アフロ・キューバン/ケニー・ドーハム | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


お子さんが夏休みに入った、

という方も多いのではないでしょうか。

様々なイベントで賑わう時期でもありますね。

私は昨夜、「釧路霧フェスティバル」に行ってきました。


もう27回目だというこのイベント、

「霧の街・釧路」をテーマにした夏祭りです。

メインの呼び物は「霧レーザーショー」。

霧に見立てたスモークにレーザー光線をあて、

幻想的な雰囲気を楽しんでもらおうというものです。


港に近いメイン会場、レーザーショーが始まる前は

こんな感じ↓


スロウ・ボートのジャズ日誌-会場


やがて会場は真っ暗に。

そして、レーザー光線が放たれると、

こんな風になりました↓


スロウ・ボートのジャズ日誌-レーザーショー


写真では雰囲気が伝わりにくいのですが、

なかなかきれいでした。

フェードアウト的な展開でなければ

もっと良かったかも・・・


このショー、2部に分かれていたのですが、

第一部のバックにかかっていた音楽が

「ラテン・ジャズ」でした。

パーカッションがきいたラテン・リズムに

分厚いホーンが重なる音楽は、

意外に「レーザー・ショー」に合っていたのです。


残念ながら演奏者は分かりませんでしたが、

私はあるアルバムのことを思い出していました。

ケニー・ドーハム(tp)の「アフロ・キューバン」です。


タイトル通り、ラテン・ムードたっぷりのこのアルバム、

初めて聴いた時に、非常に新鮮な印象を

受けたことを覚えています。

コンガに煽られてノリは激しいのに、

ホーン・アレンジはしっかりしていて、

十分「現代の音楽」として聴けるのです。

録音年を見ると、1955年!

こんなに早い段階から野心的な取り組みが

行われていたことに驚きです。

しかしまあ、ジャズというものの形が整っていなかった時代、

いろいろな実験が行われていたのでしょうね。


ケニー・ドーハムは「おとなしい」と考えられている

トランペッターですが、ここでは少し「熱い」一面を見せています。

さらに、そんなドーハムに刺激を受けたのか、

ハンク・モブレー(ts)までが絶好調のブロウを

聴かせてくれます。

ブルーノート1500番台の中では「初心者向け」

とは言えない作品ですが、

少し通になったところで耳にすると楽しめると思います。


1955年1月30日、3月29日、

ルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオにて録音。


Kenny Dorham(tp)

Hank Mobley(ts)

J.J.Johnson(tb)

Cecil Payne(bs)

Horace Silver(p)

Oscar Pettiford(b)

Percy Heath(b)

Art Blakey(ds)

"Patato" Valdes(per)


①Afrodisia

ドーハムのオリジナル曲。

冒頭、パーカッションとホーンで重厚な

イントロが奏でられるため、

何が起こるのか?と一瞬身構えます。

しかし、哀感あるメロディをトランペットが吹き始めると

あっという間に「ドーハム・ワールド」に

入り込んでしまうから不思議です。

そう、リズムはブレイキー(ds)と

ヴァルデス(per)によってノリノリなのですが、

そこにドーハムのソロが入ると、

ちゃんと「ジャズ」になるのです。

ブロウしつつ、どこかに繊細な表情をのぞかせるプレイ。

熱さに任せたブロウではなく、どこかでサウンド全体を

俯瞰しているかのようです。

ただ、強烈なホーンアレンジを受けた1分25秒以降は

かなり強く吹いています。

そんなドーハムの変化を聴くのも面白いトラックです。

ドーハムを受けて登場するのはモブレー。

彼らしいスムーズなフレーズをつないでいきながら、

2分50秒過ぎにはリズムに煽られて

かなり熱く吹いています。

ラストのコンガとドラムの掛け合いも楽しい。


②Lotus Flower

こういうバラッドを用意してくれているのが

50年代のいいところ。

ドーハムのオリジナル曲です。

ちょっとワルツが入っていると考えていいんでしょうか?

オーケストラのようなカラフルさがあるホーンにのせて、

ドーハムが柔らかくメロディを吹きます。

この「柔らかさ」がこういう優しい曲では引き立ちます。

パーカッションによる寛いだリズムをバックに、

ドーハムはソロでも中音域を生かした

プレイを繰り広げます。

ゆったりとしながら甘くならない演奏、

夕陽でも見ながら聴きたい気分です。

後半、ソロがなく、ホーンアレンジで進行する部分も

聴きもの。

展開としては意外ですが、この時代

「何でもアリ」なのですね。


⑥The Villa

こちらもドーハムのオリジナル曲。

パーカッションは入っていませんが、

ブレイキーのドラムが強烈な瀑布をきかせ、

それにメンバー全員がつられて乗ってしまった、

という感じのスピーディなトラックです。

最初のソロはドーハム。

典型的なハード・バップのソロで

短い音をどんどん繰り出してくるプレイです。

ラテン・リズムの時よりも激しい演奏と言えるかもしれません。

続いてモブレー。

ブレイキーの「コツコツ」ビートと、時々炸裂する瀑布のせいか、

こちらも急速ソロで応戦します。

ちょっと貫録をきかせるのがバリトンのセシル・ペイン。

精一杯早いプレイをしているのでしょうが、

ここはバリトンの性質もあってややゆったりに。

それが、急速一本槍になりそうなこのトラックの

「重し」となり、いい味を出しています。


そういえばジャズが夏の野外で流れることが多くなってから

かなり経ったような気がします。

素材としての魅力にいろいろな人が気づくようになった、

ということなのでしょうか?

何はともあれ、おいしいビールとジャズで

しばらく夏を楽しみたいものです。