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六月の朝は

森に露が宿る


その中で凛と佇む

リリーの花は

艶やかな碧で嘘を退けて

花は美しく

外は純白 内は金色

まるで女性の様でしょう?

明日の少女が感じたように

あたしが誰かを喩えたように



矢車草も花をつける

健気な乙女の夢を匂わせて

少女の憧れの目にほめられて

海の青さをうたっている



あたしの庭のブルーベリーは

もうすぐ染まる実を守り

いつか訪れるその時を待っている



赤いランドセルを背負っていた

かつて少女だった学生は

誰かの家の前の道で

今年もグミの実を拾う





前に覚えたような

喜びが

再びあたしの人生に流れ込むことはないのでしょう


それに相当する悲しみも

あたしの中からは消えた以上

きっとその中で輝いていたそれも

もうあたしが味わうことはないのでしょうから



もう同じ匂いを嗅ぐことができないように

同じ風が再びと吹かないのと同じように

きっとあのときのあたしの心も還っては来ない

二度と物事は同じにはならない

朝ごとに何もかも皆 新しく移り行く以上

元のように全てが元通りにはいかないのでしょう


どんなにそれに似せることはできようとも

何か事欠けてしまう

なのに無意味にそれを求める意味が

今のあたしにはあるでしょうか

あたしが今欲しいものは何でしょうか



温かな過去の時間でしょうか

いい香りのするお茶の味でしょうか

誰かともう一度 今度は西風の季節にその道を歩くことだったでしょうか

いつまで甘えようというのでしょう

あたしはただ もっと幸せになりたいだけ

いつだかに覚えた喜びを もう一度と願っているだけ

ただ 駄々をこねて 大人の声を待っている子猫同然



そんなあたしをあたしは好きでいられるでしょうか

愛せない自分がいることに ただ

苛立っているだけなのではないでしょうか



いつの日か

ある夜の夢に描き出した

うつくしい「いつか」の光景の待つ日に辿り着く


今のあたしのままで

あたしはその日の訪れを迎え入れることができるでしょうか

正直に まっすぐに

そこにいる人々とかかわり 接することができるでしょうか



『誰かの為』という

弱い人がする言い訳に気づいたのに

それをまた繰り返そうとするのはやめましょう


あたしはあたしの為に生きることを認め

自らにとって最も良い道を辿り きっと

その日の訪れへと導かれるときを待つの



自分に正直に 素直に生きられないのを

何かのせいにするのはやめましょう


何もかもがあたし次第

その朝がうつくしく思われるかも

そのいつかの日の訪れを信じるのかも

あたしの心ひとつで自由だわ




日々が平淡でやや窮屈に思われるのは

それが穏やかで安らぎに溢れているせい

誰かが 何かが悪いわけでもないわ

幸せに満ちているせいで

麻痺してしまいそうになっているだけ


近くにありすぎる物の在り処が分からなくなってしまうのと同じ

その籠にいる一羽が幸福の青い小鳥だと気づけないのと等しく

鳶色の青年との絆がどのようなものだったかを気づくのに

恐ろしいほどの年月をかけた灰色の目の乙女のように



あたしも気づきさえすれば

こんなにも愛おしい しあわせな日々はないでしょう


よろこびはいつも

息を潜めて

あたしが気づき捕まえるのを待っているわ



明日の少女は言っていたけれど

「いつかきっと やって来るのよ

ある美しい朝 目を覚ましてみると

それが明日なの

きょうではない 明日なの」 と


あたしはきっともう

うつくしい朝の日々を迎え入れ

明日と呼ばれる世界の中を生きているんだわ



酔ってしまいそうなほど

幸福で よろこびに彩られた日々


そこにはかつての色は残っていないけれど

思い出が眠っている

花たちが昔話を語り継いでいる



白百合の季節がやって来たのです

雨露に濡れながら

森の神秘と 誰かがくれたうつくしい物の数々を

囁き あたしに説いています


やがてその座をまた

別の花に譲ろうと

あたしは忘れません

またいつかそこにその花が咲くことも

いつかきっと 誰かと出逢えることも

そのときのよろこびはどんな色をしていることでしょう



あたしは前よりも きっと

あたしらしくなって

あなたの前に現れることができますように


この幸福を いつまでも

見失わずにいられますように