「ジャケット良ければ内容良し」-
この考えはジャズファンの間で当たり前となっていると
言っていいでしょう。
実際、私自身、「ジャケ買い」をしたら、
内容も良かったという経験を何度もしています。
当然、逆もありで、「ジャケットが悪ければ内容も悪い」
ということになります。
バーニー・ケッセル(g)の「オン・ファイア」。
まあ、ジャケットはひどいものです。
ギタリストを真ん中に裸踊りをしている女性。
バックにはタイトルそのままに燃え盛る炎。
「そのままじゃん!」-いつもボケ役と言われる私でも
突っ込みたくなります。
内容も絶望的かと思えるのですが、
ジャズ雑誌などで評価が高いので、試しに買ってみました。
うーん、良いではないですか。
バーニー・ケッセルは非常に良くスイングするギタリストで、
私が知る限りでは、常に好調を維持しています。
アメリカ西海岸で活躍したせいか、ブルース・フィーリングがありながら
音が軽やかで、楽しんで聴ける人。
そんな彼が、初めてライブに挑んだのがこの作品なのですが、
相変わらずの腕前を見せつつ、ライブらしい熱さもあって、
素晴らしい出来になっているのです。
1965年の録音。
Barney Kessel(g)
Jerry Scheff(b)
Frank Capp(ds)
②Just In Time
ケッセルお得意の超絶コードワークが全開の一曲。
私は楽器をやりませんが、聴いているだけで目が回りそうな
ものすごいフレーズが猛スピードで出てきます。
しかし、圧倒されそうなところで、的確なコードや
ユーモアあふれるフレーズが顔を出し、
音楽として十分聴けてしまうのです。
ただのバカテク・ギターではない、この人間味に
敬服しました。
③The Shadow Of Your Smile
スピードだけでなく、抒情性もあるのがケッセルのすごいところ。
ジョニー・マンデルの有名なメロディを実にじっくり弾いていきます。
わずか3分半の演奏なのに、冒頭から2分過ぎまでメロディを
弾いているところからも、彼の曲に対する思いが窺えます。
短いソロでは、コードをうまく生かしつつ、しっとりとした味わい。
こんなに愛おしそうに弾くケッセルのソロもなかなかありません。
そして、またあのメロディへ戻って終息します。
この他、④Recado Bossa Nova で聴かれるマイナー・ムードも
魅力的です。
ちなみにジャケットが変わったものになっているのには、
レーベルの事情もあるようです。
この作品、「エメラルド」というマイナーレーベルから出されたのですが、
親会社は「フィレス・レコード」。
「フィレス・レコード」は、ビートルズのプロデュースでも知られる
フィル・スペクターが興しているのです。
後に「レット・イット・ビー」のプロデュースをする彼が
ジャズに興味を持っていたのかは分かりません。
しかし、普通のジャズではありえないジャケットになった背景には、
「こんなもんかな?」という軽いノリがあるように思えます。
「悪しきジャケットの名作」が生まれるのにも、
様々な事情があるのですね。
