アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

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先日、散髪に行ってきました。

たまたま通りがかったところにあった、

「1000円カット」屋さんです。


デフレの時代とはいえ、

消費税込みで1050円はすごいですね。

安さに惹かれたのと、好奇心もあって

店に入ってみました。


中は意外におしゃれ。

壁の色は明るく、大きな鏡が。

コストダウンのため、受付の店員はおらず、

自販機で食券ならぬ「散髪券」を買います。

名前を紙に書いておき、順番を待つという「セルフ方式」。


呼ばれて席についてみると、

霧吹きで髪が濡らされました。

そう、「シャンプー」や「ブロー」はないのです。

髪を15分ぐらいでザクザク切って、

細かい毛は掃除機みたいなもので一気に吸い取ります。

なるほど、これなら大量の客をさばけるでしょうし、

「薄利多散髪(?)」で利益は出るのかもしれません。


客としては費用対効果で満足できるサービスでした。

しかし、私はちょっと引っかかるものを感じたのです。

髪を切っているのは非常に若い美容師さんたち。

彼らは、短時間で多くの客の髪を切らねばならない。

こうなると、求められるのは「仕事の丁寧さ」よりも

「最低レベルを確実にこなす力」ということになるでしょう。


そんな作業をずっと続けていって、

美容師としてのモチベーションを保てるのでしょうか?

若い間の修行として割り切るのか、

最初から技量を身につけることをあきらめているのか・・・

いずれにせよ、長く続ける仕事ではないような気がします。


そんなことを考えていたら、

アート・ブレイキー(ds)がリーダーを務める

「ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」のことを思い出しました。

確か、ウェイン・ショーター(ts)が

ジャズ雑誌のインタビューで

こう話していたのです。


「若いミュージシャンはアート・ブレイキーの

ジャズ・メッセンジャーズか、

マイルス・デイヴィスのバンドでプレイすべきだ。

得られるものは非常に大きい」


当時は、ブレイキーもマイルスも存命中でした。

マイルスは分からないのですが、

実はブレイキーはメンバーへの「金払い」が良くなかったと

別のところで読んだことがあります。

しかし、多くのミュージシャンが

「ブレイキーとプレイすれば、必ず何かを学べる」

と信じて、バンドに参加したのです。

お金は少ないけど、自分の成長を信じることができるという

モチベーションが、彼らにはあったのでしょう。


「ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」は、

ブレイキー以外のメンバーが

時代によってどんどん変わります。

その中でも、黄金期を作ったメンバーが

若かりし頃の作品を聴いてみましょう。

タイトルはズバリ、

「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」です。

ウェイン・ショーターという音楽監督を迎え、

「3管で新しいサウンドを作るぞ!」

という意欲が感じられるアルバムです。


1961年6月13~14日、ニュージャージーにて録音。


Art Blakey(ds)

Lee Morgan(tp)

Curtis Fuller(tb)

Wayne Shorter(ts)

Bobby Timmons(p)

Jymie Merritt(b)


①Alamode

「ア・ラ・モード」というタイトルの通り、

モード奏法を意識した曲。

作曲はカーティス・フラーで、

ハード・バップからちょっと時代が進んだ

響きがある佳曲です。

3管のハーモニーとピアノを対比させた

メロディが提示された後、

ショーターのソロに入ります。

彼のフレーズを滑らせるような独特のプレイが

モード時代を予感させます。

続くリー・モーガンのソロは相当熱く、

ここで時代がファンキー・ジャズに戻ったかのよう。

いや、この時代のメッセンジャーズは

様々なスタイルが混在していたと考える方が

いいのでしょう。

作曲者のフラーのソロも、

まだハード・バップのイメージが強いものです。

全体的には新しい時代に進みつつある

初々しさにあふれています。


③Circus

こちらも3管のハーモニーが印象的な曲。

ブレイキーが叩きだすラテン調のリズムに乗って、

ホーンが楽しいメロディを奏でます。

まだジャズ・メッセンジャーズが3管になって

日が浅い時期ですが、

バンドのサウンドが徐々に

出来上がってきているのが分かります。

こちらも最初のソロはショーター。

コルトレーン的なフレーズが目立ちますが、

彼らしいダークな「うねり」があります。

続くのはフラー。

ここでの彼は明るくトロンボーンを吹ききっていて、

爽快感のある演奏です。

リー・モーガンは相変わらず絶好調。

スピード感と彼らしいコブシをきかせたソロは

短いながら中身が充実しています。

ピアノのティモンズは彼にしてはちょっと

大人しいかもしれません。


アルバムを通して聴くと、決して傑作ではありませんが、

若手の「来るべき時代」に対する希望が感じられる内容です。


ジャズマンにせよ、美容師さんにせよ、

若いうちに「良き師」に巡り会えて

腕を磨くことができれば、

後で必ずいいことがあるのだと思います。

良き師の教えをもっと若い時に聞いておけばよかった、

という自分への反省もこめつつ・・・・