古い木の柱に書いた
小さな二人の名前
畳の藺草の匂いに抱かれて眠る
二人の何気ないありふれた暮らし
うとうととする私を起こす
冬の日とストーブの上のやかん
小さく温められた音が
窓の外の雪に夢まで冷えた私の側で
ほんの先の熱気に溶けた
凍えるには近すぎる距離で
寂しいねってただそれだけを君は
聞かせない様にでも心から
眠りにつく私に言った
街が着飾る雪化粧に
まだ変わらぬ二人の暮らし
いつかの日と同じく若い
そんなわけにも私もいかず
やがて今日の日も少し苦い思い出になって
何に抗うかも分からぬ私は
よれよれの背広一人でかける
君が願った心のままの私ではないから
しばらくぶりしか開けない
あの日々の鍵
机の上のやりかけた仕事
薄い給料袋に埋もれた私
怖かったのはきっとこんな暮らし
どこにいるかも分からぬ君に
受話器を取って何かを言った
捨てられた何かに突き動かされて
若かった日の二人の約束
許されなかったわけじゃないのに
許されなくなる前に私が捨てた
窓の外はいつかと同じ
雪が降っては街は彩り
ストーブつけて
あの日の君と同じ
だから今日ぐらいはせめて少しだけ凍えていたい