説得する力
- 説得する力 (日文新書)/日本文芸社
- ¥840
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メジャーリーグの野茂秀雄やダルビッシュの交渉代理人を務めた
団野村氏が自らの経験を通して「説得する力」について述べた本。
...
野村氏は、選手を巧みに口説いてメジャーリーグに行かせて儲け
るブローカーみたいなイメージがあり、あまり良い印象は持ってい
なかったのですが、何となく惹かれて読んでみました。
野村氏は「感情で交渉が左右されてはならない」としています。
本書では、交渉中大喧嘩した相手と、何事もなかったかのように
食事したり、取引したりした話が紹介されていますが、それは
「交渉は交渉」と割り切っているからこそ出来ることだと思います。
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球団と選手の間には線引きをしなければならない。
中途半端にその両方に足を置いてはならない。エージェントという
のは、選手の側に立たなければならない。
常に経営者と闘ってゆく姿勢が大事なんだ。
球団と喧嘩をしろとはいわない。ただ主張するところは主張する。
そして出来る限り説得する。それがいい代理人だ。
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彼は、アメリカでも日本でも、説得で重要なのは信念を持ち、それ
を曲げないことだとしています。
喧嘩した交渉相手と、何事もなかったように食事に行ったり出来る
のは、選手のために最高の条件を勝ち取るという信念があるから
なのでしょう。
頭に来ることはあるでしょうが、感情で交渉が左右されてはならな
いのです。
本書を読んで感じたのは、交渉能力や説得力はテクニックやスキ
ルではなく、信念や軸、物事の判断基準をどれだけ強く持っている
かという事です。
話はずれますが、精密小型モーターのトップ企業の日本電産とい
う会社は、37件ものM&Aを行ってきた会社ですが、同社がM&A
する会社には以下のような確固たる基準があるそうです。
①回るもの、動くものに関わる企業
②自社の事業を補完する可能性を持つ
③技術力が経営者の責任で存分に生かされていない事
軸がしっかりしていれば、主張すべきところは主張できるし、そこに
力も入る、判断基準がしっかりしていれば迷いは少ない。
逆に言うと、軸がぶれ判断基準が曖昧だと、交渉相手との関係を
心配して、言うべき事が言えず、妙な妥協をしてしまいがちになる。
読む前は、野村氏ならではの説得力のテクニックが書かれている
事を期待したのですが、残念ながらそういったものはありませんで
した。
信念を持つ事、主張すべきことは主張すること、感情で交渉されて
はならない、という基本的な事を大事にしているからこそ、アメリカ
で交渉代理人という厳しい世界を生き抜いて活躍しているのだと
思います。
冒頭に、野村氏に対してはあまり良い印象を持っていないと書きま
したが、読んだ後の印象は、けっこう良くなりました。