ここ数日で急に寒くなって一気に秋めいて来ましたね。こういう寒い気分を吹き飛ばすにはホットなJAZZを。ということで選んだのがこのアルバム。通称“カフェ・ボヘミアのジャズメッセンジャーズ”です。
「ハードバップの夜明け」を記録した1枚として現在も高い評価を得ているアート・ブレイキー・クインテットによる“バードランドの夜”が吹きこまれたのは1954年2月21日。そして“カフェ・ボヘミア~”は1955年11月23日と実に1年9ヶ月もの開きがあるわけでして、この二枚を聞き比べると当然と言うべきか大きな差異が見受けられます。
先ずはメンバー。「バードランドの夜」はクリフォード・ブラウン(tp)、ルー・ドナルドソン(as)、ホレス・シルヴァー(p)、カーリー・ラッセル(b)、アート・ブレイキー(dr)というメンバーでしたが、このバンドは(今考えても信じられませんが)仕事に恵まれなかったとのことでこのレコーディングの後ほどなくして解散しています。
しかしブレイキーとシルヴァーはその後も共に行動を続け55年2月頃「全員が対等」という触れ込みで新バンドを旗揚げします。それがこの「ジャズ・メッセンジャーズ」です。メンバーはブレイキー、シルヴァー以下、ケニー・ドーハム(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ダグ・ワトキンス(b)という布陣になりました。
メンバーはがらりと変わったわけですが「ジャズ・メッセンジャーズ」旗揚げ以前にも顔を合わせてるんですね。それが1954年11月13日と1955年2月6日に録音された“ホレス・シルヴァー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズ”というシルヴァー名義のアルバムです。このアルバム、参加メンバーは初代ジャズ・メッセンジャーズと全く一緒(だからこんなタイトルで発売したんだと思いますが)。そして旗揚げ前後と推測されるのがケニー・ドーハムの“アフロ。キューバン”これが録音された1955年1月、3月どちらのセッションにもワトキンスを除く4人が参加しています。そう考えるとこのメンバーが集まるのは半ば必然だったと言えるでしょう。
さて、演奏に関してですが、“バードランドの夜”は「ハードバップの夜明け」と言われていますが、今の耳で聞くとやはりまだまだバップ色が濃いことがわかります。レパートリーにバップナンバーを多く入れているからでしょうか。
それに対し、“カフェ・ボヘミア~”からはあまりビ・バップの臭いは感じられません。火を吹くような演奏だった“バードランドの夜”と比べると熱いながらも幾分かリラックスしたものを感じます。それは多分にモブレーの(いい意味で)まったりとしたサックスに一つの要因があるのではないかと思うのですが……。それに比べ、熱い炎を迸らせているのがドーハム。特に“~Vol.1”の“Minor's Holiday”におけるロングソロはリスナーを別次元へと誘ってくれるかのよう。この対象的なフロントラインを煽りたてるシルヴァー以下のリズムセクションはシュアに、しかし一瞬たりとも音を聴き逃すまいと2人をプッシュしています。それは言いかえれば余裕すら感じられる演奏であり、それが全体に漂うリラックスしたムードに繋がっているのではないかと想像されます。
さて、40年代前半から始まったビ・バップ革命は50年代半ばになると新しい表現方法――“ハード・バップ”へと変化を遂げるわけですが、ビ・バップとハード・バップの違いを素人にもわかりやすく表した文章はあまり存在しません。個人的にわかりやすかったのは、「“ビ・バップ”をより洗練された形で提起したもの」。とか、「アドリブが第一であった“ビ・バップ”に対し、よりアドリブの素材としての“曲”を重視したものが“ハード・バップ”である」。とかでした。
確かに今の耳で“ビ・バップ”を聞くと、1つはまだレコードがSP盤の時代だったために1曲3分程度と制約を受けてしまっているせいか、テーマもアドリブも異様なほど短い。ちょっと詰め込みすぎでは? と思ってしまう位。だからチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピー、バド・パウエルらはその短い時間で出来る限りのことをやろうとした結果がビ・バップによくあるホットなソロ合戦だったのではないでしょうか。
それに対しLPの時代になって1曲に十分な時間が掛けられるようになった50年代半ばになれば単なるソロ合戦のための“素材”でしかなかった“曲”を“曲”として表現しようという意識が生まれたのではないでしょうか。“カフェ・ボヘミア~”を聞くとメンバーは我先にとソロを吹きまくってるよりかは丁寧に演奏を進めていっている印象を受けます。おそらくそれが当時の聴衆には“洗練されている”と映ったのではないでしょうか。これはさらに50年代後半になるとグループ・エクスプレッション(集団即興演奏)という形で実を結ぶことになります。そういった事実を頭に入れると“バードランドの夜”はまさしく「ハードバップの夜明け」と言ってもいいでしょうし、“カフェ・ボヘミアのジャズメッセンジャーズ”はハード・バップの一つの完成形を表したと言っても言い過ぎではないと思います。
日本で一番人気があるのはやはり50年代後半~60年代前半の黒人ジャズが最も華やかなりしころだったように見受けられます。その中心にあったのはやはりハード・バップであり、ここを起点としてファンキー・ジャズやソウル・ジャズ、新主流派などが生まれてくるわけで、そう考えるとビ・バップ~ハード・バップへの流れはその後のジャズ史を大きく変えたと言っても過言ではありません。その第一歩を記録した作品として、このアルバムにもう一度スポットライトを当ててみるのもいいのではないでしょうか。
収録曲
At The Cafe Bohemia, Volume One
1. Announcement By Art Blakey
2. Soft Winds
3. The Theme
4. Minor's Holiday
5. Alone Together
6. Prince Albert
7. Lady Bird
8. What's New
9. Deciphering The Message
※7~9 Bonus Track
At The Cafe Bohemia, Volume Two
1. Announcement By Art Blakey
2. Sportin' Crowd
3. Like Someone In Love
4. Yesterdays
5. Avila And Tequila
6. I Waited For You
7. Just One Of Those Things
8. Hank's Symphony
9. Gone With The Wind
※7~9 Bonus Track