ノー・ホワット・アイ・ミーン?/キャノンボール・アダレイ | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


大型連休に入りました。

うまく休みをつなげれば9連休、

という方もいるかもしれません。


私はというと、4月30日の振替休日は出勤、

5月1~2日も普通に仕事、3日からは東京出張(!)

という、信じられないスケジュール。

連休明けに大きな仕事があるからなのですが、

あまりにも悲しい・・・・


しかし、そんなことを言ってもしょうがないのが

サラリーマン。

ここは気を取り直して、本日と明日の休みを

楽しむことにしました。

遠出はせず、身近な道東で・・・。


ただ、これはチャンスでもありました。

思えば、日々の仕事と冬の寒さに打ちのめされ、

あまり道東を回っていません。

まだまだ知らないところばかりですし、

釧路への転勤がなければ行かないようなところも

たくさんあります

(※魅力があるのですが、物理的に遠いのです!)。


まず、きょうは鶴居村に行ってみることにしました。

ここはその名前の通り、タンチョウ(鶴)がいることで

知られる村です。

ただし、それは主に冬の話。

春から秋にかけては釧路湿原などで過ごし、

冬になると人間がエサをくれる鶴居村にやってくるのです。


「何で野生動物にエサやりをしているの?」という声が

聞こえてきそうです。

これには、一度絶滅しかかったタンチョウを保護しなければという、

昭和20年代の地元の思いがあったのです。

今では「エサやり」に対する是非がありますが、

当時はともかく救わなくては、という切迫感がありました。


前置きが長くなりました。

私はタンチョウが見られないことを覚悟しつつ、

鶴居村に向かいました。

釧路から1時間くらいの近場ですし、

来シーズン、タンチョウ見学をするときの「下見」ができれば、

と考えたのです。


すると、大勢の人が集まっているスポットが!

 ↓

スロウ・ボートのジャズ日誌

なんと、タンチョウがいました!

(アイフォンのカメラではこれが限界でしたが・・・)

 ↓
スロウ・ボートのジャズ日誌-タンチョウ


平和にエサをついばんでいました。

この時期でも、少ないながら

タンチョウが給餌場に現れるそうです。

地元の方によると、いない日もあるそうで、

ラッキーだったのかもしれません

(もはや生態系のバランスが考えられなくなっています・・・)。


タンチョウは季節外れでしたが、

鶴居村ではいたるところで遅い春に出会いました

 ↓
スロウ・ボートのジャズ日誌-ふきのとう


ふきのとうがいっぱい!

よく見ていただくと分かりますが、すぐそばが車道です。

山に入らずとも簡単に取ることができる「山菜」。

北海道の自然の豊かさを感じました。


北海道でようやく生き生きと活動できる時期。

こうなると、ジャズも喜びに満ちたものでなくては。

取り出したのはキャノンボール・アダレイ(as)の

「ノウ・ホワット・アイ・ミーン?」です。


モダン・ジャズ・ファンなら、ビル・エヴァンス(p)と

アダレイの共演盤ということで、ご存じの方も多いでしょう。

ジャズには長い間、愛することができる作品がありますが、

これもそのうちの一つ。

何よりも、「音楽を楽しんでいることが伝わってくる」のです。


2人の個性は対照的です。

「ソウルフル」なアダレイと「リリカル」なエヴァンス。

組みそうもない2人ですが、

1958年4月からマイルス・デイヴィス(tp)のグループで

1年間ほど共演しています。

そのときから互いに一目置いていたのでしょう。

このアルバムではアダレイの方がかなりエヴァンスに歩み寄り、

「自分にないもの」との出会いを喜んでいます。


ベースとドラムはモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)のメンバー。

ここにも、リリカルなエヴァンスに寄り添った音楽を作ろうという

リーダーやプロデューサーの配慮が見えます。


1961年1月27日、2月21日、3月13日,、NYでの録音。


Julian "Cannonball" Adderley(as)

Bill Evans(p)

Percy Heath(b)

Connie Kay(ds)


①Waltz For Debby

エヴァンスが作曲した中でも一番有名なナンバーでしょう。

ややくぐもりながらも眩しい光を放つピアノ。

メロディをしっかり「ため」ながら紡いでいきます。

その後に登場するアダレイは非常に快活。

このメロディにここまで歓喜を込めたミュージシャンは

彼ぐらいでしょう。

張りのある音色で、ゴキゲンに吹きながら

一気にソロに入っていきます。

巧みにメロディを引用し、

時に彼らしい強いブロウが入るのもご愛敬。

こんなソロを展開されると、

エヴァンスも快活にならざるを得ません。

彼らしい美しさは保ちつつも、スインギーなソロで盛り立てます。

「デビー」はエバンスの姪に捧げられたものですが、

彼女にとってもうれしい仕上がりだったのではないかと

推測します。


⑥Elsa

アール・ジンダース作曲。

エヴァンスの愛奏曲で、ぐっと抑えたバラッドです。

まずエヴァンスのピアノでメロディが提示されます。

自身のトリオほどピリピリとした緊張感はないですが、

それでも一音一音に対する集中力と、

その美しさに圧倒されます。

メロディを受けてソロを取るアダレイは、

クリアな音色ながら、抑制したトーンを引き継ぎ、

見事に音楽を調和させています。

これは、互いの尊敬がなければ成立しない、

極めて微妙なバランスの中にある音楽だと言っていいでしょう。


⑧Know What I Mean

エヴァンスの作曲。

オリジナルの英文ライナーを読むまで知らなかったのですが、

この曲はアダレイのリクエストで、エヴァンスが急きょ

スタジオで作ったものだそうです。

タイトルはアダレイの口癖。

「言ってること分かる?」ぐらいの意味でしょうか。

これまで、私の中では「途中でラテン・リズムが入る変わった曲」

ぐらいのイメージしかありませんでした。

しかし、改めて聴き直すと、スタジオで急きょセッションした

荒削り感と緊張感がない交ぜで、面白く聴けます。

入りはバラッド。エヴァンスの短いイントロの後、

アダレイが「おそるおそる」という感じで入ってきます。

その後、エヴァンスがスローな展開を引き継ぎ、ソロを取ります。

これが終わると、急にリズムはラテンになり、アダレイのソロへ。

ふだんの彼なら、一気に走り出すのでしょうが、

これがエヴァンスの影響か、彼なりの解釈なのか、

猛スピードは控えています。

スインギーでありながら抑制的な流れを受けて、

エヴァンスのソロ。

どこか「きっぱりした」響きのあるピアノです。

こちらはアダレイのパワフルさに影響を受けたのでしょうか。

終わり方はかなり唐突で、何が出てくるか分からない

ハプニング的な要素を楽しんだことが伝わってきます。


休みらしい気分転換ができました。

お出かけとジャズがマッチすれば、

精神的にかなり救われる・・・

自分という人間の単純さを実感した一日でもありました。