ルパン・ザ・サード・ジャズ/大野雄二 | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


三連休の初日、我が家で友人を招いての

「家飲み」がありました。

人を招くことがほとんどなかった我が家、

食器などが足りないことが判明しましたが、

寛容なゲストのおかげで何とか乗り切れました。


鍋をやっている間、

BGMでジャズを流したのですが、

予想外の好評を得たのが

「ルパン・ザ・サード・“ジャズ”」でした。


テレビや映画でお馴染みの「ルパン三世」、

音楽は大野雄二さん(p)が担当しています。

このアルバムは大野さんが作曲した

「ルパン」のための曲をジャズ向けにアレンジ、

当人が演奏したというもの。

発表当時、洒落た内容が話題になったのを

覚えています。


大野さんはジャズ・ミュージシャンとして

大学在学中の1963年にキャリアをスタートさせた人。

しかし、その後、当時の「流行り」に疑問を感じ、

ジャズから距離を置きます。

その一方で、60年代の末期からCMの音楽制作に入り、

「売れっ子作家」となるのです。

たとえば明治製菓の

「きのこの山~は食べ盛り~♪」という曲は、

ある程度の世代の方なら聞いたことがあるでしょう。


「ルパン」の音楽制作を始めたのは1977年から。

実は「ルパン」がテレビに初登場したのはこの6年前。

「よみうりテレビ」が始めたシリーズがあったのですが、

かなり「大人向け」だったせいか、

半年ほどで終わってしまいました。

大野さんが担当したのは、「日本テレビ」が

再スタートさせた「ルパン」で、

音楽も大きく変わることになります。


「ルパン三世 ジャズノート&DVD」(講談社)

という本を大野さんが出しています。

この中でルパンの音楽で参考にしたのは

「マカロニウェスタン」だと語っています。

「荒野の用心棒」とか「夕陽のガンマン」とか、

いまタイトルを聞くとB級の匂いがプンプンしてくるのですが、

大野さんはこうしたものが大好きとのこと。


特に、音作りでは「劇画っぽいところ」に影響されたそうです。

「悪役には悪役らしい音、

ヒーローにはヒーローらしい音」と、

あざといまでに「わかりやすく効果的」な手法。

これを「ルパン」でも活用したそうで、

なるほど、銭形警部には演歌っぽい響きの曲があったなと

納得してしまうのです。


それでは、アルバムの内容に入りましょう。

演奏はピアノ・トリオが中心で、曲によって

ゲストが加わります。


大野雄二(p)

鈴木良雄(b)

村田憲一郎(ds)

横山達治(per)

杉本喜代志(g)

山田穣(as)

市原康(ds)


①Theme From Lupin Ⅲ

ルパン三世のテーマとして、非常に有名な曲。

もともとインストゥルメンタルとして作曲されたそうで、

「真っ赤な薔薇は あいつの唇~♪」という歌詞は

後からできたとのこと。

このバージョンではピアノ・トリオに

ギターとパーカッションを加え、

渋いアプローチをしています。

特にパーカッションで見事なグルーブが生まれ、

全体的にテンポを落としているのに

違和感なく聴くことができます。

ピアノでメロディが提示された後、

サビの部分をギターが引き受けるアレンジも良し。

ギターソロへの伏線となっており、

アドリブの世界へもすっと入っていけます。

大野さんのピアノ・ソロは流れるようなラインで

いい意味での「日本人らしさ」を感じます。


⑦Fire Treasure

我が家に来たゲストにも好評だった曲。

映画「ルパン三世 カリオストロの城」の主題歌。

この映画はあの宮崎駿さんが監督したもの。

大野さんもこの映画は

「テレビのルパンとニュアンスが違う」

と感じているそうです。

ルパンが純情な少女を大切にする

非常に「いい人」になっていたからでしょうね。

曲は「宮崎ルパン」を意識して作られたとのことで、

演奏も山田穣(as)を加えたしっとりとしたもの。

アルトサックスが近年の若手にしては珍しいほどの

「泣き」でバラッドを朗々と吹いていきます。

ソロでの淡々としながら少しずつ「泣き」を深めていく

表現力はなかなかのもの。

ピアノ・ソロも短く、「山田ワールド」が展開している

このアルバムの中でも異色のトラックです。


⑨Love Squall

個人的にお気に入りの一曲。

アニメのエンディングに使われるこの曲を、

トリオで演奏しています。

最初はしっとりと入りながら、

ピアノ・ソロの途中で次第にテンポ・アップしていく

流れが心地よい。

ドラムのブラシ、ベース・ソロの重厚さも良く、

トリオのまとまりが分かります。

歌詞の内容は知らないのですが、

私には激しいスコールの後、

穏やかに晴れ渡った風景が見えてくるようです。


CMで身に付けたエンターテイメントの要素と、

都会的なジャズの要素。

二つが組み合わさった音楽が、

「ルパン」の内容と絶妙にマッチし、

根強いファンができた一因となっているのでは

ないでしょうか。

アニメの音楽といえど、侮れないものです。

むしろ、日本の大衆文化の深さに

驚かされてしまったのでした。