オン・ファイア/バーニー・ケッセル | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

On Fire


「ジャケット良ければ内容良し」-

この考えはジャズファンの間で当たり前となっていると

言っていいでしょう。

実際、私自身、「ジャケ買い」をしたら、

内容も良かったという経験を何度もしています。


当然、逆もありで、「ジャケットが悪ければ内容も悪い」

ということになります。

バーニー・ケッセル(g)の「オン・ファイア」。

まあ、ジャケットはひどいものです。

ギタリストを真ん中に裸踊りをしている女性。

バックにはタイトルそのままに燃え盛る炎。

「そのままじゃん!」-いつもボケ役と言われる私でも

突っ込みたくなります。


内容も絶望的かと思えるのですが、

ジャズ雑誌などで評価が高いので、試しに買ってみました。

うーん、良いではないですか。

バーニー・ケッセルは非常に良くスイングするギタリストで、

私が知る限りでは、常に好調を維持しています。

アメリカ西海岸で活躍したせいか、ブルース・フィーリングがありながら

音が軽やかで、楽しんで聴ける人。

そんな彼が、初めてライブに挑んだのがこの作品なのですが、

相変わらずの腕前を見せつつ、ライブらしい熱さもあって、

素晴らしい出来になっているのです。


1965年の録音。


Barney Kessel(g)

Jerry Scheff(b)

Frank Capp(ds)


②Just In Time

ケッセルお得意の超絶コードワークが全開の一曲。

私は楽器をやりませんが、聴いているだけで目が回りそうな

ものすごいフレーズが猛スピードで出てきます。

しかし、圧倒されそうなところで、的確なコードや

ユーモアあふれるフレーズが顔を出し、

音楽として十分聴けてしまうのです。

ただのバカテク・ギターではない、この人間味に

敬服しました。


③The Shadow Of Your Smile

スピードだけでなく、抒情性もあるのがケッセルのすごいところ。

ジョニー・マンデルの有名なメロディを実にじっくり弾いていきます。

わずか3分半の演奏なのに、冒頭から2分過ぎまでメロディを

弾いているところからも、彼の曲に対する思いが窺えます。

短いソロでは、コードをうまく生かしつつ、しっとりとした味わい。

こんなに愛おしそうに弾くケッセルのソロもなかなかありません。

そして、またあのメロディへ戻って終息します。


この他、④Recado Bossa Nova で聴かれるマイナー・ムードも

魅力的です。


ちなみにジャケットが変わったものになっているのには、

レーベルの事情もあるようです。

この作品、「エメラルド」というマイナーレーベルから出されたのですが、

親会社は「フィレス・レコード」。

「フィレス・レコード」は、ビートルズのプロデュースでも知られる

フィル・スペクターが興しているのです。

後に「レット・イット・ビー」のプロデュースをする彼が

ジャズに興味を持っていたのかは分かりません。

しかし、普通のジャズではありえないジャケットになった背景には、

「こんなもんかな?」という軽いノリがあるように思えます。


「悪しきジャケットの名作」が生まれるのにも、

様々な事情があるのですね。