人間、お買い得品を手にすると本当にうれしいものです。
この作品を格安の中古で買って聴いた時、
その内容の良さに思わず拍手をしたくなりました。
ケニー・バレル(g)の作品としては非常に地味ながら、
私のお気に入りです。
プレスティッジの傍系レーベル、ムーズヴィルから出たこの作品、
録音は1962年です。
オリジナルのライナー・ノーツはロバート・レヴィンという人が書いていて、
これがなかなか興味深い。
彼はレコーディングに直接立ち会ったようで、
その時のミュージシャンの様子を描写しています。
高いスツールに座りながら、録音したトラックを聴き直すバレル。
ダーク・スーツに身を固め、威厳すら漂わせながら、
時にジョークを口にするコールマン・ホーキンス(ts)。
午後早くから始まったセッションの途中、
4時ぐらいに遅いランチが持ち込まれ、
皆でサンドイッチをぺろりと平らげたことまで書いてあり、
何とも微笑ましい感じがします。
このライナーの中で紹介されているバレルの言葉が
演奏内容をよく表しているのでご紹介しましょう。
「Let's play something pretty. Think of something pretty.」
日本語にうまく訳せないのですが、かしこまったり、
迫力で押すのではなく、何か“感じのいい”音楽をやろうよ、
というメッセージが伝わってきます。
実際、作品全体を通して急速調の曲はなく、
穏やかなムードを大切にしたトラックが並んでいます。
そして、そのどれもが優しく、どこか「品格」があるものに
なっています。
メンバーはなかなか豪華です。
Kenny Burrell(g)
Coleman Hawkins(ts)
Tommy Flanagan(p)
Major Holey(b)
Eddie Locke(ds)
Ray Barretto(conga)
コンガが入っていることで、リズムがバラエティーに
富んだものになっています。
①Tres Talbras
この作品を象徴する「不思議な」ナンバー。
ラテン的なリズムを使い、ボサ・ノヴァのような味わいがありながら、
ブルージーな香りも濃厚・・・・
バレルのオリジナリティがよく出ていると思います。
ここでのバレルのギターは、アコースティックではないかと思えるほど
憂いを含み、繊細な音を響かせます。
続くフラナガンのソロは音数が少ない、非常に可憐なもの。
御大のホーキンスは低音中心の図太い音色で
この曲をぐっとムーディーなものにしていきます。
3人それぞれが作り出す雰囲気に酔いたくなるトラックです。
⑤I thought about you
ご存じのスタンダードをしっとりと料理しています。
まず、ホーキンスのイントロから、鮮やかにバレルのメロディーに
移り変わる展開に引き込まれます。
メロディーのバックでホーキンスがつけるバックが
優しくて何ともいい感じです。
ソロはホーキンスからで、息遣いが随所で聞こえてくる、
じわっとした演奏。
バレルのソロは、この作品の中では乾いた音色を聞かせ、
それがテナーといい意味でのコントラストをつけています。
他にも良いトラックがありますので、
機会があればぜひ聴いてみてください。
“somethig pretty”なものをー
そんな発想が演奏者に共有されているからこそ出来上がった
愛すべき作品です。
