ディジー・アトモスフィア/リー・モーガン、ウィントン・ケリーほか | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

Dizzy Atomosphere


親分がうっとうしい。

どんな組織でもリーダーというのは部下からすると「重たい」もの。

リーダーからは「何でも言ってくれたまえ」とか言われますが、

そんなに簡単に打ち解けられるわけはありません。

うっかり本当のことを言おうものなら、大変なことになります。


それでは、親分が急にいなくなったらどうなるか。

そんなことが現実に起こったのが、今回ご紹介する作品です。

1957年、ディジー・ガレスピー(tp)楽団でウエスト・コーストのツアーに

参加していた7人のメンバーが、リーダーの目の届かないところで

セッションをしたのです。

「今日は俺たちが主役だぜ!」とばかり、張り切っているのが

サウンドからビシビシ伝わってきます。


それでは、集まったメンバーが解放感で騒ぐだけ騒いで、

おもちゃ箱をひっくり返した状態になったかと言うと、そうでもないのです。

このアルバムには、ロジャー・スポッツとベニー・ゴルソンが

アレンジャーとして参加していて、

暴れん坊たちの手綱を引いているのです。

その結果、元気ハツラツの演奏もあり、

アレンジが生きた完成度の高いものもありと、

面白い作品になりました。


メンバーは以下の通りです。


Lee Morgan(tp)

Al Grey(tb)

Billy Mitchell(ts)

Billy Root(bs)

Wynton Kelly(p)

Paul West(b)

Charles Persip(ds)


①Dishwater

冒頭、アルバム全体でもハイライトとなるソロがいきなり始まります。

ウイントン・ケリー(p)のピアノから繰り出される急速調ソロ。

メロディーも弾かず、いきなりソロをとるのは難しいはずですが、

親分のいない解放感からか、フレーズが出てくる出てくる。

それも、後期のケリーに見られる、お得意の節を重ねるタイプのソロではなく、

湧き出るアイディアをポンポン放つ感じで、まるで泉のようなのです。

他のメンバーが「あいつ、いっちゃったな・・・・」と

目を丸くしている光景が浮かんでくるようです。

その後、ホーン群がメロディーを奏で、ソロを取るのはリー・モーガン(tp)。

ここでの彼はケリーに触発されたのか、非常に攻撃的です。

次第にテンポを上げていき、高音をどんどんヒットさせる。

かなり高度なことを難なくやっているように聞こえ、憎たらしいぐらいです。

当時、若干18歳。全く、信じられません。

このトラックではビリー・ルート、アル・グレイも続き、

メンバーでソロを回していく、典型的なジャム・セッションのスタイルを

とっています。

「好き放題できる」喜びが爆発した、最も生きのいいトラックです。


④Whisper Not

おなじみのゴルソンによる名曲。

モーガンの演奏としては、ブルー・ノートに残したものの方が

はるかに有名ですが、この演奏もなかなかです。

ミュートをつけたモーガンが、ひねってみたり、飛び跳ねてみたり、

いろいろな表情で迫ってきます。

一体、どうしたらこういうセンスが身に付くんでしょうね。

続いてのケリーは①とは打って変わって曲調に合った渋いソロ。

全体にミュージシャンがゴルソン・ハーモニーに染められ、

統率のとれた演奏となっています。


⑥Day By Day

アル・グレイののんびり・ほんわかトーンが光るバラッド。

メロディーからそのままソロにつながるグレイのプレイは、

本作の中で彼が最も生きている部分だと言えるでしょう。

「あんまり細かいこと考えなくてもいいや」と思いたくなるほど、

トロンボーンの包容力に救われる演奏です。


⑧Over The Rainbow

有名なスタンダード。

ホーン群による印象的な音のさざめきから、

ビリー・ミッチェルのテナーが立ち上がってきます。

曲への愛情が感じられるじっくりとしたアプローチで、

ビッグ・バンドで鍛えられた上質の展開力もあります。

これを聴くと、彼はもっと評価されていいミュージシャンではないかと

思ってしまいます。


全体を通じて、個々のミュージシャンがリラックスしながらも

一生懸命プレイをしています。

「親分の仕事」だけじゃないんだ、自分を聴いてくれー

日頃から磨いていた技を披露する絶好の機会を大切に

したのかもしれません。

考えてみると、親分の庇護がない時にでも実力を発揮できる、

それが本当のプロなのかもしれませんね。