スイーツ/ハリー・“スイーツ”・エディソン | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


最近、ツイてるなあ、と思います。


私個人が、というわけではないのですが、とにかく毎週末、晴れるのです。

こう言うと、「なあんだ」と思われる方がいるかもしれません。

しかし、釧路の住民にとって、これほどありがたいことはないのです。

「晴れ」の予報が出ても、霧に覆われることが多い町で

すっきりとした青空が週末に広がってくれる。

「ラッキー!」と思わず言いたくなります。


こうなれば当然、インドア派の私も「お出かけ」です。

とは言っても、きちんとした計画を立てていなかったので、

お手軽な「スモール・トリップ」をすることにしました。

これです

 ↓

スロウ・ボートのジャズ日誌-ノロッコ号


JR釧網本線の「湿原ノロッコ号」です。写真は釧路駅で撮りました。

季節限定で、釧路駅から塘路駅(とうろえき)までを

ゆっくり走る観光列車です。

ちなみに、この車両はディーゼルエンジンだそうです。


走り出して15分くらいでしょうか、

広大な釧路湿原の風景が見えてきました

 ↓

スロウ・ボートのジャズ日誌-釧路湿原


釧路川のすぐわきを通るので、

湿原と水辺の様子を見ることもできます

 ↓

スロウ・ボートのジャズ日誌-釧路川②


こうしたビューポイントでは列車の速度を落としてくれるので、

本当に「ノロノロ」と進みます。

写真を撮りやすくて助かりました。


そして、50分ほどで終点の塘路駅に。

夏休みの子どもを連れた家族、中国人観光客の姿が

多く見られました

 ↓

スロウ・ボートのジャズ日誌-塘路駅


こういうゆったりした旅をしてしまうと、

ジャズも少し余裕のあるものが聴きたくなります。

今回はハリー“スイーツ”エディソン(tp)の「スイーツ」と行きましょうか。

そういえば、緑色のジャケットも「ノロッコ号」と同じ色合い(?)では

ありませんか。


ハリー・エディソンに関しては、これまでも触れてきました

 ↓

http://ameblo.jp/slowboat/entry-11165947629.html

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10671915246.html


1915年生まれのエディソン。

注目されたのは1937年にカウント・ベイシー楽団に参加してからです。

当然、スタイルは「モダン」というよりは「スイング系」。

シリアスな演奏よりは、ちょっと肩の力を抜いた(ように聞こえる)

簡素なプレイを得意としています。


このアルバムはヴァーブお得意の「ジャム・セッション風」のもの。

リラックスしたエディソンの良さが出ていますし、

バンド全体の雰囲気も少し「ゆるい」です。

列車で言えば蒸気機関車、いやディーゼルカー(?)くらいの

スピード感でしょうか。


1956年9月4日、ロサンゼルスでの録音。


Harry "Sweets" Edison(tp)

Ben Webster(ts)

Jimmy Rowles(p)

Barney Kessel(g)

Joe Mondragon(b)

Alvin Stoller(ds)


②Used To Be Basie

「ボス」であるベイシーに捧げられたエディソンのオリジナル曲。

ミュートを使ったエディソンと、ベン・ウェブスターによって

シンプルなブルースが奏でられます。

特にウェブスターの男性的で懐の深い音色が素晴らしい。

最初のソロはピアノのジミー・ロウルズ。

明らかにベイシーを意識した「音を転がすような」プレイです。

シンプルで、余分な音を出すまいとしているのが窺えます。

続いて、ギターのケッセル。

こちらは彼らしい、基本的に軽妙でありながら、

時に低音で思い切りアクセントをつける名人芸です。

そして、ウェブスター。

豪胆なブロウとでも言うのでしょうか、

彼が繰り出す音には自信が満ちあふれています。

これだけ楽器を鳴らされたら、テナーも幸せなことでしょう。

ソロのラストはエディソン。

ミュートによるソロは決して派手なものではありませんが、

実にうまく空間を把握し、少ない音でもスイスイと

スイングしながら進行します。

スイングとは急速調で進むことではないのだと

改めて教えてくれるかのようなプレイです。

そして、根底に明るさがあることが何よりも演奏を

引き立てています。


③How Deep Is The Ocean

有名スタンダードですが、こちらも「シンプルに、味わい深く」

料理されています。

ギターのイントロからすっとエディソンのミュートが立ち上がって

メロディが提示されます。

これが枯れた味わいを漂わせた、非常に「迫ってくる」音色です。

メロディを吹いているだけでも、それぞれの音に対する強弱の

付け方だけで、曲が「動く」という感覚がある。

これこそジャズの魅力の一つでしょう。

続いて、ウェブスターのソロ。

こちらもミドル・テンポの中、「じわっと」迫ってきます。

全体を通じ、ウェブスターが非常に好調で、

この曲ではもっとソロを取っても良かったのではないかと思うほどです。

ケッセル、ロウルズの短いソロをはさんで、再びエディソン。

あとちょっとで泣き出しそうな哀感のある音色が続きます。

それでいながら、よく聴くと、時に早いパッセージを加えて

マンネリになることを避けてもいます。

音に説得力があるだけでなく、いかに「聴かせるか」まで計算していた

職人肌のミュージシャンがエディソンなのでしょう。


「お出かけ」とジャズで、良い気分転換をすることができました。

明日からの仕事に切り替えて行けそうです。

でも、また天気がいいと出かけたくなっちゃうな・・・