罠
私は新聞の書評欄で興味の湧いた本があったらとりあえずメモをする。私の手帳にはそれ専用のページがある。
後日、本屋に行って自分なりに探してもなぜか見つからない。そう、私は探すのが苦手なのである。行き当たりばったりの人生なのだ。まぁ、そんなことはどうでもいいか…。
んで、目当ての本を探し続けるのだけれど見つからないわけで、その内、だんだん悔しくなって、仕方なく降参してカウンターの店員さんに尋ねる羽目になる。
店員さんはテキパキと書籍のタイトルをパソコンに入力する。パシッとEnter Keyを叩いて1秒くらいモニターを見つめた後、颯爽と本棚に向かう。
私は手持無沙汰なので本でも読もうかと鞄に手を入れるけれどその瞬間、ここは本屋さんだからあるまじき行為だと反省して腕時計を見る。12時42分30秒だ。確か10秒くらい前に店員さんが立ち去ったから、本を探すのにどれくらい時間がかかるのか計ってみよう、と思いつつ自分に呆れる。そして、そうだっ!雑誌の立ち読みをしようと決心した途端に店員さんが戻ってきて「これですね」と自慢げな顔をしてレジの前に立つ。
それは”罠”。
私は本を探していただけで買うとは言っていないのに店員さんは何か勘違いしているのだ。困惑している私に店員さんは微笑みながら強烈なテレパシーを送る。「カバーはお掛けしますか?」と。
さて、人生にはいろんな選択肢がある。しかし、自分ひとりで選択肢を探すのは効率が悪い。だから誰かの助けが必要だ。そっちの方が効率的だし選択の幅も広がる。でもね。選ぶ、選ばないは自分次第だ。短い人生で限られた選択肢の決定を相手に委ねちゃいけない。ましてやカバーまで掛けられると最悪だ。
私はレジの脇で探していた本をめくって買わない決心して12時49分に本屋を出た。