「そうだ、京都に行こう」
と、言い出し計画したのは主人。
新幹線のグリーン指定を取り、宿を取り、京懐石や豆腐料理の予約を済ませ、デジカメや衣服の準備を済ませた上、ガイドブックを眺めては準備に余念がない様子。
わたしはそれを眺めては、ただため息をつくだけ……。
まあ、わたしだって寺院めぐりや寺田屋を尋ねたり、竹林を散策したりすることが楽しいことだという認識ぐらいはある。感動したり、感慨にふけったり、いにしえに思いを寄せたりもするだろう。
しかし、だ。
食事をどうしよう。どうやって、どのくらい食 べよう。どうやってやり過ごそう。
そのことばかりが頭の中でいっぱいで少しも「楽しみ」だと感じることができないのだ。
名物やご馳走や珍しいものよりも、わたしはわたしだけのわたしの許すものを許すだけ食べるほうが確実に幸せなんですよ、夫よ。
申し訳ないし、ばちあたりだし、我がままなのは十分承知している。
それでも、これが正直な気持ちだ。
明日からの二泊三日。
「自由」と引き換えに、わたしは「家族」を演じなくてはならない。
どうかうまくやり過ごせますように。