夜中の4時前にロンドンからメールが来た。
「論文について、さらにとても小さな改訂が望まれます。
○○の段落の最後の英文だけ以下のように書き換えてください」
朝の6時に指導教官からメールが来た。
「査読者に言われたとおりに投稿してください。あと一息です」
正午前には投稿を終えた。
3度目の改訂であった。
ロンドンとの時差は9時間。
時差を考えると、そんなに急がなくてもいいわけだが。
諸事情あって、一刻も早くaccept[受理]されたかった。
25日までに受理されるかどうかで将来ががらりと変わる。
来年から給料がもらえるか、もらえないかの瀬戸際なのだ。
論文の事務局が動き出すのはロンドンの朝の9時くらいだとすると、
こちらでは18時くらいになるのだろうか。
正午には投稿を終えた。
今日は忘れられない1日となった。
15時過ぎ、ロンドンからメールが届いた。
去年の12月10日に論文を投稿してからちょうど半年。
1月に最初の査読コメントをもらった。
改訂作業は予想以上にしんどいものだった。
片っ端から論文を調べた。
22歳のうちに、といって3月31日に改訂第1版を投稿。
2度目の査読の後も、4月中に、とムリをして4月30日に改訂第2版を投稿。
これで完成か。
実際、実質上はこれで終わりだった。
今日のは改訂というほど大それたものじゃなかった。
Your manuscript entitled [中略] has now been accepted for publication
in Monthly Notices of the Royal Astronomical Society Main Journal.
accepted!!!!!!
2時間後、指導教官がデスクにやって来た。
握手を求められた。
「ここ数年で、一番の論文じゃないかな」
一通り褒めちぎられた後、今後の訓示を与えられる。
アーカイブに出たら、もう次の論文をとっとと出さないといけない。
世界は広い。
君が今回の論文で示したやり方を見て、
今後僕らがやろうとしているアイデアを
同じように思いつくやつがきっといるだろう。
アメリカにいるアジア系の研究者なんかこわいぞ。
彼らは寝ませんから。
特に若い元気な研究者がとびつくだろう。
君は、それより早く論文を出版しないといけない。
Exclusive License Form を提出してアーカイブに論文を載せたら、
もう世界との勝負は始まりますよ。
修士に入ってきてすぐ世界の戦場に飛び込めたことは認める。
本番はこれからですよ。
一通り今回のテーマでサイエンスを開拓したら、
きっと他の連中が僕らの研究を基礎にしてこまごまとした計算を始めるだろう。
そういうネチネチした研究はあんまり好きじゃないから、
みんなが追いついてきたころにはまた別のサイエンスを開拓しましょう。
給料がもらえる(可能性が95%超え)♪
っていうのはどっかに吹っ飛んだ。
握手の感触は、もう消えた。
旅を、始めますか。世界を舞台に。