プライド 4話 「男の友情と女の意地」 (1)
 

ロッカールームでモニターにビデオを入れ、選手に声を掛ける冴子。

モニターから流れたのはハルのドキュメント番組。

ハルに喝采を浴びせる選手達とは逆に、制止しようとするハル。   

そんなハルを羽交い締めにする真琴と友則。


その頃、総務課でも同じビデオを見ていた亜樹と知佳。

電源を切る亜樹。

亜樹:「消す」

羽交い締めにする知佳。(笑) 



ジムから出て来たハル達。

真琴:「いいよな~兄貴。絶対モテるよまた」

友則:「独り占めはダメよ、ハルちゃん。僕達はチームなんだから。食べ残しでもいいから獲物は分け与えないと」

ハル:「ハイエナかおまえは」


そこに、「あの、すいません、里中さんは?」という声。

数人の若い女性達が近付いてきます。

ハル:「.....なに?」 

真琴:「嘘。もう獲物が」

大和:「でも、まだ放送......」

女達がハルに歩いていきます。

友則:「カモシカだよ。みんないい足してるな。シェケナベービー、最高!」

その瞬間、パチンという音。

振り向くと、女に平手打ちをされているハル。

女:「サイテーね、あなた」

ハル:「サイテー?」

大和:「サイコーじゃなくて?」

ハルは頬を押さえて、

ハル:「メイビー......」





重々しい空気が流れるFace Off。

ハル:「なんとか責任取れって言われてもさぁ」

大和:「覚えてないんですか?その平田真理子って子」

ハル:「全然」

友則:「そりゃあマズいよ。いくらゲームっつったって、相手の顔と名前くらいはさぁ」

真琴:「兄貴謝っちゃいましょ。ここは素直に」

ハル:「なんで俺が謝んなきゃいけねぇんだよ、女の子に謝るようなことしねぇもん」

女:「開き直ってよくそんなこと言えるわよね。訴えるわよ?」

大和:「悪気はないんです!その、記憶が」

たしなめる大和達。

そこに亜樹達がやって来ます。

百合や千佳に合コンかと怪しまれる大和と友則。

大和:「全っ然違います。俺はたまたま居合わせただけで」

ハル:「今おまえたまたまっつった?」

女:「あなた達、どんな知り合いか知らないけど、こんな人達に関わり合わない方がいいと思うわ」

大和:「こんな人達!?」

友則:「この人だけです」

大和と友則は急に立ち上がり、ハルを指さします。 

亜樹はハルに近寄り、

亜樹:「なんかしたの?

ハル:「なんでそんな怖い顔すんの

真琴:「ちょっとしたおいたを」

亜樹:「おいた?」

女:「妊娠させたのよ

亜樹:「えーっ!」

ハル:「分かりやすいリアクションありがとう」

亜樹:「信じらんない」

ハル:「俺だって信じらんない

亜樹:「相手は誰?」

大和:「女子大生らしいです。今からこっちに」

亜樹:「サイテーね」

ハル:「あっそ」

女:「合コンで知り合ったその晩よ。彼女も軽かったかなって反省はしてるの。でも、その後何度連絡しても電話に出てくれないって」 

亜樹:「ひどい」

ハル:「俺非通知出ないじゃん」

女:「だから見かねてあたし達友達が」

亜樹:「そういうこと」
  「責任取って結婚したら

ハル:「結婚願望薄いんで


重い空気に誰も口を開けない......

ハルは相手に聞こえないくらいの小声で、
ハル:「なんか喋れよ、なんか喋れつってんの」

友則:「御愁傷様です」

手を合わせるみんな。

そこに亜樹が口を開いて、

亜樹:「でもね、彼ね、こうやって表面は軽いんだけど、中身はそうでもないと思うの」


そっかぁ.....ゲームとか言いながら亜樹はハルをよくよく理解してるもんなぁ...........

ハル:「そう。表はフンワリ。んで中はアンコビッシリっていうね。『およげたいやきくん』世代だもんな!俺らな

大和・友則:「うんうん」

亜樹:「ふざけないで!

ハル:「はい」

照れ隠しなのか本当にボケなのか分からなくなってきた.....笑

女はもう一度確認するために、
女:「あなた里中冬樹さんでしょ?」 

ハル:「だぁ.....?」

きょとんとするみんな......の中で1人考え込んでいる友則。

ハル:「ごめん。冬樹ってモト冬樹しかいないでしょ。いや里中は合ってんだけど、里中......俺冬じゃなくて、ハル。で彼女がね、ちなみに亜樹

亜樹:「いや、そんなのちなまなくていいから

そこに被害者の真理子がやって来ます。 

女:「こっちよ、真理子」

友則:「チーチャン、どっかで飲み直そうか

千佳:「なんで?お取り込み中じゃない」

ハルはとっさに立ち上がって、友則を指さし、
ハル:「チェックチェックチェックチェック!

大和と真琴に押さえつけられる友則。

女:「彼が、里中さんに間違いないわよね?」

真理子:「.....違う」

ハル:「よっしゃ!ホラ」 

ハルが笑顔でハイタッチを求めますが、シカトする亜樹。笑 

亜樹:「あ、じゃあ、本物はこの中にいるんですか?」

真理子:「もちろん」

大和:「その他人の名前を騙り、その後、電話も出ない残虐非道な男を指さしてください

友則:「長い前説ありがとう」
 
ハル:「ハイいくよ、せーの」

友則が自分を指さして、
友則:「自分でさしまぁす

千佳が友則をビンタし、
千佳:「バカ!

友則:「チーチャン?」

亜樹:「千佳?」

出ていく千佳の後を百合と亜樹が追います。

ハル:「ちょっと、亜樹?待て、亜樹」

大和:「百合さん」

そのまま出ていく3人。

飲み直すため、ハル達も友則を1人にして(わざと)出ていきます。


友則:「モト冬樹。今は友則。なんちゃっ.....」

真理子の笑っていない目に、重々しい雰囲気が漂います。







ハルは亜樹を車で送っています。

亜樹:「とにかく、疑いが晴れて良かったわね」

ハル:「心に染みました

亜樹:「え?」

ハル:「表は軽いけど、中身はある人って」

亜樹:「ああ。途中からね、やっぱりおかしい。ハルがそんなことするハズないなって思ったの

どこまでもいい女、亜樹.......わたしが男だったら完全に堕ちてますね。笑

亜樹からだんだん信頼されてきたハル。

ハル:「どうして?」

亜樹:「だって、同じゲームならあたしにだって同じようなことするハズでしょ?

ハル:「いや、亜樹にはなんもしないよ」

亜樹:「だから他の子にも何もしない」

ハル:「それはどうかな」

亜樹:「え?」

ハル:「秋は特別かもよ。特別大事にしてるから何もしないのかも」

特別とかいうパワーワード........いちいち女性を嬉しくさせるハル。

亜樹:「どうせ魅力がないだけでしょ」

ハル:「そんなことないよ、亜樹は心が綺麗だからね。紅葉みたいに、葉っぱが赤く染まって、眺めてるだけでいい。.......メイビー、ピクニックに行きたい気分......?」


これまたメイビーを上手く使いますよねほんと......

黙っている亜樹に、

ハル:「どうした?」

亜樹:「嬉しいな」

ハル:「え?」

亜樹:「ジョークでもそういうふうに言われると

ハル:「俺はジョークは嫌いだよ

亜樹:「嘘。大好きでしょ

ハル:「バレた?

亜樹:「バレバレ

クスッと笑う2人。

日に日にいいカンジになってきてますね......!


ハルは、亜樹の心情の変化を感じたのか、

ハル:「あの例の橋あんじゃん?」 

亜樹:「ああ」

ハル:「行ってんの?

亜樹:「うん、昨日も行った

ハル:「うん、そっか

亜樹:「うん」  

ハル:「うん

亜樹も、その意味を感じ取ります。

亜樹は笑って、

亜樹:「おやすみなさい、ハル

ハル:「おやすみ、亜樹

もう一度2人は笑顔を見せます。

部屋へ入っていく亜樹をじっと見つめるハル。

ハル:「......ゲームだっつーの」


1人だけの車内でハルは呟きます。


部屋に入った亜樹は、ぼんやりと机の上の写真を見つめます。

亜樹:「......ゲームだよ」


そろそろお互いを意識し始めるようになってきた2人.......



ロッカルームで、選手達が着替えています。 

ハル:「なんで俺がそんなのついてなきゃいけねぇんだよ」

友則:「キャプテンお願い。1人じゃ寂しいの」

ハル:「しょうがねぇなぁ、おまえ」

昨日のことで話している2人。

真琴:「でも相手学生ですよね?どうすんですか」

友則:「結局、手術の金と慰謝料って、そういう感じ?」

大和:「金ですか」

吐き捨てるように言う大和。

ハル:「どうしたの大和?」

大和:「ハルさん」

ハル:「うん?」

大和:「そんな金渡すのに付き合うことないじゃないスか。何が寂しいだよ。自業自得じゃないスか」

友則:「すいません」

ハル:「でも、ほら、な。1回こっきりのさ、合コンのその日に、持ってかれるような女なんだから、その子だって友の子かどうか分かんねぇじゃん」
 
友則:「まぁそうだけど、金で済むならいいからさ

大和:「だから俺はそういう考えが嫌いなんスよ!ハルさんもハルさんで、何ヘラヘラ笑ってるんスか。魚じゃあるまいし」

ハル:「ん......?ああ、ヘラ鮒っていう意味ね今の

友則:「ちょっと面白い」


その後も大和はハルに対抗するように真琴を庇ってやれなかった、とを話します。

ハルもだんだん気が立ってきます。

大和:「なぁ、どうしてだよ?ホッケーと関係ねぇじゃねぇかよ」

ハル:「何?だったら俺が何?イチイチお前らにそういうこと言わなきゃいけねぇのかよ?」

友則:「分かった。俺1人で行けるから。な?大和。悪かったよ俺が、な?、なっ?」

大和:「ハルさんさ、もしかして引退後のこととか考えてんじゃねぇだろうな?」

ハル:「ああ?」

大和:「どこまでホッケーやろうが限界なんて知れてるよ。みんなはさ、口に出さねぇけど、次の仕事の事とか頭のどっかじゃ考えてんだよ

ハル:「なるほどな。はーん。俺がこいつんちの会社に就職すること考えて、それで友にスリ寄ってるって、おまえそういうふうに言いてぇの?」

真琴:「大和さん、兄貴がそんなこと考えるわけないじゃないスか」

大和:「だったらどうしてだよ?らしくないじゃねぇかよ」

ハル:「まぁでもおまえの気持ちも分からないでもないけどね?おまえ彼女に嘘ついてるし?罪悪感っていうか?そんでこいつのな、車借りて僕はお金持ちですって言っちゃってるワケだしさ。まぁ実際金持ちに生まれてればこんな気持ち味わないですんだのにって思うかもしんないけどそれ仕方ねぇだろそんなの」

大和:「ちょっと待てよハルさん!俺がいつそんなこと言ったよ?」

ハル:「言ってなくてもな、顔に書いてあんだよキングコング」

大和:「どこに書いてあんだよ?真琴、鏡持ってこい、このヤロー!」

真琴:「はい!」

ハル:「言われて分かんねぇんだったら俺が書いてやっからよ。マジック持ってこい!」

真琴:「はい!ただいま!」

友則:「まぁはいはい。はいはい。もうやめて。もう私のために争わないで。もうこ~れ~以上~♪ってこの歌知ってる?」

ハル大和:「!!


二人は睨み合って、ハルは友則を連れて出ていきます。






駐車場でレンタカーを拭いている大和から、ハルとの話を聞いた亜樹。

亜樹:「それは大和さんの言っている方が正しいと思うわ

大和:「ですよね。真琴の時とハルさんえらい違いで」

亜樹:「引退後の就職なんて、そんなこと考えてるんだとしたらサイテーだわ
  「でも許せないな。特にハルがそうだと。他人のことヌルイとかズルいとか言ってた割に、なによ、自分だって汚いじゃない!

大和:「あの、今の話忘れてください」

亜樹:「忘れる?あたしは忘れないから2年もバカみたいに橋で待ってるのよ

大和:「ですよね」


そこに友則が車でやって来ます。

友則:「カワイイ後輩のおデートだからさ」

大和:「いいって言ったじゃないスか。レンタカーだったら借りてきたし」 

友則:「それじゃあ彼女に嘘バレるぞ」

大和:「全部話すつもりです」

友則:「またにしろよ。なんせ俺、チーチャンに貧乏人だって嘘ついてるんだから

大和:「なんでそんな嘘?」

友則:「真実の愛を見つけるためさ。なんちゃって。......金持ちだからって幸せとは限らねぇんだよ、早く乗れよ」

大和は友則の車を借りて出掛けていきます。

友則:「ハバナイスデイ!」