こんにちは。
最近、ノンフィクションの本を読むことにはまっています
自分の頭のキャパシティにない情報を得られるのは、とても良い刺激になるなぁと思います。
けれど、全ての情報が記憶に残るかといえば…残念ながら、ほとんど覚えられないのが現実。
ということで、今回は「失われた芸術作品の記憶」という本を読んで、
個人的に残しておきたいなぁと思った事柄を紹介します。
◆サンドロ・ポッティチェリは自分の絵を破壊しようとしていた!?
イタリア・フィレンツェのウフィツィ美術館にて展示されている「ミロのヴィーナス」や「春」。
これらの絵画が今でも見られるのは、実は奇跡のような事だったのです。
事の発端は、修道士のサヴォナローラ。彼は説教が非常に上手く、教会の堕落を批判して、贅沢品(芸術品はもちろん、流行の服やトランプなども)を燃やすよう、フィレンツェの人々に訴えました。
サヴォナローラの説教に感化された人の中の一人にポッティチェリもおり、自分の絵を燃やすため、フィレンツェのシニョリーア広場に作品を運んだそうです。
さいわいなことに、「ミロのヴィーナス」や「春」は、彼の手元になかったため燃やされず現在でも美術館で保管されています。
この破壊行為を「虚栄の焼却」と呼ぶのですが、サヴォナローラはこの1年後、拷問の末殺されて芸術作品を燃やしたシニョリーア広場で焼かれました。
◆イギリスの大泥棒アダム・ワースと名探偵ピンカートンの絆
ゲインズバラ作の「デヴォンシャー公爵夫人」という絵がイギリスで有名なのは、この絵を巡る事件のため…といっても過言ではないでしょう。
絵のモデルとなったのはジョージアナ・スペンサーという女性で、ダイアナ妃の祖先にあたるそうです。
この絵は、アメリカの大銀行を設立したJ.P.モルガンの父によって落札されますが、その後、何者かに盗まれて、25年間行方不明となってしまいます。
その窃盗犯こそ、イギリスの大泥棒であったアダム・ワースです。彼は泥棒でありながら、モラルがあり暴力や殺人は一切犯さず、また、お金がない人たちへ手を差し伸べたりもしていたそうです。
しかし投獄中に部下と妻に裏切られて、盗んだ絵以外の全財産をなくしてしまいます。
彼は、泥棒を引退して彼の家族(子供が2人いた)と過ごしたいと考えるようになり、盗んだ絵を返却して「身代金」を得ようとしますが、自分に不利な条件を美術館が提示してきたために、絵を返せず25年間も自分で持っているしかなかったようです。
そこでワースを助けたのが、名探偵のピンカートンでした。ピンカートンは、名探偵ホームズのモデルとなった人物で、ワースのライバルでした。しかし、彼らの間には信頼や尊敬という絆が芽生えていたのでしょう。
ピンカートンは、絵の返却の仲介役をしてワースにきちんとお金も入るようにしました。さらに、ワースの死後は、彼の2人の子供の後見人として、彼の事務所で雇いました。2人の息子の父が泥棒であったことも、ピンカートンは隠していたようです。
泥棒と探偵の絆…といえばフィクションの王道ですが、実際にそんな事があったと知って感慨深くなりました
◆ミケランジェロの下書きは残っていない…?
ローマのバチカンにあるシスティーナ礼拝堂天井に描かれた「最後の審判」や、「ダヴィデ像」を作成したミケランジェロは、努力を世間に見せまいとする人だったそうです。
当時、イタリアの芸術家は、努力の跡を残さないという「スプレッツァトゥーラ」という精神を大切にしていました。ミケランジェロもこの精神に基づいて、自身が描いた下書きや素描を、彼の死の直前に燃やしたようです。
ただ、当時より芸術家として有名だった彼のアトリエにはよく侵入者が入り絵を盗んでしまっていたことから、皮肉にも下書きや素描が現代にまで残っています。
ほかにも、自分の気に入らない作品を破いたり塗りつぶしてしまった画家はたくさんいますが、その気持ちは私でもよく理解できます。
今ならば相当の価値になっていただろうに…ともったいなく思う反面、失敗作を残しておくほど、恥ずかしく気持ち悪い事はないですから(笑
以上、個人的にビックリした、失われた芸術作品に関するエピソードでした!