オフランプ/パット・メセニー・グループ | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


街がすっかり暗くなっていますね。

震災による電力供給不足で、コンビニすら明かりを減らし、

東京が寂れた地方都市に見えるほど暗くなりました。

まあ、渋谷の街頭ビジョンが消えて

静かになったのは悪くないのですが・・・


実は私が一番暗さを感じるのは、街中ではなく職場です。

会社では、廊下の照明を消すようになりました。

夜になるとかなり暗く、すれ違う人も見えにくくなっています。

上司が向かってきても気がつかず、ひやりとしたことも・・・


この薄暗く、ちょっと先が見えないような雰囲気、

何かに似ている・・・・

ようやく、会社からの帰り道に思いだしました。

パット・メセニー(g)の「オフランプ」です。


ジャケットに描かれた高速道路が暗いから?

いえいえ、それだけではありません。

このアルバムには「薄暗い曲」の代表(?)、

「ついておいで」が収録されています。

原題は「Are You Going With Me?」。

このタイトルを見てから曲を聴いていくと、

暗闇の中、どこかに連れられて

迷い込んでいくような気がします。


ますます危険度を増している原発。

明らかに危機管理に失敗している大企業と政府。

やるせないことが多い毎日ですが、

危機に乗じて知恵のない言葉を叫ぶ人は信用したくない。

私はとりあえず、暗闇と音楽で「迷って」みることにしました。


1981年10月、NYでの録音。


Pat Metheny(g)

Lyle Mays(p,syn)

Steve Rodby(b)

Dan Gottieb(ds)

Nana Vasconcelos(per,vo)


②Are You Going With Me?

独特の「暗闇の詩情」がある曲です。

冒頭、ラテンともロックともつかない不思議なリズムが

延々と刻まれていきます。

最初はその単調さと淡々とした流れから、

「夜」を連想し、一体どこに連れて行かれるのか不安になります。

バックで奏でられているシンセサイザーも

薄く漂うような趣があり、電子楽器と言うよりも、

遠くから聞える何かの気配のよう。

暗い森に行くと、昼間に全然気付かなかった息遣いを感じますが、

このシンセサイザーの音はまさにそんな

「遠い空気感」を持っています。

やがて、キーボードが入って即興風の演奏となりますが、

この音色も何かの笛のようで、民俗音楽的な雰囲気が高まります。

いったい、自分たちはどこに向かっているのか?

安心できる素朴な世界なのか、油断のできない深い闇か?

そんな思いを抱えてしまう時に、

切り込んでくるのがメセニーのギター・シンセサイザー。

うねうねとした独特の流れが作り出され、

聴き手はその流れを予想しても全て裏切られていきます。

しかし、それが心地いいのです.

激しさを増すギターの音色に包まれると、

前半の淡々とした闇の中での不安は消え失せ、

そのパワーに身を委ねようという気持ちになります。

暗闇には「自由な場」がふんだんにあり、

ものすごいパワーを注ぎ込めることに気が付きます。


日々新しい事態が発生し、不安ばかりが募ります。

しかし、私自身を初め、「原発の安全性」を

完全にではなくても心のどこかで信じていたことが

今の事態を招いているとも言えます。


まずは甚大な被害が出ないように手を打つこと

(手遅れでなければいいのですが・・・)。

そして、不自由な「暗闇」が続く時に

新しいライフスタイルのヒントを見出すこと。

そんなことを求められる時が、

すぐそこに近づいているように思えます。