妹のこと
久々に実家へ帰り、墓参りをした。
父、母、妹が眠る墓に手を合わせる。
まだ、妹が逝ってから一年と数ヶ月、まだ生々しい悲しみが胸に広がっていくのを感じた。
誰もが認める容姿と頭脳を合わせて持っていた妹。
天は二物を与えず、という言葉があるが、妹には「神からの贈り物」すなわち「才能」さえも
持ち合わせていた。
妹は幼いころから文章がうまく、プロの作家としての道も拓けていた。が、その途中、病に
倒れ、入退院を繰り返し、そして他界した。
妹が生きていたころ、私は正直彼女が嫌いだった。
小さいころから可愛い容姿の妹は両親はおろか周りの大人に可愛がられ、友達に人気が
あった。年頃になればなったで、わたしの男友達はみんな妹に夢中になっていき、私は
いつも置いてきぼりの気持ちでそれを見つめていくだけ。
みじめだった。
かろうじてそれに耐えられたのは、そのころ、父の仕事の都合でアメリカに住んでいたから
という背景がある。
「妹がもてるのは、外人受けしているだから」という思いで、私は嫉妬という気持ちをごまかして
いた。
しかし。
私の大学入学に合わせるように、私たち家族は日本に帰国した。残念なことに、ここでも妹は
人気者であることにかわらなかった。
私はますます嫉妬した。私は妹のすべてが欲しかった。可愛らしい話し方や、長い髪も、趣味の
よい洋服など、真似できるものは真似をし、そればかりかそれよりもおしゃれに見えるよう、豪華
に見えるよう、いつも努力していた。
私が摂食障害になったのも、きっと妹の存在が大きいと思う。
生まれつき、骨格から「美人」な妹は幼少から習っていたバレエのせいもあって、手足が長くて
すらっとしている。しかも、いくら食べても太ったりしない羨ましい体質でもあった。それに対抗
するため、私のできることは絶食に近い食事をするだけ。でも、それは長く続くはずもなく、反動で
私は過食になった。
妹が亡くなって、かれこれ一年半。
私はやっと妹の痛みがわかるようになった。
夢がかなう道半ば、病に倒れてどんなにか悔しかったろう。
愛が深い性格だったので、幸せな結婚もできたろう。
母性豊かだった妹のことだ、どんなにか母親になりたかっただろうか。
私には家庭も子供も、そして健康な体もある。
なのに、考えていることといえば「食べること」と「痩せること」。
なんてくだらないことか。
妹は生前、私ことをどう思っていたのだろうか。
そして、今の私をどう感じるのだろう。
私は恥ずかしくてたまらない。