ハケンの仕事がなくなって 仕方なく息子は親の仕事を手伝っている
その やる気のない息子の態度にたまりかねて 父が口をひらいた
 
父   おまえ いったい何が気にくわないんだ?
息子  べつにぃ
父   べつにじゃない 言ってみろ
息子  ダセーよなあ この頭
父    頭?
息子  てっぺんがペッタンコだ チョーかっこわりい!
父   仕事してる男の頭じゃないか
息子  ふん 地味すぎる 頭ひっぱたかれて穴あけて…
父   穴あけは希望だよ
息子  どこが
父   穴がないと糸が通らん
息子  そんなん知らねえよ
父   硬い革を繋げるんだ しかも手で縫って完成するんだ
     そしてトートバッグはできあがる
息子  ふん
父   そこに何が入ると思う?
息子  キョーミねえよ
父   希望だよ 夢だよ しあわせだよ
息子  カンケーねえよ
父   要するに 希望と夢としあわせに深くカンケイしてるってことは
    立派な仕事なんだぞ 父さんとおまえの仕事はさ!
 
父が自信に満ちたまなざしで振り向くと 息子はどこかへ遊びに行ってしまったらしく消えていた
 
海ふみこ
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           ラッパが鳴った

     軽トラのお豆腐やさんがきた
     すぐ脇のミニ公園のベンチに
     いつも並んで涼んでいる仲良し三人組が腰をあげ
     隣の棟とその隣の棟からも人が出てきた
 
     きょうは案外涼しいね
     ひと雨きたからやっぱりね
     キヌちょうだい
     トコロテンある?
     豆乳二本ね
     あげ二枚ちょうだいね
 
     軽トラ囲むいつもの顔
     そこへ
     徐行しながら乗用車が帰って来て
     窓から顔出して
     お豆腐一丁ねと男の人
     ゆるゆると三輪車こいでくる子供のうしろを
     ベトナム人の若い父親と母親
 
     そらには縞模様の赤い夕焼け
     花壇には
     ひまわり ふよう 赤く熟れたミニトマト
     ひぐらしだって鳴きはじめて
 
     しあわせの道具立てが揃ってるね
     とつぶやくと
     それが今の若い人はそう思わないんだよね
     とお豆腐やさんが笑う
     そうね 私も若いときそうだったかも
     と私も笑う
 
     海ふみこ