スイート・リターン/フレディ・ハバード | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

Sweet Return


「思い出のメロディー」などという音楽番組がありますよね。

ある特定の時代の曲を集め、歌手も懐かしい顔ぶれが

揃うという類の番組。

これで「黄金の80年代ポップス」というテーマを組まれると、

もうすぐ40歳になろうかという私はガクっときます。

小学校高学年から大学生までを過ごした80年代が

既に「歴史」となっている事実に驚愕するのです。


最近、景気も含め世の中に停滞感が漂っているせいか、

底抜けに明るかった80年代を懐古する企画が増えている気がします。

そういえば、ジャズにも「80年代的な」作品がありました。

きょうはその中の一作を取り上げてみましょう。


フレディ・ハバード(tp)が1983年に吹き込んだ「スイート・リターン」。

まず、メンバーを見てみましょう。


Freddie Hubbard(tp)

Lew Tabackin(ts,fl)

Joanne Brackeen(p)

Eddie Gomez(b)

Roy Haynes(ds)


オールスターズと言えるメンバーで、内容もストレートアヘッド。

一体、どこが「80年代的」なのかというと・・・「録音」です。

全体的に録音された音が明るく、ちょっと薄っぺらいのです。


いちばん録音の特徴が表れているのが、

①スイート・リターン 

でのベースです。

この曲、ベースが刻むビートがメロディーの柱となっていて、

非常に重要な役割を負っています。

イントロもベースから始まるのですが、

この音がいかにもアンプで増幅しました、という感じの軽いもの。

当時、この手の録音が非常に流行っていて、

ジャズ雑誌では「ベース音の電気的な増幅は是か非か」みたいな

論争まで起こっていました。

ここで聴かれるベース音はやはり軽いもので、

「腹に来る」感じはありません。

他の楽器ではピアノが軽く、「平べったい」感じすらあります。

おそらく、実際のジョアン・ブラッキーンはもっと重いピアノを弾く人だと

思うのですが・・・・。

この当時、ジャズの世界でも「軽いタッチ」がもてはやされていた

ということでしょう。

そういえば、マイケル・ジャクソンの「スリラー」が

まだまだバカ売れし、軽快なポップス全盛の時代でもありました・・・


ただ、誤解のないように書いておくと、この作品、

けっこう聴きごたえがあるのです。


②ミスティ

この曲の名演の一つです。

ハバードがフリューゲル・ホーンを使って情感たっぷりに

歌いあげるメロディ。

夕暮れ時、霧に美しい光が射している風景を想像してしまいます。

彼のバラッド演奏の中でも屈指の仕上がりです。


④カリプソ・フレッド

ハバードのオリジナル。

軽い録音の本作の中で、重量感を持って迫ってくるのが

ロイ・ヘインズのドラム。

ここでも、切れ味鋭く、全体を煽りたてます。

ソロではコンガ風の響きまであり(どうやって演奏しているのか?)、

楽しませてくれます。


⑥夜は千の眼を持つ

お馴染みのスタンダード。

ハバード、タバキンらがスピード感あるソロを聞かせてくれます。

ここでもキーパーソンはへインズ。

ベースと交替でとっていくソロに重みがありながら、

乾いたスッキリさもある。

この人のセンスの良さ、攻撃性には本当に脱帽です。


いつの間にかロイ・へインズのことを書いてしまいました。

彼の凄さは、録音に多少色合いがあっても、

消すことができない強烈な個性を持っている、ということなんですね。

軽薄な時代にあっても聴きごたえを持っている

「黄金の80年代ジャズ」について、いつかまとめて書いてみましょうか。

自分の歴史をたどるようで怖い気もしますが。