アース・ビームス/ジョージ・アダムス~ドン・プーレン・カルテット | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

新型コロナウイルスのワクチンを「囲い込む」動きが世界で起きています。

 

EU(ヨーロッパ連合)は、域内の工場でつくられるワクチンについて

輸出を許可制にすると29日に発表しました。

3月末までの措置ですが、状況次第では延長もあり得るそうです。

 

そもそものきっかけはEUへのワクチン供給をめぐって

イギリスの製薬大手アストラゼネカが

「当初の供給量が予定の半分以下になる」と通告したことでした。

 

この「英国優先」の対応に不信感を募らせたEU。

ベルギーやドイツなどEU域内の工場から域外にワクチンを輸出する場合、

関係国の政府に製薬会社が報告するという仕組みを導入しました。

各国政府や欧州委員会が「問題あり」と判断すれば輸出の差し止めもあり得る、と。

 

時事通信の報道によると、日本政府が2月下旬に接種を開始したいワクチンも

ベルギーの工場から輸送予定だそうです。

EUが輸出を差し止めるか、供給量を絞ると

日本の接種計画にも「狂いが生じそう」ということでした。

 

ここまで新型コロナの影響が長引く中で、頼りにしたいワクチンですが

供給能力があるところが「囲い込み」をすれば感染拡大が長引くだけです。

 

WHO(世界保健機関)によれば、ワクチン接種は先進国を中心に始まる一方で、

ほとんどの途上国ではそうした段階にはないそうです。

国連が世界的な戦略を作って「囲い込み」を防ぎ、各国の医療従事者や高齢者に

まず接種するという方向性が必要なのでしょうが、まだ理想に過ぎないですね・・・。

 

この元気の出ない状況を前に、地球をジャケットにした力強いジャズを聴きたくなりました。

ジョージ・アダムス~ドン・プーレン・カルテットの「アース・ビームス」です。

 

このカルテットはチャールス・ミンガス(b)ゆかりのメンバーで1979年に結成されています。

ジョージ・アダムス(ts)、ドン・プーレン(p)、ダニー・リッチモンド(ds)は

いずれもミンガスのバンドへの参加経験があり、そこにキャメロン・ブラウン(b)を

御大の代わりに招いたという形です。

 

アダムスの豪快なテナーと、プーレンの時に破壊的なピアノに対し

リズムが柔軟に対応するバンドは1980年代に大人気となりました。

私もテレビで「マウント・フジ・ジャズ・フェスティバル」に登場したアダムズが

ものすごくエネルギッシュな演奏をしているのを見て驚いた記憶があります。

 

「アース・ビームス」は1980年録音で、充実したカルテットの演奏が

正式なレコーディングで聴ける人気作。

濃密なパワー・ジャズの世界に入って元気をもらいましょう。

 

1980年8月、オランダでの録音。

 

George Adams(ts,fl)

Don Pullen(p)

Dannie Richmond(ds)

Cameron Brown(b)

 

①Earth Beams

ジョージ・アダムス作のタイトル曲。

このバンドらしさが出ているインパクトのある演奏です。

モーダルな要素が入った曲で、いきなりアダムスの熱いテナーが

メロディからソロまでグイグイ引っ張っていきます。

モーダルな曲であれば適度に「流す」こともできますが、

アダムスはひたすら音をぶち込んでくると言いますか、

限界に迫るかのように疾走し続けていきます。

特にソロの後半、2分15秒過ぎあたりからは

ものすごい高速ソロで圧倒していきますが、

彼はここでいったん退いて後半にさらに「見せ場」を作りますから

そのパワーに驚きます。

続くのはプーレンのピアノ。

最初こそ普通に入ってきますが、

途中から彼らしい予測不能のフレーズをちりばめてきます。

放埓に流れそうなところをキャメロン・ブラウンが引き取り、

きっちりとしたベース・ソロで音楽全体を締めてくれます。

と、ここから急にアダムズとリッチモンドのみのバトルが立ち上がり、

一気に局面が変わります。

2つの楽器だけとは思えないパワーと、両方がソロを取っているのに

ちゃんと音楽になっている不思議な調和。

このバンドの底力を示す決定的なシーンをぜひお聞きください。

最後のメロディを忘れてしまうほどです(笑)。

 

④Saturday Nite In The Cosmos

ドン・プーレンとギタリストのフランク・ディーンの作曲。

ここではアダムズがフルートで親しみやすく素朴なメロディを吹いています。

最初のソロはプーレン。鍵盤を手で転がすように弾く独特のスタイルを

存分に披露しています。

と言ってもフリーのように逸脱することはなく、

演奏を素直に楽しんでいる感じがします。

ここからアダムズがテナーで登場。

アメリカ南東部・ジョージア州出身という血が騒いだのか、

泥臭い濁った音でブルースフィーリングを思いきり強調しています。

はっきり言って「くどい」演奏ですが、ここまで照れずに全開でやってもらうと

聴く方も気持ちよくなってくるから不思議なものです。

最後は再びフルートを使ったメロディ~テナーの雄叫びという

エネルギーに満ちた終わり方になっています。

 

あまり考えたくはないですが、現在の感じではワクチンの接種が

日本でスピーディーに行われるのは難しそうですね。

ワクチンそのものの輸入も簡単ではないですし、

密を防ぎながらの接種は時間がかかりそうだからです。

 

音楽から元気をもらうしかない状況も厳しいのですが、

医療従事者はもちろん、飲食業界はかなり大変・・・。

せめて助け合いをするしかなく、

私もささやかながら本日は地元のお店のテイクアウトを利用しようと思います。