株式投資について考える上で、私にとってはターニングポイントがあります。
それは、証券会社に入社して3年目の夏です。それまで、支店営業でお客さまとのやり取りを楽しんでいた私に人事異動がありました。それはちょうど湾岸戦争がその年の初めに勃発し、平均株価は20,000円台、89年の高値から半値くらいのところを推移している頃でした。
それまでの、株は買って持ってれればいつか上がる、といった神話が崩壊し、信用取引、転換社債、ワラント等何をやっても損失が膨らむ一方、という時代でもありました。
お客さまとのやり取りを楽しむ・・・私のような証券マンにとっていちばん楽しくない、おもしろくない時代でした。

移動先は、「先物・オプション研修部」
従来の投資手法、従来の営業手法だけでは、お客さまに逃げられる一方になってしまった証券会社が、営業の現場サイドにも、本社のディーリングノウハウや株式手数料収入以外の収入ノウハウを学ばせることを目的とした専門部署です。

当時設立された研修部署は5、6部門あったと思いますが、記憶に残っている部門としては、
・株式先物・オプション研修
・為替・債券先物研修
・公開引受け研修
等でした。

ちなみに、数年前に設立されたマザーズ等の新興市場の開設やIPO市場の活性化は、当時の株式手数料およびエクイティファイナンス収入への偏重から脱却しようと、証券4社が公開引受けに関して取り組んだ産物だと思っています。

話を戻すと、私が所属した「先物・オプション研修部」には、当時各支店営業でメチャメチャ手数料収入を上げていた精鋭たち(一人で年間数億円という方も何名かおりました)が、全国から30名ほど集まり、証券会社の頭脳であるディーリング、トレーディング部門のノウハウを勉強しました。わたしはたまたま、理工系出身だったということと、まだ入社3年目ということで新しいものに対する吸収力を買われたのではないかなーと思っていましたが、とにかくラッキーな移動でした。なぜって?それは、証券マンといっても、本当のところ、専門的な投資手法を勉強する機会なんてまずありません。支店で勉強するのは努力と根性、夜討ち朝駆けの世界です。何よりそんな余裕はないのです。ディラー部門の現場などは支店にいるとまったくわからないのです。そんな知識を吸収できること、そして、何よりつらい営業をやらなくてもいいわけですし・・・

とにかく、そんな新しい環境での証券マンとしての生活はおよそ半年間あり、当時の私にとっては、毎日がノウハウ吸収の日々でした。

研修中私の教育担当だった先物トレーダーの先輩が一冊の本を見せてくれました。
ジョンJ・マーフィー著「先物市場のテクニカル分析」です。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4322218911/250-0331505-9995441
4,700円もする分厚い本なので、「貸して頂けますか?」とたずねたところ、「貸したって読まないし覚えないだろ!欲しきゃ買え!」といわれました。

あとにも先にも投資手法に関して私が本を購入したのはこの一冊だけです。