ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンVol.1 | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

新型コロナウイルスの感染が都市部で急拡大する中、

この1週間は例の「緊急事態宣言」をはじめ、事態が大きく動きました。

しかし、一連の動きに「分かりにくさ」を感じているのは私だけではないと思います。

 

まず、今月7日(火)に出された「緊急事態宣言」。

東京など7都府県を対象にこれが出されたとき、

「医療崩壊を防ぐために人との接触機会を減らす」というねらいはよく分かりました。

しかし、住民に対して外出の自粛や店舗の使用制限を「要請」できるのは

都道府県知事だということが飲み込めてくるにつれ、

「じゃあ、暮らしはどうなるの?」という疑問が出てきたのです。

 

実際、私の住む東京都では7日(火)の時点では「緊急事態宣言」の期間中に

どの業態を休業要請の対象とするのか、まとまっていませんでした。

都と国の間で意見の隔たりがあり、決まっていなかったのです。

 

結局、東京都の発表があったのは10日(金)の午後2時。

国との折衝を経た上で「遊興施設」「劇場」「運動や遊技のための施設」など

6つの業態や施設に休業が「要請」されることになったのです。

居酒屋を含む飲食店について「朝5時から夜8時までの営業、酒類の提供は夜7時まで」

など、具体的なものが出てきました。

 

これで方針が固まったか、と思っていたら

きのう(11日)になって新たな動きがありました。

安倍首相が今度は「緊急事態宣言」の対象である7都府県だけでなく

全国で「夜の繁華街の接客を伴う飲食店の利用を自粛するよう」呼びかけたのです。

 

さらに、「緊急事態宣言」の対象となっている7都府県のすべての事業者に対して

「テレワークを原則とし、やむを得ず必要な場合でも出勤者を最低7割減らす取り組みを

改めて要請するよう」関係閣僚に指示したというのです。

 

後から追加で施策が出てくると、制限を受ける国民としては

「一体、いまはどの段階なのか?」と戸惑ってしまいます。

また、きのうの安倍首相の指示で「改めて要請」とあるのは、

もう国民には言っているよ」という意味を含んでいると思います。

 

確かに、7日(火)の時点で安倍首相は

「人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、

2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができる」と言っています。

しかし、「出勤者を7割減らす」というメッセージが企業に対し明確に出ていたかというと疑問です。

むしろ、メッセージが効果的に伝わっておらず、出勤者がいまだに多いことへの責任逃れをするため

「改めて」という表現を入れているのではないかと勘繰ってします。

 

日本には勤勉な国民が多いとは思いますが、五月雨式によくわからない形でメッセージを流されては

キャッチアップができなくなりますし、「後でまとまってから聞こう」という態度になります。

これはスピードが要求される感染症対策としてはかなりまずい流れです。

本気で取り組む気持ちがあるのであれば、「いまはどの段階なのか」「何をやるべきなのか」

できるだけまとめて一気にメッセージを発するべきです。

 

おそらく政府としては補償や給付がからむ問題だけに慎重になっているのでしょうが、

いまは感染爆発が起こるかどうかの瀬戸際とされています。

そもそも政府が危険段階のレベルを設けているのかさえよく分かりませんが、

「いまがどのフェーズにあり、何を求めているのか」分かりやすい説明が求められます。

 

「フェーズがよく分からない・・・」、今回はそんなジャズを聴いてみましょうか。

「ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンVol.1」です。

 

実はオーネット・コールマン(as、1958-2015)について私には詳しく語る資格がありません。

「フリージャズの先駆者」とされるオーネットですが、

私が持っている作品は数枚だけですし、彼の曲を最初に聴いたのは

パット・メセニー(g)の「80/81」での「ターンアラウンド」だったと思います。

その時も「よく分からん」という感想を持った覚えがあります。

 

以来、本人のリーダー作を試しに聴いてみては「よく分からん・・・」と思い続けているのですが

その中で気になるのが本作です。

というのは、あまり「フリー」に聴こえないからです。

普通の4ビートが刻まれているわけではないですが、リズムにはラインがありますし

オーネットのプレイも独特のうねりがあるもののギリギリ「踏みとどまっている」ように思えます。

一方で、予測が全くできない展開があり、既存のルールに縛られていない感じは受けます。

 

考えてみると「フリージャズ」の定義すら私には分からないのですが、

精神面での自由さにあふれているという意味で本作は「フリージャズ」という

フェーズにあるのかもしれません。

 

1965年12月3~4日、ストックホルムのゴールデンサークルでのライブ録音。

 

Ornette Coleman(as)

David Izenzon(b)

Charles Moffett(ds)

 

①Faces And Places

疾走するアルトが聴けるオーネットのオリジナル。

冒頭、リズムのブレイクを効果的に生かした「うねり」のあるメロディが提示されます。

そのままオーネットのスピーディーなソロに流れ込むのですが、

これが「どこに行くのかわからない」節回しです。

直線的に盛り上がりそうになると、常に「ヨコ」に入っていくとでも言えばいいのでしょうか。

見据えている音楽が「普通の流れ」ではないので、展開が全く読めません。

4分30秒ぐらいからは熱が加わっていくのですが、そこに不思議な「旋律美」があります。

「メロディアス」という言い方とは違うかもしれませんが、

彼なりの「普通とは違う歌」があり、それを通常のコードに乗るジャズとは違ったやり方で歌っているようです。

現代美術の作品を見ているような、「分からないけど何かを感じさせる」世界があります。

 

②European Echoes

こちらもオーネットのオリジナル。

何というか、「愛嬌のある」ユーモラスなテーマがミドル・テンポで奏でられます。

ちょっとワルツにも聴こえるのですが、このテーマが終わったのか終わっていないのか

よく分からないままにソロに入ります。

ソロではメロディのフレーズを常に気にかけながら発展させているようなところがあり

メロディの断片がそこかしこに顔を出します。

同じ場所を回り続けているようで、また思わぬ「ヨコ」に展開していく・・・

この変わったアイデアがいったいどこから出てくるのか、本当に不思議です。

フリーとはとらえにくい、「オーネットの音楽」と言えるでしょう。

 

さて、週明けはいったいどんなフェーズに入っているのでしょうか。

おそらく多くの人々は政府の指示よりは感染者数の増え方を気にかけて

「自分がやらなくてはいけないこと」を探っていくことでしょう。

 

音楽の世界では明確な「フェーズ分け」は必要ないでしょうが、

ウイルス対策に関してはなぜ日本での対応がここまで泥縄的になってるのか

一度猛省してから再スタートすべきだと思います。

そうしないと、誰も政府のことを信用しないという、最悪の事態に陥るでしょうから。