「思い出のメロディー」などという音楽番組がありますよね。
ある特定の時代の曲を集め、歌手も懐かしい顔ぶれが
揃うという類の番組。
これで「黄金の80年代ポップス」というテーマを組まれると、
もうすぐ40歳になろうかという私はガクっときます。
小学校高学年から大学生までを過ごした80年代が
既に「歴史」となっている事実に驚愕するのです。
最近、景気も含め世の中に停滞感が漂っているせいか、
底抜けに明るかった80年代を懐古する企画が増えている気がします。
そういえば、ジャズにも「80年代的な」作品がありました。
きょうはその中の一作を取り上げてみましょう。
フレディ・ハバード(tp)が1983年に吹き込んだ「スイート・リターン」。
まず、メンバーを見てみましょう。
Freddie Hubbard(tp)
Lew Tabackin(ts,fl)
Joanne Brackeen(p)
Eddie Gomez(b)
Roy Haynes(ds)
オールスターズと言えるメンバーで、内容もストレートアヘッド。
一体、どこが「80年代的」なのかというと・・・「録音」です。
全体的に録音された音が明るく、ちょっと薄っぺらいのです。
いちばん録音の特徴が表れているのが、
①スイート・リターン
でのベースです。
この曲、ベースが刻むビートがメロディーの柱となっていて、
非常に重要な役割を負っています。
イントロもベースから始まるのですが、
この音がいかにもアンプで増幅しました、という感じの軽いもの。
当時、この手の録音が非常に流行っていて、
ジャズ雑誌では「ベース音の電気的な増幅は是か非か」みたいな
論争まで起こっていました。
ここで聴かれるベース音はやはり軽いもので、
「腹に来る」感じはありません。
他の楽器ではピアノが軽く、「平べったい」感じすらあります。
おそらく、実際のジョアン・ブラッキーンはもっと重いピアノを弾く人だと
思うのですが・・・・。
この当時、ジャズの世界でも「軽いタッチ」がもてはやされていた
ということでしょう。
そういえば、マイケル・ジャクソンの「スリラー」が
まだまだバカ売れし、軽快なポップス全盛の時代でもありました・・・
ただ、誤解のないように書いておくと、この作品、
けっこう聴きごたえがあるのです。
②ミスティ
この曲の名演の一つです。
ハバードがフリューゲル・ホーンを使って情感たっぷりに
歌いあげるメロディ。
夕暮れ時、霧に美しい光が射している風景を想像してしまいます。
彼のバラッド演奏の中でも屈指の仕上がりです。
④カリプソ・フレッド
ハバードのオリジナル。
軽い録音の本作の中で、重量感を持って迫ってくるのが
ロイ・ヘインズのドラム。
ここでも、切れ味鋭く、全体を煽りたてます。
ソロではコンガ風の響きまであり(どうやって演奏しているのか?)、
楽しませてくれます。
⑥夜は千の眼を持つ
お馴染みのスタンダード。
ハバード、タバキンらがスピード感あるソロを聞かせてくれます。
ここでもキーパーソンはへインズ。
ベースと交替でとっていくソロに重みがありながら、
乾いたスッキリさもある。
この人のセンスの良さ、攻撃性には本当に脱帽です。
いつの間にかロイ・へインズのことを書いてしまいました。
彼の凄さは、録音に多少色合いがあっても、
消すことができない強烈な個性を持っている、ということなんですね。
軽薄な時代にあっても聴きごたえを持っている
「黄金の80年代ジャズ」について、いつかまとめて書いてみましょうか。
自分の歴史をたどるようで怖い気もしますが。
