出し、お札をバラ撒いていて.........





「Face off」のトイレに立っている真琴。

やって来たハル。

ハル:「どうしたの?」 

真琴:「一時間も出てこないんです」

ノックしても返事がないので、ドアを蹴破って入るハル。

ハル:「友、お前どうした?」

友則:「やられちゃった」

咳き込む友則のシャツをめくり、真っ赤なアザに驚くハル。

ハル:「あいつら?」

真琴が救急車を呼ぼうとしますが、断る友則。

ハル:「金でけりついたんじゃないの?」

友則:「はめられたみたいなんだ。あいつら、学生の合コンサークルでさ、クスリとか金づる見つけると恐喝まがいのこともしてるみたいなんだ」

ハル:「学生が?」

友則:「チームに迷惑がかかりそうだ。......退部するよ」


ハル:「何おまえバカなこと言ってんの?」

友則:「俺、我慢したんだよハル。それでも俺我慢したんだよ。社会人としてさ」

ハル:「分かったよ、分かった」


亜樹:「ちょっと」

ハル:「ちょっと出掛けてくるね」

亜樹:「なんで?」

肩を貸しながら友則と外へ出ていくハル。

真琴:「ハルさん、まさかそいつらのとこじゃないよね?」

ハル:「まさかそいつらのとこだっつーの」

真琴:「よしなよ兄貴。下手したらヤバイ連中とかバックについてるかもしれないじゃん」

ハル:「声でけぇんだって......」

真琴:「こう言っちゃなんだけど、友さんの自業自得なんじゃないの

友則:「おっしゃる通りです」

真琴:「金が足りないっつうんだったら、もっと払えばいいじゃん」

友則:「あいつらキリがなさそうなんだよ」

真琴:「だって、ホッケーと関係ないでしょ?そんなことまでハルさんが付き合う必要ないスよ

ハル:「うちらオフェンスだからさ」


そう言って出ていくハル。

よく分かんないけど(←笑)............カッコいいいいいい!!!!!!!!(._.)(._.)(._.)(._.)

その後を追いかけていった亜樹。

真琴は大和に電話します。


運転するハル。

ハル:「おうちでお留守番してなさいって」

亜樹:「専業主婦じゃありませんので」

友則:「なかなか勇ましい彼女だね」

亜樹:「だって、こういう時、証人は必要でしょ?」

友則:「あー、しっかり者」

ハル:「でしょ?」

友則:「うん」

亜樹:「フザケてる場合なの?」

ハル:「フザケてる場合なの?」

友則:「フザケてる場合なの?、、ってあー、誰もいねぇや」

笑う2人。

亜樹:「......もう、バカみたい」 

友則:「俺たちバカみたいに牛が合うのよ」

ハル:「それ、馬だろ?」

亜樹:「昔、殴り合いのケンカしたから?」

友則:「話したの?俺、ボコボコにされたこと」

一方的にヤラれたと笑いながら話す友則。

ハル:「いや、でもね、おっかねぇのは俺が何度ブっ飛ばしても、こいつ起き上がってくんのよ、ゾンビみてぇに


友則:「まぁプライドですね。俺、こう見えてもケンカで負けたことないから

パンチパーマの友って想像できないでしょ?と爆笑するハル。

ハル:「今こんな軽いヤツだけど」

友則:「おいおいおいおい、君といい勝負です」

ハル:「何言ってんの、俺はだってちゃんと芯が通ってるもん。なぁ?亜樹ちゃん、ねぇ?」

亜樹:「いや、でも......」

ハル:「でもこいつ、ほんとおっかねぇのはブチギれると、椅子でもなんでも出しかねねぇかんね

友則:「泣くと凄いヤツっているでしょ?あれ僕」

笑う3人。

ハルは車を止めて、

ハル:「こうやってついて来てんのは、友のためだけじゃなくて何かあったらマズいから。それこそ、チームのため

友則:「でも大人になったのよ。今日だって寄ってたかって蹴飛ばされてたのに、我慢してたのよ

ハル:「我慢できればいいけどさ。......いきなり退部するなんて、何か怪しいじゃん」

友則:「バレた?

ハル:「バレバレだっつうの」 

友則:「ああ、すいません

肩を貸すハル。

亜樹:「なんかちょっといいなぁ

ハル:「うん?」

亜樹:「乱暴なのはともかく、古き良き時代の男って感じで」


亜樹も、肩を貸して歩き始めます。

ハル:「おまえ、特別だからな、このヤロー、何亜樹の肩借りてんの

3人はバーの中に入っていきます。

こういうの、いいよね.............(´▽`)



バーに残るメンバー達が慌て始めます。

口々から不安の言葉が聞こえてきます。

真琴:「ハルさん、本当に引退したら友さんの会社にって話、あるんですかね

少し、間を置いて、

大和:「そんなハズないじゃねぇか」

真琴:「え?だってそれ元々大和さんが」

うん、そうなるよね............( -_・)?

大和は立ち上がって、

大和:「なぁ、みんな、俺達さ、友さんのことどう思ってたんだろう?家が金持ちで、俺達と違って引退後の生活だって安心だよ。そういうの、どっかで羨ましいっていうか、妬みに近いものあったんじゃないかな?あの人、キャラ軽いし、ホッケーだってどっか一人だけファッションみたいにやってるだけだよ。そんな風にちょっと引いたような見方してたんじゃないかな」

実際そうなんじゃないんスか?、俺達とは本質的に違うよ、そんな声が聞こえてきます。

大和:「いや、俺だってそう思ってたよ!でも、きっとハルさんはそう思ってなかったんだ。じゃなきゃハルさんはもっと厳しいハズだろ?それで考えたよ。なんでハルさんは友さん庇うのか?自業自得な話についていくのかって。友さんさ、何もこんな激しいホッケーなんかすることないじゃん?金持ちのボンボンがやるにはあまりにもハードなスポーツじゃねぇか。ファッションでやれるほど、甘いもんじゃないじゃねぇかよ!それはさ、俺達自身が一番分かってるはずなのに」

真琴:「友さんも、みんなのそういう目、気づいてたでしょうね」

大和:「くだらねぇよな。それなのに俺は金があるとかないとか。......他の世界なら知らねぇけど、氷の上じゃ、そんなの関係ねぇよな!」

悔しがる大和。




無数の男女が3人を囲みます。

言いたいことはそれだけかい?、主催の男が言います。

ハル:「おめぇら気持ち悪いつってんだよ!モルモットじゃあるめぇし、雄雌くっつけたり離したり何やってんだおまえ」

男:「これからパーティーで貸し切りなんだ。言った通りの金を彼女に渡した方がいい」

ハル:「ねぇ、ほんとにできてるんだったらさ、友もちゃんと結婚するっつってんだから」

友則:「そ、きっちり認知します」

真理子:「あたしまだ結婚するつもりないから」

ハル:「だったらお互い楽しんだんだからさ、こんなことでデカイ金ねだんのやめろ、おまえ」

真理子:「傷付いたのよ。当たり前じゃない」

ハル:「はい?その晩持ってかれる軽い女が使う権利ねぇだろその言葉」

真理子:「なんですって」

亜樹:「そうよ、そんなの常識じゃ考えられない

ハル:「いいから亜樹は、ね?」

亜樹:「病院に行きましょうよ、これからあたしと一緒に。こっちだってそれを知る権利ぐらいあるわ」

真理子:「バッカみたい」

友則:「やっぱ嘘か。だよね?僕がそんなミステークするわきゃないもん」

亜樹が真理子の方へ歩いていきます。

ハル:「ややこしくなるから黙ってろおまえ」

ハルは亜樹に気付いて、

ハル:「亜樹、おまえ、亜樹!」

瞬間、真理子を平手打ちする亜樹。

真理子:「ちょっと」

亜樹:「サイテーね!そんな嘘つくなんて。女のつく嘘の中で一番ヒドい嘘だわ!


真理子:「何すんのよ!」

亜樹:「おかしいわよあなた達!なんか、ほんとに気持ち悪い。合コン合コンって気持ち悪い!」
  「.....女だったらね、出会いに運命求めなさいよ!!」

(;_;)(;_;)(;_;)(;_;)(;_;)
  
亜樹を見つめるハル。

これは........やられたな......ハル.......(;_;)

失笑する男女。

亜樹:「.......笑われたっていい。古いって言われたっていい。あたしは全然傷なんかつかない。あなた達みたいなのにどう思われたって、傷なんてつかない!」



友則:「もう行こう。こいつら何言っても仕方ないよ」

男:「どうでもいいけどよ、おまえ、何真理子ひっぱたいてんだよ」

突き飛ばされる亜樹。抱き止めるハル。

ハル:「ちょっと待てよ。大丈夫?大丈夫?」 


泣きそうになる亜樹。

ハル:「テメエ!!」

怒鳴るハル。
 
ハル:「今おまえ、男のクセに女に手上げたよな?」
 
友則がピースよらピース、と合図。

ハル:「学生さんたちさ、テメエら、消えろよ」

男:「なんだてめえ?偉そうに」

ハルの頬を触る男。

ハル:「この国から消えていなくなれっつってんだよ!」

ぶっ倒してしまった~~~~~~(笑)

友則に謝るハル。

遠巻きにしていた男女がゆっくり近づいてきます。

その瞬間、ドアが開きます。

入ってきた大和とチームのメンバー。

大和:「ハルさん!」

ハルが嬉しそうに手を振ります。 

(;_;)

フォーメーションを告げるハルに、

友則:「いいの?」

ハル:「メイビー?明日になったらこんなヤツらの顔覚えてないんじゃないの~?」

ハルは亜樹の肩に手をかけ、上着を渡します。

ハルが叫びます。

ハル:「みんなお疲れ!友くんお待たせ!

ハル:「パーティーだ!」

チームは躍りかかっていきます。

 


その頃、電話で話す容子。

容子:「あなたはとても強い人。きっと一人でも生きていける人よね。だけど、人間はみんな弱いのよ。あたしだって、安西だって、きっと里中君だってそう。弱い人間は愛なんか語っちゃいけないの?弱いから愛を語るのよ。だって、強い人間は愛なんかなくたって生きていけるハズでしょ?」

兵頭:「言いたいことはそれだけかい?」

容子:「あたしを恨んでるならそう言ってよ。あなたの帰りを待てなかったあたしを憎んでるならそう言って」

ん.........???( -_・)? 過去に何かあったのかな........???


兵頭:「いや、そんな風に思ったことはない。むしろこう思ってる。待たせた男が悪いんだと」

電話を切る兵頭。





翌日。

傷だらけの選手を見て驚く冴子。

冴子:「コーチ、なんとか言ってください」

ハルの前に来て、

兵頭:「偉そうに言ったんだがな、俺も、誰かを真剣に愛したことはなかったらしい

微笑するハル。

冴子:「なんなんですか?それ、コーチ」

兵頭:「新しい戦略だよ」

集合を叫ぶ大和。

冴子:「もう、なんなの?こんなんで今日の試合に........」

ハル:「勝つに決まってんじゃん!」


円陣を組み、開くチーム。




リンクに出た友則が、

友則:「おいおい、客席にかわいい子いるぜ」

大和:「いい加減にしてくださいよ、下手したら昨日だって警察沙汰だったんだから」

友則:「あの店示談にしたろ。まったく、そっちのが高くついたっつーの」

ハル:「なぁ、いい女ってどこいんの?」

大和:「なんスかハルさんまで」 

友則:「あそこあそこ、あの白いセーターの子」

ハル:「あー、あれ厳しいんじゃないの?

友則:「なんで?」

ハル:「身持ち堅いもん」

大和:「どの子ですか?」

大和の視線の先にいたのは、亜樹。

大和:「あっ!」

ハル:「あれきっと、古き良き時代の女だな

友則:「残念だけどそんな感じだね」

大和:「一見普通の女の子なんスけどね」

ハル:「それがなかなか手に入んないんだよなぁ

亜樹は視線に気付きます。

友則:「きっと出会いに運命なんて求めちゃってるんだろうね

大和:「もう心に決めた人とかいるんスかね」

ハルは、亜樹を見つめます。

友則:「もしそうならその男が羨ましいぜ」

大和:「手放したらきっと後悔しますよ」

そう言って、大和と友則はハルをあとにリンクを滑っていきます。



ハルが目を瞑って、拳をユニホームの左胸に当てます。

亜樹も、目を瞑って、拳をセーターの左胸に当てます。



目を開けたハルは、センターに移動します。

亜樹:「ハルー!」


ハルは、嬉しそうに振り返り、亜樹を見て笑顔を見せます。

亜樹も笑顔でハルを見つめます。







ホイッスルが鳴り、試合開始です。