チェット/チェット・ベイカー | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


このブログでのジャズ・レビュー、

今回で200回目となりました。

20か月をかけて200回。

始めた当初と比べてペースは落ちていますが、

仕事が以前より忙しくなっていることを考えると

まあまあかなと思います。


私の持っているコレクションはおよそ2000枚。

ブログを始めた目的は、長らく聴いていない

「眠れるコレクション」に耳を傾け、

その良さを再発見することでした。

それが、進めていくうちに、

身の回りの出来事やニュースから連想した作品を

取り上げていくというスタイルになってしまいました。


こういうスタイルがどこまで続くのか、分かりません。

ひょっとしたら、また書き方が変わってくるかも・・・。

それでも、長らく自分を支えてくれたジャズへの恩返しとなるよう、

ブログを続けていきたいと思います。

幸い、記事を書くと200人ぐらいの方が読んでくださっているようです。

雑文にお付き合いくださっている読者の皆さんにも感謝します。

今後ともよろしくお願いします!


さて、200枚目のレビューはチェット・ベイカー(tp)の

「チェット」にすることにしました。

なぜこの作品なのか?

それは、「食わず嫌いはいけない」ということを

教えてくれた一枚だからです。


ジャズを聴き続けて25年以上経ちました。

聴き始めた時は、ジャズの専門誌などを熱心に読み、

未知のサウンドを想像して胸を躍らせたものです。

それが、長く聴いていくにつれ、

録音された時代やミュージシャンの顔ぶれを見るだけで

「当たりをつける」ことができるようになってきました。

「まあ、こんな演奏だろうな・・・」と推測できるし、

実際、その通りだったりするのです。


そうなると、「遠ざけてしまう」作品が出てきます。

私にとっては「チェット」がそんな一枚でした。

例えば、メンバーを見て、こんなことを思ったのです。

「ん?バリトン・サックスがペッパー・アダムス?

 やっぱりチェットと組むならマリガンじゃないの?」

「ハービー・マン(fl)にケニー・バレル(g)も入ってる?

 こんなにメンバーがいたら、ソロも短くて消化不良なんじゃない?」


聴いてもいないのに、うるさいですよね(笑)。

さらに、チェットに美女が寄り添うジャケットに

「軟弱さ」を感じた私は、ずっと購入を控えてきました。

それが、安売りで1000円を切っていたCDを見て、

「まあ、この値段ならいいだろう」と買ったのが先日のこと。


聴いてみると・・・いいですねえ!

「平明な良さ」というのでしょうか。

スタンダードのバラッドをそろえた演奏は、

分かりやすいけれど、非常にしっかりしている。

このメンバーなら思い切りハードな演奏もできたでしょうが、

そこをバラッドに絞ったところも潔い。

まだまだ私の知らない美しい世界があったのです。

これだからジャズはやめられません。


1958年12月30日と1959年1月19日、

NYでの録音。


Chet Baker(tp)

Pepper Adams(bs)

Herbie Mann(fl)

Kenny BurrelL

Bill Evans(p)

Paul Chambers(b)

Connie Kay(ds)

Philly Joe Jones(ds)


①Alone Together

ビル・エヴァンスの「くすんだきらめき」を発する

ピアノのイントロから、チェットのトランペットが入ってくるまでの

展開が絶品です。

それぞれの音色の相性がいいというのか、

「リリカル」という言葉はこの二人の為にあるかのようです。

おそらく、プロデューサーのオリン・キープニュースは

冒頭のこの部分だけでも聴いてもらいたいと思って

一曲目に配置したのでしょう。

ピアノ・トリオにチェット、ペッパー・アダムス、ハービー・マンが

加わったセクステットによる演奏です。

チェットの後にメロディを吹くペッパー・アダムスも、

ゴツイ音色は健在ですが、懸命にバラッドを吹いていて

なかなかの好演です。


②How High The Moon

再びセクステットによる演奏。

スロー・テンポで奏でられるメロディが、

ほのぼのとした味わいを持っていて、ほくそ笑みたくなります。

最初のソロはアダムス。

普段の彼と比べると、重厚さがかなりそぎ落とされたプレイで、

けっこう軽やかです。

そんなノリを受けて、続くフルート・ソロも軽快に進みます。

聴きものはやはり、リーダーのチェット。

音数は多くないながら、よくスイングするソロを取った後、

スッとメロディに戻ります。

そのわざとらしさがないスムーズさに、彼の実力を感じます。


⑦You'd Be So Nice Come Home To

これほどスローなこの曲の演奏も珍しいのでは?

チェットのため息が混じっているかのようにも聴こえる

スローなメロディ。

「切ない」という表現がぴったりです。

チェットのメロディ提示の後、ハービー・マンがソロを取ります。

こちらも、スローに、音数を絞ったソロで、

その「省エネ演奏」ぶりが非常に聴きやすい。

エヴァンスのソロはものすごく短く、

ファンとしては「聴き足りない!」と抗議したくなるのですが、

一方で、存在感のある美しい音色には「さすが!」と思ってしまいます。


このアルバム、おそらくジャズの専門誌などで評価を受ければ、

3つ星程度でしょう。

確かに、ジャズ・ジャイアンツたちの顔ぶれを見れば、

もっと派手な作品を期待するのも無理はありません。

しかし、こうした「普通のジャズ」を偉大なジャズマンが

淡々と演奏したことに、この作品の価値があります。

彼らの「普通の会話」がこれだけ魅力的であることが

分かるだけで十分なのです。


やはり「食わず嫌い」はだめですね。

これからも果敢にジャズを聴いていくぞ!

という熱い決意を胸に(?)、

201回目以降に進んでいきたいと思います。