四畳半は今や昔
畳の上イグサの匂い
質屋で買ったアコースティック
かき鳴らしては
僕のつまらない不平不満を
聞くのは満月だけ
青年時代の日々は安いカメラ
無造作に置かれて残り香の様に
今日の僕ともまた出会う

風が鳴らす風鈴の音は
夏でもないのになんて
そう思えば思うほどに
不格好に鳴って
窓から半分体を乗り出し
人のいない真夜中の裏通り
孤独に揺られ
待っていたのは約束のない誰か
頼みの綱の街灯の灯が
消えたって
一体誰が気付くのでだろうか

ノートに書いた屁理屈の様な
誰かに対する当て付け
丸めてゴミ箱に投げたって
一つも入りやしない
やがて紙飛行機にして
部屋から飛び去ったけれど
アルコールぐらいじゃ
割りきれないから
今日の一日の何気ない僕を
歌にしたけど
所々破れたノートの言い訳は
明日に持ち越す言い訳

あの頃の小さなアパート
ドアに鍵もなく
失くす物もほとんど無い
海を泳いで沖へ行き
たゆたうその水は
少ししょっぱい
やがてあの部屋も記憶の中にだけ
駅のホームでスーツを着て
満員電車を待つ朝に
行き先にも
カギをかけた部屋にも
なぜか不安を感じているから
溺れかけた僕の口に入る水は
あの頃よりも確かにしょっぱい