リカ(松岡茉優)は、一週間後に留学する黒井(古泉葵)と仲良くなります。そして、一緒に自分たちの日常で生まれる音を録音していきます。それは2人にとって、思い出を記録する行為でした。
この作品で、黒井が口にする印象的な言葉があります。それは、「人との距離の取り方は大切」という主張。
2人がまだ知り合ったばかりの前半、ゴミ捨て場の場面でそれは聞く事ができます。
リカが向かい合っていた黒井の隣にイスを持っていき、そこに座ります。すると黒井は、リカに対して「近いよ」と嗜めます。そして、他人との距離の取り方を語ります。
しかしそんな黒井が、日常の音を採集する過程でリカとの距離が縮まっていきます。この、2人が音を採集する場面はとても多幸感に満ちたものでした。他の生徒に溢れた廊下を2人並んで足を踏み鳴らしながら行進したり、工事現場の砂山をわざと足音を立てて上って行ったり。彼女たちにとって2人の時間は、音の採集と同時に一緒に音楽をつくり出す時間でもあると感じました。もともと1人で音を採集していた黒井のそれは、日常の音でした。しかし、リカと2人で音を採集し始めてからは音楽活動のようになっていました。
そして黒井の留学前日、彼女は隣に並んだリカに顔を近づけて行き、キスをします。始めはリカが隣に座るだけで「近い」と不快感を露にしていた黒井が、自らリカに顔を近づけて行くようになっている。ここで近づいていったのがリカではないことが、この場面を価値あるものにしています。キスをせまる/せまられる側のポジションだけで、一人の少女の”変貌”が、とても自然で爽やかな形で描かれており、心が晴れやかになる青春映画でした。

