クール・アンド・スパークリング/ポール・スミス | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

このところ、「お酒」をめぐる状況でドタバタがありました。

 

発端は8日(木)に緊急事態宣言が再び出ると決まり、

東京都では「酒を提供する店に対して休業が要請される」となったことでした。

この流れで、同じ日に西村経済再生相の発言がありました。

 

西村氏はこう述べています。

「(酒の提供停止などの要請について)応じていただけない店舗の情報を

金融機関と共有しながら、順守の働きかけを行っていただく」

 

つまり、店舗を営業し、酒を提供しているかは

カネの流れを把握している金融機関が精通しているので、

そこから「働きかけ」をしてほしいということです。

場合によっては融資の制限につながるのではないかという不安が飲食店に広がりました。

 

9日(金)午前に加藤官房長官が

「あくまでもお願いということだ。飲食店に対する融資の制限などをお願いする趣旨ではない」

と否定しましたが、自民党内でも反発の声が出ます。

 

結果、同じ日の午後の記者会見で、加藤官房長官は

「金融機関の監督当局から、金融機関に対する協力は、お願いをしないことにした」

真逆の発言をすることになってしまいました。

 

この混乱は東京オリンピックによるところが大きいと思います。

新型コロナで国民には相当な負担をかけながら、大規模なイベントが行われるという矛盾。

そんな状況で「資金から締め付ける」という陰湿なやり方が行われれば、

「誰がここまで感染を拡大させているんだ!」と飲食店側も言いたくなります。

 

一体、このズレた政府のもとで、

いつになったら仲間と酒を酌み交わしてワイワイガヤガヤできる日が来るのかー

きょうはそんな気分になったのでシャンパンのジャケットが眩しい

ポール・スミス(p)の「クール&スパークリング」を聴いてみましょう。

 

ポール・スミス(1922-2013)は有名なファッション・デザイナーではありません。

アメリカ・カリフォルニア州に生まれたスミスは8歳からピアノを始め、

19歳からプロとして活動を始めています。

スタジオ・ミュージシャンとして長いキャリアを積んでいますが、

1956年から20年以上にわたってエラ・フィッツジェラルド(vo)の伴奏を務めたことで

その存在が知られるようになります。

 

このような背景があるため、彼の音楽にはアレンジがしっかりして

しかも軽妙な味わいがあります。

その魅力が全面に表れたのが「クール&スパークリング」。

凝ったアレンジがさらっと流れる、まさに夏の日のシャンパンを思わせる音楽です。

 

1956年5月と6月、ロサンゼルスでの録音。

 

Paul Smith(p)

Julius Kinsler(fl)

Ronny Lang(as)

Tony Rizzi(g)

Sam Cheifitz(b)

Irving Cottler(ds)

 

①I Remember You

このアルバムではピアノトリオに加えてフルート、アルトサックス、ギターが

加わるという異色の編成ですが、この組み合わせを最大限に生かした曲。

メロディ部分はフルート中心に進みますが、アルトサックスが対位法的な位置づけで

裏側に入り、サウンドに厚みを持たせています。

そこにピアノが入ってアクセントをつけると、すかさずホーンはバックに回るといったアレンジが

短時間にギュッとまとめられています。

しかも、それが非常にさりげなく、凝っているように感じられないのがさすが!

ソロはスミスからですが、ピアノソロは軽妙という以外に際立った特徴はありません。

それよりも、スムーズに、流れるように入ってくるホーンとの「からみ」に

耳を傾けるべきでしょう。

1分50秒ぐらいから聴ける軽快なホーン・アレンジは気持ちいいことこの上ないです。

ソロ重視ではなく、バンド・サウンドの設計に力を注いでいる成果が出ています。

 

⑦You And The Night And The Music

このアルバムの中では「ジャズっぽい」雰囲気を持つ1曲です。

ほんのちょっとですが、ブルージーな要素があるからです。

メロディ部はホーンが奏で、リズムのブレイクを絶妙のタイミングで入れることで

やや緊張感を持たせています。

素晴らしいのはやはりアレンジで、フルートとアルトの軽い音が緊張感をほぐし、

しゃれたニュアンスをもたらすことに成功しています。

ソロはスミス。ここではホーンとの掛け合いの中ですばしこく駆け抜けるような

プレイを展開しており、達者さが伝わってきます。

後半はホーン陣の短いソロをはさみつつ、流れるようなアンサンブルで

スマートに終わります。

 

このほか⑧I'll Take Romance も凝っていることが感じられない、

しかもギターの使い方がうまいアレンジが聴きものです。

 

それにしても東京では無観客での競技開催がようやく決まりましたが、

「緊急事態」の中でのオリンピックという「異常事態」であることは変わりがありません。

ほとんどコントのようなドタバタですが、これで感染拡大、というオチでいいのか?

何か悪い夢を見ているかのような日々です。

オリンピックまであと13日。