三連休の初日、我が家で友人を招いての
「家飲み」がありました。
人を招くことがほとんどなかった我が家、
食器などが足りないことが判明しましたが、
寛容なゲストのおかげで何とか乗り切れました。
鍋をやっている間、
BGMでジャズを流したのですが、
予想外の好評を得たのが
「ルパン・ザ・サード・“ジャズ”」でした。
テレビや映画でお馴染みの「ルパン三世」、
音楽は大野雄二さん(p)が担当しています。
このアルバムは大野さんが作曲した
「ルパン」のための曲をジャズ向けにアレンジ、
当人が演奏したというもの。
発表当時、洒落た内容が話題になったのを
覚えています。
大野さんはジャズ・ミュージシャンとして
大学在学中の1963年にキャリアをスタートさせた人。
しかし、その後、当時の「流行り」に疑問を感じ、
ジャズから距離を置きます。
その一方で、60年代の末期からCMの音楽制作に入り、
「売れっ子作家」となるのです。
たとえば明治製菓の
「きのこの山~は食べ盛り~♪」という曲は、
ある程度の世代の方なら聞いたことがあるでしょう。
「ルパン」の音楽制作を始めたのは1977年から。
実は「ルパン」がテレビに初登場したのはこの6年前。
「よみうりテレビ」が始めたシリーズがあったのですが、
かなり「大人向け」だったせいか、
半年ほどで終わってしまいました。
大野さんが担当したのは、「日本テレビ」が
再スタートさせた「ルパン」で、
音楽も大きく変わることになります。
「ルパン三世 ジャズノート&DVD」(講談社)
という本を大野さんが出しています。
この中でルパンの音楽で参考にしたのは
「マカロニウェスタン」だと語っています。
「荒野の用心棒」とか「夕陽のガンマン」とか、
いまタイトルを聞くとB級の匂いがプンプンしてくるのですが、
大野さんはこうしたものが大好きとのこと。
特に、音作りでは「劇画っぽいところ」に影響されたそうです。
「悪役には悪役らしい音、
ヒーローにはヒーローらしい音」と、
あざといまでに「わかりやすく効果的」な手法。
これを「ルパン」でも活用したそうで、
なるほど、銭形警部には演歌っぽい響きの曲があったなと
納得してしまうのです。
それでは、アルバムの内容に入りましょう。
演奏はピアノ・トリオが中心で、曲によって
ゲストが加わります。
大野雄二(p)
鈴木良雄(b)
村田憲一郎(ds)
横山達治(per)
杉本喜代志(g)
山田穣(as)
市原康(ds)
①Theme From Lupin Ⅲ
ルパン三世のテーマとして、非常に有名な曲。
もともとインストゥルメンタルとして作曲されたそうで、
「真っ赤な薔薇は あいつの唇~♪」という歌詞は
後からできたとのこと。
このバージョンではピアノ・トリオに
ギターとパーカッションを加え、
渋いアプローチをしています。
特にパーカッションで見事なグルーブが生まれ、
全体的にテンポを落としているのに
違和感なく聴くことができます。
ピアノでメロディが提示された後、
サビの部分をギターが引き受けるアレンジも良し。
ギターソロへの伏線となっており、
アドリブの世界へもすっと入っていけます。
大野さんのピアノ・ソロは流れるようなラインで
いい意味での「日本人らしさ」を感じます。
⑦Fire Treasure
我が家に来たゲストにも好評だった曲。
映画「ルパン三世 カリオストロの城」の主題歌。
この映画はあの宮崎駿さんが監督したもの。
大野さんもこの映画は
「テレビのルパンとニュアンスが違う」
と感じているそうです。
ルパンが純情な少女を大切にする
非常に「いい人」になっていたからでしょうね。
曲は「宮崎ルパン」を意識して作られたとのことで、
演奏も山田穣(as)を加えたしっとりとしたもの。
アルトサックスが近年の若手にしては珍しいほどの
「泣き」でバラッドを朗々と吹いていきます。
ソロでの淡々としながら少しずつ「泣き」を深めていく
表現力はなかなかのもの。
ピアノ・ソロも短く、「山田ワールド」が展開している
このアルバムの中でも異色のトラックです。
⑨Love Squall
個人的にお気に入りの一曲。
アニメのエンディングに使われるこの曲を、
トリオで演奏しています。
最初はしっとりと入りながら、
ピアノ・ソロの途中で次第にテンポ・アップしていく
流れが心地よい。
ドラムのブラシ、ベース・ソロの重厚さも良く、
トリオのまとまりが分かります。
歌詞の内容は知らないのですが、
私には激しいスコールの後、
穏やかに晴れ渡った風景が見えてくるようです。
CMで身に付けたエンターテイメントの要素と、
都会的なジャズの要素。
二つが組み合わさった音楽が、
「ルパン」の内容と絶妙にマッチし、
根強いファンができた一因となっているのでは
ないでしょうか。
アニメの音楽といえど、侮れないものです。
むしろ、日本の大衆文化の深さに
驚かされてしまったのでした。
