夜も昼も TRIO MUSIC, LIVE IN EUROPE/チック・コリア | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

このブログも「新型コロナウイルスシリーズ」を連載しているような感じになっていますが、

今回も気になったことを書かせていただきます。

 

20日(金)~22日(日)にかけて春分の日と土日で3連休という方も多かったと思います。

私はディスクユニオンに予約していたLPレコードを取りに行く用事があり、

21日(土)に吉祥寺に出かけました。

そこでびっくりしたのが、人出の多さです。

 

お天気に恵まれていたことや、桜の季節を迎えているということもあるのでしょうが、

とにかくものすごい人混みだったのです。

「コロナ騒動」が起きる前と同じか、ひょっとしたら上回るぐらいなのではないかと思いました。

 

テレビによると、これは吉祥寺だけではなく都内各地の繁華街で似たような現象があったようです。

「屋内に閉じこもることに疲れた」人たちが、「屋外なら大丈夫じゃないか」と出かけたらしいのです。

確かに、小さなお子さんがいる家庭を中心にストレスを溜めていた家庭は多かったでしょう。

 

3連休に入る前の19日(木)、新型コロナウイルスの対策について話し合う

政府の専門家会議が新たな提言をまとめました。

その中には、今月初旬にまとめられた「見解」と同じ内容なのですが、

「3つの条件が同時に重なる場所や場面を避けることが重要」とされました。

その3つとは以下のようなものです。

 

①換気が悪い密閉空間

②人が密集している

③近距離での会話や発声

 

「この3つが重なる」と言われると、「屋外なら風通しもいいし、まあいいか」と

思うのも無理からぬことです。

実際、私も吉祥寺の人混みを見て「ちょっと怖い」とは感じましたが、

「屋外ならそこまで神経質にならなくてもいいか・・・」と自分を納得させた次第です。

 

ここに見られるのは(私自身も含めて)「気のゆるみ」です。

先ほど出たデータによると、日本で感染が確認された人は1138人(クルーズ船の乗客乗員を除く)。

亡くなった方は42人(クルーズ船の乗船者では、これとは別に10人)です。

急激に死者が増えているイタリア(感染者が5万9千人を超え、死亡者が5400人以上!)

などと比べると圧倒的に少なく、

「日本はうまくいっている」というムードが漂っていることは否定できません。

 

しかし、専門家の見立てでは「油断はできない」というのが現状らしいのです。

気になったので19日の専門家会議の提言全文を読んでみたのですが、

「3つの条件」以外にも実に細かく様々なことが想定され、対応策が書かれていました。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000610566.pdf

 

私はこの提言の「肝」となるのは「地域ごとによーく考えて行動してください」

ということだと理解しています。

提言によると、いまのところ日本はクラスター(患者集団)を早期に発見し、

患者と人との接触をできるだけ絶つといった地道な活動をしてきた結果、

「引き続き、持ちこたえている」状況だと言えるそうです。

 

その一方、こうも指摘しています。

 

一部の地域で感染拡大がみられます。

諸外国の例をみていても、今後、地域において、

感染源(リンク)が分からない患者数が継続的に増加し、

こうした地域が全国に拡大すれば、どこかの地域を発端として、

爆発的な感染拡大を伴う大規模流行につながりかねないと考えています。

 

こうなると、案外、これから心配なのは東京ではないかと思います。

東京都はきょう、都内に住む男女16人の感染を新たに確認したと発表しました。

都による発表人数としては1日で最も多く、このうち7人は感染経路が確認されていないというのです。

 

専門家の提言は「感染状況が拡大傾向にある地域」では次のような対応を自治体に求めています。

 

まん延のおそれが高い段階にならないように、

まずは、地域における独自のメッセージやアラートの発出や一律自粛の必要性について

適切に検討する必要があります。

その場合、社会・経済活動への影響も考慮し、導入する具体的な自粛内容、

タイミング、導入後の実施期間などを十分に見極め、

特に「感染拡大が急速に広まりそうな局面」や「地域」において、

その危機を乗り越えられるまでの期間に限って導入することを基本とすべきだと考えます。

 

やや分かりにくいですが、危機が起こった時に「時期と地域」を限定し、

北海道で行ったような集中的な対策をして早めに抑え込まなければならないということです。

その中には感染リスクに対応できていないイベント

(屋外含む)の禁止も含まれるようです。

 

東京でもし北海道のような緊急事態宣言が出されれば、

多くの人々が再び自宅に閉じこもるようになるでしょう。

現在の「ゆるみ」から「引き締め」へと極端な方向に流れ、

また状況によっては「ゆるむ」という円環のような動きが続くのではないかと思います。

 

人間ですから、緊張感のある状況に耐え続けることはできませんし、

それでも「いざ」という時には行動しなくてはいけません。

心の持ちようを保てるように「リラックス」と「緊張」という流れをうまく受け入れるしかなさそうです。

 

今回は「輪」=「The Loop」というタイトルがある曲を聴いてみましょう。

チック・コリア(p)がミロスラス・ヴィトウス(b)、ロイ・ヘインズ(ds)という1960年代後半の名作

「ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス」と同じメンバーで収録したアルバム

「夜も昼も TRIO MUSIC, LIVE IN EUROPE」の冒頭曲です。

 

チック・コリアがこのライブ盤を収録したのは1984年。

同じ時期、キース・ジャレット(p)が「スタンダーズ」というトリオを率いて

古い曲に新しい息吹を入れていたので、意識したところがあったのかもしれません。

収録曲には「I Hear A Rhapsody」や「Night And Day」が含まれています。

 

アルバム全体としてはキースのような濃密さや、「ナウ・ヒー・・・・」のような斬新さにやや欠けるのですが、

チックならではの軽やかさが特徴で、実はこれからの清々しい季節にスピード感あるピアノトリオを

「流し聴き」するのに最適な1枚ではないかと思います(巨匠のチックさんに大変失礼ですが・・・)。

 

1984年9月、スイスのウィリザウ、ドイツのロイトリンゲンでのライブ録音。

 

Chick Corea(p)

Miroslav Vitous(b)

Roy Haynes(ds)

 

①The Loop

チック・コリアのオリジナル。ピアノのみで入るイントロから軽やか。

ピアノの響きはECMらしいエコーがかかっていて、少し「スタンダーズ」の録音を思わせるところもあります。

明るいメロディでトリオになってからは、ヴィトウスのうねるベースと、ヘインズのキビキビとしたドラムに乗って

チックのピアノが跳ね回ります。

考えてみると、ヘインズのドラムはチックにとってはかなりオーソドックスな感じなのですが、

ピアノ・ソロでは鍵盤の幅を長くとったフレーズで遊んでみたり、そうかと思うと急に引いてみたりと

何をしても変わらず受け止めてくれる感じがいいのかもしれませんね。

続くヴィトウスのソロはメロディを引用しつつ超絶な速さで歌っており、

ほとんどギターのような展開で彼らしい世界を作っています。

素直にメロディに戻りながらエンディングを迎えていく曲に「輪」とは何か?と考えてしまいますが、

ここでは余裕が生んだ美しい調和のことなのかもしれません。

 

②I Hear A Rhapsody

メロディを分解したイントロから少しづつ旋律が立ち上がり、

最終的にきちんとメロディを提示する展開。

このバックでのヴィトウスが「揺れまくって」います。

スコット・ラファロ的なインタープレイですが、変幻自在なリズムをバックに

ピアノを弾くのは大変そう・・・・。

しかし、チックはこの不安定なリズムの方がかえって生き生きするようで、

ちょっと崩れそうな展開を織り交ぜながらも強烈にスイングします。

これを受けたヴィトウスは燃えたのか、またもバリバリ弾きまくっています。

この後はピアノとドラムの小節交換。

ヘインズは挑発を流したかのようにあまり叩き過ぎず、

シンバルをあまり使わない落ち着いたソロでトリオの一体感を保っています。

ここにはちょっと尖った関係の中で3者の「輪」が作られているようです。

 

東京都の小池知事はきょうの新型ウイルス対策本部会合の後の記者会見でこう述べたそうです。

「事態の今後の推移によっては都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、

強力な措置を取らざるを得ない状況が出てくる可能性があるが、何としても避けなければならない」。

都民に対し、協力を求めたということですが、それだけ事態は楽観できないということだと思います。

 

いまは新型コロナウイルスに関する情報が多すぎて、

私のように専門家会議の提言も「3つの条件」しか頭に入っていなかった、という人もいるでしょう。

しかし、今回のような未知の脅威への対策は時に複雑になるので地域に応じたやり方が求められます。

不安感に呑まれることなく、それでも必要な措置を取るべきだと呼びかけられたときは

冷静な頭で対応していきたいものです。