プライド 3話 「美しきリーダーの形」 (2)
ロッカールームで話すハルと兵頭。
兵頭:「前に言ったな。俺が安西に嫉妬してたって。その安西は、お前に嫉妬してたんじゃないのか」
ハル:「なんで安西が俺に?」
兵頭:「お前のほうが才能があったからだよ」
ハル:「バカ言うな」
兵頭:「一つだけお前にあって、安西にないものがあった。安西もそれを知ってた。知ってたからこそ、それを使わせなかったんだ。そして自分の真似をさせた。猿真似をな」
ハル:「俺が自分で真似たんです」
兵頭:「あのバカみたいな突進をか?それじゃあお前は安西を越えることはできない」
ハル:「安西さんを越えようと思ったことありませんから。ないね」
そこへ、友則たちが入ってきます。
友則:「ハル、お前が頼まないなら俺たちが頼むぞ」
「コーチお願いします、真琴まだやれます。可哀想だ。せっかく.......」
冴子:「いい加減にして。決定は変えら.......」
友則:「お前こそいい加減にしろよ。心ないのかアイスドール」
.....という言い合いが勃発する中.........
兵頭:「分かったよ」
兵頭を見るハル。
兵頭:「ワンアシストだ。次の試合でアシスト一本だけでもいいから決めてみろ。そしたら考え直してもいい」
冴子:「コーチ......」
友則:「ホントですか?真琴やれるよな?ホントにそれだけでいいんですね?」
ハル:「お疲れ」
部屋を出ようとするハル。
兵頭:「ああ」
安堵して笑みを見せた後、出ていくハルの背中を見る真琴。
真琴:「ハルさん........」
橋でひとりぼんやりする亜樹。
そして、ハルがいたのは公園。
容子:「里中くんは自分が嫌いなの?」
ハル:「え?」
容子:「あたしから見るとね、兵頭さんはあなたにとってもよく似てるの」
ハル:「俺が?冗談でしょ」
容子:「自分に似てる人が嫌いっていうことは、自分のこともどっかで嫌いなのかな」
ハル:「あの人と俺が似てるかどうかよく分かんないっスけど、自分のことがあまり好きじゃないってのはあるかもしんないっスね」
容子:「どうして?」
ハル:「きっと、冷たい人間だから」
夕方になり、橋から帰ろうとする亜樹。
そこへ、「亜樹」と声がかかります。
振り向く亜樹。
ハル:「声変えてみました。ビックリした?」
亜樹:「ハル」
ハル:「帰ってきたかと思った?彼氏」
ぼんやりする亜樹。
ハル:「あ、ごめん。冗談過ぎたね」
亜樹の横顔を覗き込むハル。
百合とバーにいる大和。
大和:「君のお母さんはお金で苦労したと言ったね」
百合:「ええ」
大和:「だけどお母さんは君に言ったのかい?お金があったら幸せになれたのにって」
百合:「何が言いたいの?」
大和:「誰かを愛したら、お金なんていらないって思うんじゃないかな。.......本当に誰かを愛したら」
百合:「別れ話?」
大和:「え?」
百合は立ち上がって、
百合:「あなた、いい人ね。でも価値観の違いは仕方ないみたい」
お辞儀をして、
百合:「さよなら、もうしつこく電話したりしないから」
出ていこうとする百合。
その背中に、
大和:「俺でもいい!」
振り返る百合。
大和:「君は誰かをちゃんと好きになるべきだ」
大和は立ち上がって、
大和:「......俺でいいなら、俺でもいい」
一方、ハルと亜樹は亜樹の家に。
夕食を作る亜樹。
亜樹:「冷たい人なんて言って悪かったわ」
ハル:「はー、察するにまた大和かなんかがフォロー入れたでしょ?」
亜樹:「高校の時の話を聞いたの」
ハル:「あいつホントベラベラ喋るんだから」
亜樹:「一人で責任を取らされて、あなたは退部に」
ハル:「そうだったっけね」
亜樹:「チームのためを思ってした練習、それなのにあなたはまた一人ぼっちに」
ハル:「ピンポンパンポン。迷子のお知らせです。里中ハルくんがまた、一人ぼっちに」
亜樹:「口には出さなかったけど、辛かったし、懲りたはずよね?」
ハル:「さぁどうでしょう」
亜樹:「だから、今度のことは違う。きっとなにかワケがあるはず」
なかなか真面目に答えないハル。
亜樹:「ねぇ、教えてそのワケを」
ハル:「亜樹にそういうふうに言われると辛いんだよなー。ワケなんか別にないから」
亜樹:「嘘よ」
ハル:「いや、俺のこと、いいように思ってくれてる大和とかさ、その大和からバトン受けて、俺の事信じてくれようとしてる亜樹にはほんと悪いんだけど、ないんだよね。特に理由が。ただ俺はなんて言うか......」
亜樹:「なんて言うか?」
ハル:「ヌルいヤツとズルいヤツが嫌いなの。.......一番目指さないヤツムカつくんだよね」
真琴たちはFaceOffに。
一人で飲む真琴に、友則は心配している様子。
ハル:「自分は自分らしくあればいい。なんて、はなっからそういう言い訳用意しているヤツら見てるとヘドが出るんだよね。で、今度はさ、一番になったヤツのこと妬んで、グチ言って、努力もしないで、酒飲んでタバコ吸ってさ、適当にここらへんでいいだろうって諦める。そういうヤツほんともうムカムカすんの」
「だから、高校の時はそういうヘラヘラしてるヤツらにヤキ入れたっていうか気合い入れただけで、懲りてる?反省してる?別に。一人になった?構わないね。全然。そういうヌルいヤツらとつるんでる方がキツいから」
亜樹も気が立ってきた様子。
亜樹:「じゃあ、彼のことは?真琴くんの」
ハル:「いや、あいつはチームにいらないんじゃないかなって思って」
亜樹:「一番になれない人だっているわ」
ハル:「そんなこと分かってるよ。分かってるけど、俺が言いたいのはそこじゃなくて........」
「諦めないで、目指せってこと」
「自分らしくあればいいなんてさ、限界まで目指したヤツだけが最後に言えることでしょ。目指したヤツが、一番になったヤツのこと、心から認められるっていうか、尊敬できると思うし。.....絶対あいつキツかったって」
亜樹:「それがあなたのプライド?......そんなの誰もついてくるはずないわ。......あなたには、誰も」
鍋が焦げているのに気付き、キッチンに戻る亜樹。
その時、考え込んだ表情を見せるハル.........
そしてその表情を横から見ていた亜樹..........
真琴:「俺、帰ります」
うつむきながら店を出る真琴。
百合と大和は夜景の見えるホテルのスイートルームに。
バスローブ姿の百合が上半身裸の大和に身を寄せて、
百合:「うれしい」
百合を抱きしめる大和。
ハル:「どうして?」
亜樹:「一人にしてくれないのかって?........ピンポンパンポンって2回も言うからよ」
ハル:「しつこかったんだ?」
亜樹:「そうね」
ハル:「そっか........」
ロッカールームに向かう2人。
薄く開かれたドアから明かりが漏れていて、、、そこからは啜り泣く声が。
ドアの前で亜樹を制するハル。
中にいたのは、ユニフォームを取り出して泣いていた真琴。
ハルの気持ちが痛いほどよく分かる亜樹は、黙って手を繋ぎます。
翌日、会社で知佳と話す亜樹。
亜樹は、知佳に昨日の橋での出来事を話します。
亜樹:「あたしね、知佳、あたしオカシイんだ」
知佳:「何が?」
亜樹:「その時ね、内心凄くホッとしてる自分を感じてたのよ」
知佳:「彼じゃなかったことが?」
亜樹:「そう。そしてね、そんなふうに感じた自分に、もう一度ドキッとしたの。待ってようって決めたのに、あたしは内心、もう少し、このままでもいい。ううん、むしろ、今はまだ戻らないでいてほしい。そんなふうに考えていたのよ」
知佳:「ゲームだなんて契約するからよ。......心、壊れちゃうよ」
亜樹:「だって仕方ないでしょ!ハルは........」
手に持っていた書類を落とす亜樹。
一方、チームは試合前。いつも通りに円陣の掛け声が入りますが.........
立ち上がったのはハルと大和のみ。
「悪いけどハル、俺たちもうお前のことキャプテンだと思ってねぇから」「ちょっと頼りないっスけど、友さんを新キャプテンってことで」.......そんなキツイ言葉が飛び交う中、あたかも気にしていないかのように「じゃあよろしく!」と言いリンクを出ていくハル。
当の真琴は納得いかない様子。
真琴:「おいちょっと待てよ!俺そんなの知らねぇぞ」
選手:「お前はまたハルさんに余計に気遣うからさ」
真琴:「フザケんなよ、何言ってんだよ!あんたら何も知らねぇくせに」
崩れていく空気。
真琴:「俺の気持ちだって、一つも分からねぇくせに」
友則:「お前、フザケんな。みんななぁ......」
真琴:「知ってたのはコーチとハルさんだけだよ。俺のいくじなしの気持ちを」
「..........相手はブルドーザーみたいに突っ込んでくる。半年前に体当たりでアバラやられちまって、それから俺は、試合に出るのが怖いんだ。ハルさんやコーチには気付かれてる」
「でも、もう足がすくんで、自分でも情けねえけど、どうしようもなく怖えんだ。ホッケー好きだけど、ブルッちまってるから、もう俺はダメなんだよ!」
泣きながら立ち上がって、
真琴:「兄貴を悪く言うな。あんたら見たことあんのかよ?兄貴の自主トレ。ハンパじゃねぇよ!普通じゃねぇよ!悲鳴あげるかぶっ倒れてるよ!兄貴はそんだけホッケーに賭けてんだよ!ホッケー愛してんだよ!おい。その兄貴がキャプテンに相応しくねぇだと?.......寝ぼけてんじゃねぇぞ!」
真琴は泣きながらリンクへ向かいます。
亜樹と知佳が会場で応援している中、百合が遅れてやって来ます。
ノロケが爆発する百合。(笑)
第3ピリオド直前。
兵頭:「島村、最後だぞ」
緊張する真琴。
大和:「大丈夫だよ。お前のフォローはみんなでするから。とにかくお前はワンアシスト上げろ」
真琴:「はい」
ハルはチラッと兵頭を見ます。
終了まであと2分。
相手センターが真琴めがけて突っ込んできます。
真琴はその迫力に一歩も動けません。
1分前。
ハルはまた兵頭と目を合わせてリンクへ入っていきます。
真琴は思い切って自ら相手センターに突っ込んでいきます。
「邪魔なんだよ小僧」と言葉をかけられた真琴。
真琴:「バカにしやがって」
その時、あの時の、ハルの「俺とどっちが怖い?」「俺とどっちが怖えか聞いてんだよ!!」という怒鳴り声を思い出します。
真琴:「チクショー、テメエなんかより、兄貴の方がずっと怖えんだよ!!」
突っ込んでいく真琴。
友則:「真琴!」
真琴は倒れこみます。
大和:「ハルさん見ろ!」
真琴と目が合うと、パスのサインを送るハル。
真琴:「兄貴.........」
パックに飛び付くようにスティックを振り上げる真琴。
友則:「バカヤロ、どこ出してんだ!」
相手オフェンスの前に走るパック。
しかし、瞬間風のようにハルがパックを奪います。
目の前に立つディフェンス。
冴子:「ハルさんパスを出せない。アシストは消えるわ」
兵頭:「見せてみろ。お前の才能を。.......その足首の柔らかさを」
鋭角なラインを切り、ディフェンス達を置き去りにするハル。
ハルの頭の中に、真琴の泣き顔が思い出されます。
そしてハルは真琴の方を向き、目を合わせて微笑します。
ゴール裏まで来たハル。
大和:「真琴!」
真琴:「兄貴......」
真琴は立ち上がって走り、ゴール裏のディフェンスを振り払います。
ハルがゴール前に走り、シュートしようとする時、ゴール横を全速力で駆け抜ける真琴に気付きます。
パスを出すハル。
真琴は正確にパスをハルに返します。
パックを受け取ったハルは一瞬、真琴に笑顔を見せます。
そして、シュート。
パックがゴールに突き刺さります。
時計が0を示すと同時に歓声が上がります。
ハルと真琴の名を呼ぶアナウンス。
チームメイト達は真琴を囲みます。
泣く真琴。
ハルは、観客席から退部する2人の選手を見つけ、
ハル:「お疲れ」
選手は笑顔でうなずきます。
ハル.........やっぱりいい人......(感動)
部室で1人、退部届けを握りながら泣く真琴。
そこに、やって来たハル、大和、友則。
ハルは咳払いして、
ハル:「何ジメジメしてんだバーカ」
真琴:「ハルさん、あの.......」
ハル:「ほら」
真琴に何かを投げるハル。
真琴がキャッチした手を開くと、中にはパックが。
(`;ω;´)ジーン
もっと泣く真琴。(私もとうとう泣きました)
ハル:「泣くなよ、お前」
ハルさん、、、このセリフはみんな弱いよ.......泣くよね......
.......ということは、あの「俺とどっちが怖ぇ!?」はハルの真琴への愛のムチ(言い方クサすぎ)だったんですね......(感涙)
ハルと大和は笑いあって、「チキンハ~ト~」と叫んで真琴に走りかかっていきます。(泣ける)
友則も終始笑いながら部室を出ていきます。
真琴とじゃれあうハルと大和。
真琴........ほんっと良かったね.......(ノ_・、)
照明の落ちたリンク、1人製氷車の上に座ったハル。
亜樹:「こんなとこにいたの?」
ハル:「また社員証見せて入れてもらったの?」
亜樹:「警備員さんに顔を覚えられたみたい」
ハル:「カワイイから?」
亜樹:「カワイイから」
「みんなフェイスオフで待ってるわよ」
ハル:「うん。でもねママ。あいつらが、僕がキャプテンだって認めないって」
亜樹:「そんなことまだ根に持ってんの?」
ハル:「ごめんなさい」
製氷車に上がってきて座る亜樹。
ハル:「危ないから気を付けてよ」
亜樹:「お優しいのね」
「で?」
ハル:「で?」
亜樹:「ピンポンパンポン。今夜も一人にして欲しいの?里中ハルくんは」
ハル:「いや。みんなのとこ行こうか」
亜樹:「ほんと?」
この時の顔よ。めっさ可愛すぎるぜ。
ハル:「うん......?何?」
嘘だぁ分かってるクセに~
亜樹:「ディフェンスの動きって目で分かるのよね?」
ハル:「うん分かるよ」
亜樹:「じゃ当てて」
亜樹の瞳を覗き込むハル。
それにしても二人とも瞳ほんっと綺麗だ~!!(そこかよ)
ハル:「.......もう少し、二人でいたい」
意表をつかれた(...よね?)亜樹は.........
亜樹:「ハルがね」
ハル:「亜樹がね」
即答するハル。
数秒間沈黙し.......
二人笑って同時に「メイビー」。
ハル:「ドライブでもする?」
亜樹:「ん?」
ハル:「言うなよ?」
二人は、製氷車に乗ってリンクの上をドライブ。
こん時の二人の笑顔がたまんない......!
ハル:「もう少し、二人でいたい」
亜樹:「ハルがね」
ハル:「亜樹がね」