KYLYN LIVE/渡辺香津美 | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


このところ、このブログでの

ライブ報告が増えてきました。


仕事にかまけていると、

いつまでたってもライブを聴けません。

そのことに遅まきながら気がつき、

機会があればできるだけ足を運ぶことにしたのです。

今回は18日(日)に新宿ピット・インで行われた

渡辺香津美さん(g)のライブについてお伝えします。


この日のタイトルは

「渡辺香津美 ギター生活40周年記念 スペシャルセッション」。

そう、渡辺さんのデビューは40年前(!)なんですね。

17歳でデビュー作を発表したというのですから、

「天才ギタリスト」として騒がれたのも無理はないでしょう。

しかも、「天才少年」で終わらず、その後も第一線で

日本のジャズ・シーンを引っ張ってきたのですから

大したものです。


スペシャルライブのメンバーは渡辺さん、

日野皓正(tp)さん、鈴木勲さん(b)という豪華なものでした。

渡辺さんは56歳、日野さんは67歳、鈴木さんは77歳(!)。

渡辺さんが「師」と仰ぐメンバーを集めた形です。

さすがにライブの最後は日野さん、鈴木さんに

ちょっと息切れ的なところもあって、

体力的にはしんどいのかな?と思わせるところもありました。


しかし、その一方で感性が非常に若々しいことにも

驚かされたのです。

鈴木さんの右手で弦を激しく打ち付ける演奏

(エレキのチョッパー奏法を思い出しました)

からは、強烈なロック・ビートが生みだされました。

日野さんは普通にトランペットを吹くだけでなく、

ミュートを細切れに使ったり、マウスピースと手だけで

独特の音色を出したりと、パフォーマンス全開。

まだまだ音楽に「欲」を持っている人たちなのだなあと

圧倒されました。


今回のライブで一番印象に残ったのは

日野~渡辺のデュオで演奏された

「マイルストーンズ」です。

闇夜を切り裂く雷のような、鋭い音色を発した日野さん。

ビートを次々に変える、めくるめくソロで

この曲の持つ可能性をさらに深めた渡辺さん。

そして何よりも、二人ともこの曲を

本当に愛していることが伝わってきた演奏でした。


自宅に帰って聴きたくなったのが

1979年に演奏された「マイルストーンズ」。

渡辺さんをリーダーにした伝説のバンド

「KYLYN」のライブ盤の一曲です。

「KYLYN」は坂本龍一、矢野顕子、村上秀一ら

精鋭が参加したバンドですが、

半年ぐらいで活動が終わってしまいました。

録音も少ないのですが、

当時の熱気が色濃く伝わってくるのが

六本木ピット・インでのライブ盤です。

その中から、「俺たちの時代のジャズをやるんだ!」

という意気込みが感じられる「マイルストーンズ」を

聴いてみましょう。


1979年6月15、16、17日、

六本木ピット・インでのライブ録音。


渡辺香津美(g)

坂本龍一(key)

村上秀一(ds)

小原礼(b)

ペッカー(per)

向井滋春(tb)

清水靖晃(ts)

本多俊之(as)

矢野顕子(key)


④Milestones

ご存知、マイルス・デイヴィスの曲ですが、

完全に「フュージョン化」されています。

1979年と言えば、渡辺さんがYMOこと

イエロー・マジック・オーケストラと共に

ワールド・ツアーに参加した年でもあります。

まさにエレクトリック全盛の時代。

ここで聴かれるサウンドは

エレクトリックとジャズの融合を試みたものだと

言えるでしょう。

のっけから、向井滋春の激しいトロンボーンが吠えます。

しかし、これは単なるイントロに過ぎません。

続いて、渡辺さんのギターソロがいきなり始まります。

エフェクトがかなり効いた、ロック調の音色。

高速フレーズを次々に発し、

そこから「うねり」を作り出すソロが展開されます。

その熱気のすごいこと。

いま聴くと「懐かしさ」が感じられるサウンドですが、

当時としてはロックのパワーとジャズの即興が合体した

衝撃的なサウンドだったことでしょう。

激しいギター・ソロが終わってから、

ホーン陣が参加してメロディが現れます。

メロディが最後に現れるという演出にも、

彼らの「新しいことに挑む」姿勢が感じられます。


ライブの最後に渡辺さんが、

「諸先輩のおかげでここまでやってこられました。

 私だけということでなく、これからも日本のジャズを

 宜しくお願いします」

と語っていたことが印象的でした。


先輩からの刺激を受けつつ、変化を繰り返してきた渡辺さん。

きょうの演奏を聴くと、まだまだ新しいアイディアを

出してくれそうです。

日本のジャズにも幸あれ!