ザ・レッド・ガーランド・トリオ・ウィズ・     エディ“ロックジョウ”デイヴィス | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


いやはや、最近、閣僚の「失言」が相次いでいますね。


「(国会答弁は)二つだけ覚えておけばいい」とか、

「自衛隊は暴力装置」とか・・・

まあ、後者はある意味真実なのですが、

政権の中枢にいる人が使う言葉ではないでしょう。


しかし、民主党政権も困ったものですが、

失言を喜んで「問責決議だ!」と叫んでいる野党側もどうか・・・

何となくこうした風景、「見たことがある」気がします。

そう、自民党政権末期。

新しい内閣ができては一時的に支持率が上がり、

その後、首相自身や閣僚の失言で

次第に人気が下がっていくという、あれです。

何の生産性もない時期でした。


政権交代が実現した時、私が期待したのは

「足の引っ張り合いではない、本当の政策論議」でした。

実際、当時は与野党に緊張感があり、

「主張をぶつけなくては」という意識があったと思います。

それが、民主党の迷走と共に、両者がすっかりゆるみ、

政権交代前の「泥仕合」に戻ってしまいました。

何とも寂しい「いつか見た舞台」。

これからますます「政治離れ」が進むのでは・・・


政治のような「悪い既視感」ではなく、

いい意味で「これ、前に聴いたかな?」という感覚を呼ぶジャズを

きょうはご紹介しましょう。

「ザ・レッド・ガーランド・トリオ・ウィズ・エディ“ロックジョウ”デイヴィス」

です。


このアルバムはプレスティッジの傍系レーベル、

「ムーズヴィル」の一枚です。

当時、ムード音楽が流行っていたので、

ジャズでもスタンダード中心の「ムーディな作品」を

作っちゃおうという安直な企画。

しかし、中には素晴らしい作品が生まれています。

以前、トミー・フラナガン(p)の一枚を紹介しました。

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10224071711.html


「品の良さ」ではトミー・フラナガンに及ばないものの、

レッド・ガーランド(p)の作品もなかなかです。

非常に正統的な4ビート・ジャズで、

初めて聴いた時に「あれ?どこかで聴いたかな?」と

思ってしまいました。

それだけ、奇をてらわず、「普通に」演奏された

ジャズなのです。

「初めて聴いたときから懐かしい」-

そんな音楽もいいではありませんか。


基本的にピアノ・トリオですが、

全8曲中、3曲にテナー・サックスの

エディ“ロックジョウ”デイヴィスが参加しています。

非常に骨太でハートフルなサウンドを持つ彼の参加が

良いアクセントになっています。


1959年12月11日、ニュージャージーの

ルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオでの録音。


Red Garland(p)

Eddie"LOCKJAW"Davis(ts)

Sam Jones(b)

Arthur Taylor(ds)


①We'll Be Together Again

のっけから「懐かしい」気分にさせてくれる一曲です。

その立役者はデイヴィス。

短いピアノのイントロの後に、

男性的な図太い一音で入ってくるテナーを聴くと、

温かいものに包まれた気分になります。

何となく故郷に帰ったような・・・

テナーに思い切り息を吹き込んで、

音を「揺らす」オールド・スタイルの演奏。

これでスローなバラッドを吹かれると、

懐古調になってしまうのは当然です。

続くガーランドのピアノ・ソロは、

いつもの彼と比べると音が少ない。

たっぷり感情を込めて、それぞれの音を

「転がしている」かのようなソロです。

こういうスローなガーランドもいいですね。


③I Heard You Cried Last Night

こちらはガーランド・トリオの演奏。

愛すべき小品とでも言うべきトラックで、

同一テンポに乗って、ガーランドがひたすら

スロー・バラッドを奏でます。

派手な盛り上がりも何もない、淡々とした演奏ですが、

なぜか聴けてしまう。

おそらく、2分過ぎまでじっくり演奏されたメロディの流れが

そのままソロにも引き継がれているからでしょう。

どこまでがメロディでどこからがソロか、

分からなくなるほど両者が一体となった

「自然な」一曲です。


⑥Wonder Why

ピアノ・ソロによるイントロが魅力的な一曲。

ムーズヴィルの作品ということで、

ロマンチックな表現を重視したのでしょうが、

間の取り方といい、音の強弱の付け方といい、

カクテル・ピアノとは一線を画しています。

スローなイントロでたっぷりと「溜め」ができたところで、

ベースとドラムが加わり、トリオが躍動し始めます。

アート・テイラーの気持ちいいブラシに乗って、

ガーランドがブロック・コード混じりのソロを展開。

気持ち良いリズムと快調なピアノで、

鼻歌が出てきてしまいそうな演奏となっています。


政治の混乱も忘れてしまいそうな、安心して聴けるジャズ。

政治家の皆さんにも、こんな落ち着いた「名人芸」が

あればいいのですが。

「知恵のない言葉」の応酬はもうやめましょう・・・・