ワクチンの接種で誰を優先するか、各市区町村の判断が問われています。
もともと、ワクチンは供給量が限られているため
医療従事者や高齢者、高齢者施設で働く人が優先されてきました。
それが、ワクチンの供給が本格化し、
1回目の接種を終えた65歳以上の高齢者らが3割となる中、
政府が64歳以下の接種は各市町村に判断を委ねることにしました
(本日の朝日新聞・朝刊による)。
テレビで見たのですが東京・杉並区は
20~30代の新型コロナウイルスの感染確認が多いそうです。
先月末の時点での感染者数の割合は
20代で29.2%、30代が21.1%と、2つの年代で半数以上を占めています。
そこで、今後のワクチン接種の予約受付を基礎疾患のある人などの後に、
若い世代から優先的に始めることを決めました。
現在、50代の私は複雑な思いを抱えつつも、この判断は正しいと思います。
若者の行動をたしなめる人もいるでしょうが、この国で行われているのは「自粛要請」です。
あくまで政府からの「お願い」である自粛要請に自主的に従っているだけで、
法律に基づいた強制的なものではありません。
自粛要請が長々と続いているだけに善意で従い続けるのは難しいです。
しかも東京オリンピックが「何となく」開催される方向です。
「オリンピックができる環境なら行動してもいいのでは」と考える人が出てくるのも当然のこと。
若いエネルギーを延々と抑えようとしても無理なわけで、
ワクチンをこの世代に優先的に接種するのはいいことでしょう。
「抑えても湧き出てくる若さ」ーそんなことを考えていたら1枚のアルバムを思い出しました。
ウィントン・マルサリス(tp)の「ウィントン・マルサリスの肖像」です。
ウィントンはいまさらご紹介するまでもない現代で最も著名なジャズ・トランぺッターです。
1961年にアメリカ・ニューオーリンズに生まれ、18歳でアート・ブレイキー(ds)の
ジャズ・メッセンジャーズに参加してプロになりました。
デビュー盤である「マルサリスの肖像」を録音した時はまだ19歳。
今回、私は自分が持っている日本盤の帯付きLPでご紹介するのですが、
帯の文言には以下のような言葉があります。
「ジャズ界の期待を一身に集める若きプリンス、ウィントン・マルサリス待望のデビュー作!!」
いかに彼が早い段階から期待を集めていたかが分かります。
ウィントンはクラシックを学んでいたことに加え、彼なりの音楽の考え方があって
「パワーを見せびらかさない」ところがあります。
このデビュー作でも既に「抑制がきいた」演奏になっているのですが、
それでもこの時はまだ若さがあふれ出てきており、そこが聴きどころになっています。
1981年7月に東京、同年8月にNYで録音。
ウィントンの兄のブランフォードが加わっているほか、
東京でのセッションにはロン~ハービー~トニーという豪華リズムセクションが脇を固めています。
Wynton Marsalis(tp)
Branford Marsalis(sax)
Kenny Kirkland(p)
Herbie Hancock(p)
Clarence Seay(b)
Ron Carter(b)
Charles Fambrough(b)
Jeff Watts(ds)
Tony Williams(ds)
③Hesitation
ウィントンのオリジナル曲。
ウィントン~ブランフォードの2管にロン~トニーというカルテットです。
ここでの聴きものはベースを大胆にフューチャーしたリズムに
2管がソロを連続して交換する構成です。
冒頭、2管のユニゾンでテーマが提示され、ベース・ドラムが強烈にリズムをつけると
ブランフォードのソロに入っていきます。
アルト・サックスを使っているようでよくまとまっていますが、
もう少し大胆さに欠けるソロです。
これに続くウィントンは切れ味鋭くピアノレスの自由な空間を泳いでいきます。
安定したテクニックでよく息の続くこと!
しかし、音量は大きいものの、まだ弾けきっていません。
再びブランフォードのソロになり、この辺りから「兄弟バトル」が熱を帯び始めます。
ブランフォードがやや先鋭的なソロを取ると、ウィントンが高音をヒットさせ、
今度はブランフォードが抽象度を高めたブロウを織り交ぜていくと
ウィントンは正面切って受け止め高速フレーズを連発するといった感じです。
何回ソロの交換を行っているのか数えきれないのですが、
ウィントンのブロウがここまで素直に熱く行われていたというのが感慨深いです。
そして、ブラシで煽るトニーと、ものすごいグルーブを生み出すロンのすごいこと!
各人の名人芸を堪能できる演奏です。
⑤Syster Cheryl
トニー・ウィリアムスのオリジナル。LPではB面の1曲目です。
ポップさと懐かしさが入り混じったような現代的な曲です。
2管とロン~ハービー~トニーというクインテット編成。
2管が伸びやかにメロディを提示した後、ウィントンのソロ。
ポップな曲調を意識してか、先を急がない展開で
音の厚みが増している感じがします。
堂々とした歌いっぷりはとても新人とは思えない反面、
エネルギーに満ちたプレイが若者らしく好感を持てます。
ハービーはこうした曲調を非常に得意としており、
ウィントンを受けて華やかなソロを展開。
これを受けたブランフォードはソプラノ・サックスを使って
強力なリズムを縫うようなソロを取ります。
これは楽器の選択が良く、ウェイン・ショーターの影響を感じる演奏が好ましいです。
東京のセッションばかり紹介してしまいましたが、
熱気のあるNY録音の①Father Timeも素晴らしいです。
若者たちに優先的に接種が進んだ結果、
現在リモートになっている大学でリアル授業ができるなど、
少しでも社会的に意義のある動きが実現すればいいと思います。
若い時の貴重な時間は後から取り戻すことは
なかなかできません。
早めに接種できる若者には「社会的な判断で接種されている」ことを知ってもらいつつ、
充実した人生につなげてもらいたいものです。
