アバウト・タイム/マイク・ルドンヌ | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。


私の引っ越し、明後日に迫ってきました。

荷物の整理を進めているのですが、

そうこうするうち、この「ジャズ日誌」が書けなくなってきました。


理由は簡単、「あれを聴きたいな」という作品が

ダンボールに入ってしまっているからです。

いつも書きたいことがあると、棚から作品を取り出し、

聴きながらブログを書いているわけですが、

それができません。


いま、ダンボールに入っていないのは、

最近になって購入し、まだ「聴き込んでいない」ものばかり。

しまってしまおうかな・・・・

いや、ちょっとだけ聴いてみて、良かったらブログを

書いてみようか・・・・

そんな逡巡を経て、聴いてみた一作が好盤だったので、

引っ越し前最後(たぶん)の日誌を記すこととします。


ピアニスト、マイク・ルドンヌの「アバウト・タイム」。

彼のファースト・リーダー作です。

ルドンヌはあまりメジャーではないので、簡単に経歴を。

1956年、アメリカのコネチカット州生まれ。

父親はギタリストで、早くから音楽の才能を

開花させていたようです。

ニューヨークに渡ってからは、アル・グレイ(tb)、

スコット・ハミルトン(ts)、アート・ファーマー(tp)らと共演し、

キャリアを磨きます。

この作品を録音した1988年1月には若手有望ピアニスト

といった位置づけでした。

現在はオルガンも演奏し、自己のリーダー作を次々に発表。

NYでは中堅の先頭に立っていると言っていいでしょう。


この作品の良いところは、初リーダー作なのに

変に肩の力が入っていないこと。

新人にありがちな奇をてらったところがなく、

グルーブを大切にした、ノリのいいジャズが聴けます。

ルドンヌ自身もライナーで

「参加ミュージシャンがみんなゆったり構えていた」

と言っています。

80年代後半というバブル時代にもかかわらず、

性急さがない、リラックスしたジャズ。

どんな時代にもいいジャズは生まれているのです。


1988年1月11日、ニュージャージーの

ルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオでの録音。


Mike LeDonne(p)

Tom Harrell(tp,flh)

Gary Smulyan(bs)

Dennis Erwin(b)

Kenny Washington(ds)


当時は若手ながら、

今は第一線で活躍しているという

顔ぶれが目立ちます。


①Boo's Blues

「Boo(ブー)」って誰?と思いますが・・・

ルドンヌの作曲です。

80年代という、浮ついた時代に合わぬ

「重し」が付いたブルース。

ホーン陣がちょっと気だるさもある

テーマを吹いたあと、

ルドンヌのソロが入ります。

テイストは違いますが、

ソニー・クラーク(p)の「クール・ストラッティン」を

思い出させるホーン~ピアノへの流れです。

ルドンヌのピアノはややパーカッシブで、

程良い力強さがあります。

もう少し強いと嫌気がさしますが、

ギリギリのところで心地よい響きを

生んでいるのが不思議。

続くトム・ハレルのトランペットは

アート・ファーマー(tp)に似た音色があり、

ますますハード・バップの全盛期を思い出させます。


③All Too Soon

デューク・エリントンの曲に、ルドンヌが冒頭から

しっとりとしたイントロをつけていきます。

このあたり、彼に繊細な面があることも

気付かせてくれます。

途中からホーンが加わり、

ピアノと絶妙な対比を作りながら

メロディを奏でていきます。

この辺りのアレンジも全く無理がなく、

ヴェテランの演奏のようです。

最初のソロはトム・ハレル。

フリューゲル・ホーンの柔らかい音色が心地よい。

これに対し、音量は抑えつつもゴツゴツした

ゲイリー・スマライアンのバリトン・サックスが入ると、

甘さに流されない、いい意味での緊張感が走ります。

リーダーのルドンヌのソロはアーシーなタッチもありつつ、

美しくまとめています。

「全体的に美しいが細部は辛い」、いい演奏です。


今日からCDは全てダンボールにまとめることに

なりそうです。

オーディオの配線も外していかなければ・・・・

ジャズ好きにはしばし我慢の時ですが、

引っ越し先で快適な音楽生活が送れることを祈りつつ

片付けを進めます。