今日は、昆虫鶴見さんへのインタビュー後編です。
■昆虫に興味を持つようになったきっかけを教えていただけますか?
僕は、小さい頃「集団行動」が苦手だったんです。子どもが沢山集まってバーベキューするときなんかに、みんなと関わらずに草むらにいたりしました。
親はそれを嫌がって、心配していましたね。
で、そうやって草むらにいると、探しているわけではないけれど色々な昆虫が見つかるでしょ?そんな風に自然と昆虫を見つけていく中で、だんだん興味が湧いてきたんですね。
人と関わるのが苦手だった子ども時代。草むらでの時間がきっかけで、現在は昆虫について教える立場になられたということですね。今日のイベントでは、昆虫鶴見さんと関わることで、子どもたちがイキイキと笑顔になっていく瞬間を何度も拝見しました。現在はむしろ、人と関わるお仕事をしていらっしゃるというのが面白いですね。もしも、幼少期に、ご自身の意に反して集団の中に溶け込もうと無理をなさっていたら、、、今のように「好きなこと」をお仕事にしていらっしゃったでしょうか。
そうですねぇ。「みんなと一緒に」って無理をしていたとしたら、今の僕はないんじゃないかと思いますね。
このお話は、子育て中の私(ひょっとしたら子育て中の読者の方々)にとっても為になるお話のような気がしてなりません!後ほど、じっくり聞かせていただけますか?
えぇ。喜んで。
■面白い生態の昆虫を教えていただけますか?
(ここで、昆虫鶴見さんがいくつか写真を見せてくださいました。)
①ゴイシシジミ
ゴイシシジミという蝶です。普通は幼虫(イモムシ)の頃って、葉っぱを食べるんです。でもゴイシシジミの幼虫はアブラムシを食べます。「みんなは葉っぱを食べているけれど、生き残る為にアブラムシを食べてみようかな~。」といったところでしょうか。不思議な生態です。
幼虫界の異端児!面白いですね~!
②ヤママユ
ヤママユという蛾です。ヤママユの幼虫は、葉っぱを食べます。では、成虫になったとき何を食べると思いますか?
え!?樹液?花の蜜ですか?いや、逆にアブラムシとか!?
実は、成虫になったとき、何も食べないのです。幼虫の時に蓄えた栄養のみで、1カ月以内に死んでしまいます。この間に子孫を残すのみです。何故この道を選んだのかと思われます。大きさは「手のひら」くらいなんですよ。
何も食べないのですか!?驚きです。極端な昆虫ですねぇ!
③ヒメシロカゲロウ
ヒメシロカゲロウは寿命が短いことで知られています。どれくらいだと思いますか?
セミが一週間とかいわれるじゃないですか。ですから、、、1~2日くらいで死んでしまうとか?
④ルイスツノヒョウタンクワガタ
ルイスツノヒョウタンクワガタです。クワガタなのにエサは樹液ではなく、他の昆虫!肉食性のクワガタなのです。分布もなぜか海(太平洋)に面している地域だけという変わったクワガタです。
クワガタって、その強そうな外見とは裏腹に、温厚に樹液を吸う姿が印象的だったのに。そんな肉食系クワガタが存在するなんて初めて知りました!
■面白い生態の昆虫をご紹介いただき、ありがとうございます。話が戻りますが、小さい頃に、集団行動が苦手で、ご両親が心配されたというお話を、もう少し詳しく聞かせていただけますか?
そうですねぇ。特に父親は「公園でみんなと遊んでこい!」とかよく言っていました。
お父様のお気持ちもとっても良く分かるのです。私は、「みんなと同じじゃなくてもいい!私はこうしたい!」という子どもの個性が見えた時、「いいねぇ~!」と思うタイプなんですね。それでも時々、子どもに対して「周囲と同じになればいいのに、、、。」と思うことがあるのです。「みんなと同じ」という状況は、親に「謎の安心感」を抱かせることがあるのです。
それは良くないですねぇ。「グループからもれるとダメ」とか「一緒じゃないとダメ」という人が多い気がします。「誰かがやるから、俺もやる」という「自分」がない人が多いと思うのです。そうやって過ごしていると、自分が本当にやりたいことが見つからない。
(うなずいて)他人に合わせてばかりいるうちに、他人の軸で生きてしまうということでしょうか。他人とは自分以外の全ての人ですから、軸が無数になってしまう。これでは、「自分の人生を生きている」という実感が湧きませんね。
そうですね。「みんなと一緒に」って無理をしたらダメですね。昆虫の世界でも、変わった虫の方が進化しているんですよ。
先ほどお話しした「ゴイシシジミ」「ルイスツノヒョウタンクワガタ」なんかは、まさにそうなんです。みんなと同じ行動をしていると天敵に狙われやすいから、「ちょっと違ったことをしてみようかな。」という進化ですね。そうすることで、生き残るわけです。一例ですけどね。
面白いですねぇ。
自分自身に対しても、子どもに対しても、「ヘンテコ」な部分を、ますます大切にしてあげられる気がしてきました。親が子どもに対して「みんなと同じ」という安心感を抱いたときこそ、もう一歩踏み込んだ目で見守るべきなのかもしれませんね。「この子は本当にそれを望んでいるのかな?」「無理しすぎていないかな?」という視点って、「みんなと同じ」の安心感の影に埋もれてしまいがちなのかもしれません。今日は、昆虫の魅力から、素敵なお話まで!本当に有意義な時間をありがとうございます。
僕も楽しかったです。でも、今回ご紹介したのは、ほんの一部です。昆虫の魅力は、まだまだこんなもんじゃないですよ~。
■こうして、インタビュー取材が終わりました。私がちょっと苦手としていた昆虫の世界は、実はとっても魅力的な世界でした。昆虫鶴見さんの穏やかなお人柄、知識はもちろん、撮影された写真の美しさにも心惹かれます。
※前編、後編、使用した昆虫画像は全て昆虫鶴見さんにお借りしたものです。
タマムシ
ヒメスズメバチを食べるオオカマキリ
↑羽ばたく瞬間や、捕食の瞬間。美しすぎます!
私のちょっと苦手なカマキリが、透き通るように美しい!こんな風に思ったのは初めてでした。
(↑カメラを構えている昆虫鶴見さんとオオカマキリ。ファインダー越しにバッチリ目が合っていますよね。すごい迫力です。
)
大きな森に、身近な林に、いつも通りかかる小川に、小さな虫たちの世界はいつも存在するのですね。
前編、後編と最後までお読みくださり、どうもありがとうございました。
昆虫鶴見さん
小さな頃から昆虫に興味を持ち、鶴見緑地を中心に昆虫採集、飼育、標本作成を行う。
ネイチャー大阪をはじめとする自然環境保全協会の、昆虫担当として参加者に昆虫の魅力を伝え続けている。
生物分類技能検定2級という資格を保持。
自身のブログ生き物に魅せられてでは、昆虫の深い知識と美しい写真に魅了されるファン多数。