ザ・クッカー/リー・モーガン | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

新型肺炎の感染拡大が止まりません。

つい先ほど、スマホのニュース速報に

「東京都 新たに8人が新型ウイルス感染」という文言が入ってきました。

感染が確認されたタクシー運転手の方と接触した人が含まれているようです。

国内で感染が確認された人は、例のクルーズ船の乗客・乗員も入れると

260人ぐらいになったのではないでしょうか。

 

最近、目立つのが「手洗いの呼びかけ」です。

ウイルスは目や口、それに鼻などから入ってくるということで、

手をきれいにしておきましょう、というわけです。

けさ見たテレビでは感染制御学が専門という方が

「ヒトは1日300回ほど顔を触る。手洗いで感染予防を」と呼びかけていました。

 

この話を聞いて「そんなに顔を触っているんだ!」とびっくりしました。

朝、顔を洗うところから1日が始まるわけですが、

その後、そんなに顔を触っているのでしょうか?

確かに私も職場で頬杖を突いたり、疲れた時は目をゴシゴシとやっているわけですが、

いつの間にか癖で触っているということもあるのでしょうね。

 

そんな中で思い出したのがリー・モーガン(tp)の「ザ・クッカー」という作品です。

ジャケットのモーガンの手は口を覆っているように見えます。

それにしても、このポーズは何なのでしょう?

カヴァー・フォトを撮影したフランシス・ウルフはミュージシャンの何気ない表情をとらえるのが

本当にうまいのですが、時に変わった癖までフィルムに収めてしまったのでしょうか。

 

さて、「ザ・クッカー」はモーガンがまだ19歳の時の作品です。

既にブルー・ノート1500番台では4枚のリーダー作を発表しており、

それらではベニー・ゴルソン(ts)が作曲とアレンジでモーガンをサポートしていました。

それらの作品と比べると、こちらはラフなセッションという感じで明確なコンセプトはない佳作ですが、

若き日のモーガンの技量を堪能することができます。

 

1957年9月29日、ニュージャージー・ルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで録音

 

Lee Morgan(tp)

Pepper Adams(bs)

Bobby Timmons(p)

Paul Chambers(b)

"Philly"Joe Jones(ds)

 

③Just One Of Those Things

個人的にはモーガンの当時のプレイ・スタイルがよく出ていると思っているトラックです。

有名なコール・ポーター作曲のスタンダードですが、

ピアノがリズムを刻むユニークなイントロから、メロディに入る展開が面白い。

メロディでのモーガンはパワーを抑えきれておらず、「若い!」です。

最初のソロはペッパーアダムズのバリトン・サックス。

彼らしいゴツゴツしたソロで、「荒ぶる魂」が出ているといったところでしょうか。

見事なのはこの楽器でスピードを落とすことなく素晴らしいドライブ感を披露していること。

このソロを受けてモーガンが登場。

刺激を受けたのでしょうか、あふれるフレーズが止まりません。

とにかく息継ぎをする回数が少なく、長いパッセージが続くのです。

リズムのブレイクを挟んでからその激しさはさらに増していき、得意の高音ヒットも飛び出します。

これほどエネルギッシュなプレイが19歳でできていたことに驚きを禁じえません。

ボビー・ティモンズの短いピアノ・ソロを入れた後のホーンとドラムのソロ交換も熱く、

50年代の「生身のジャズ」を感じることができます。

 

④Lover Man

こちらもおなじみのスタンダード。

冒頭、ベースのみをバックにモーガンがメロディを吹きます。

ぜひこの部分だけでも聴いていただきたい!

感傷に流されることなく、曲の持つ哀感を描き切ったプレイには感服します。

やがてピアノとドラムが加わりますが、モーガンは少しもペースを変えることなく

メロディを吹き切っています。

続くティモンズのピアノ・ソロからアダムズのバリトンへ。

彼らしい「ガサっと」した響きとうねりはありますが、オーバーな表現にギリギリ流れず

曲の世界の枠内に入っています。

ここからテンポが変わってモーガンのソロへ。この転換は非常に見事で

あまりのスムーズさに一瞬、気が付かないほどです。

モーガンはここでかなり音にパンチをきかせていますが、

やはり作品世界を壊さない大人のプレイに徹しているところがすごいです。

 

それにしても、「顔を触る」ことにまで神経質になってしまう事態は本当に困りますね。

手洗いも「指の間や爪のすき間までしっかりと洗いましょう」と言われると

忙しいときはできるかな、と思います。

とりあえず、抵抗力を落とさないようにできるだけ無理をしないところから始めます。

マスクも手に入らないので、体調を崩さないようにすることが最大の予防かな、と。