A Shade Of Difference/ヘレン・メリル | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

A Shade of Difference



何だか急に涼しくなってきました。

きょう、帰宅する時、強い風が吹いていたのですが、

ちょっと冷たさを帯びていて、秋を感じました。

まだ日中の気温は高いですが、

確実に季節は移り変わっているようです。


秋になると聴きたくなるのが女性ヴォーカル。

なぜなのかよく分らないのですが、

やはり温もりが欲しくなるのでしょうか。

取り出したのはヘレン・メリル(vo)の作品。

先日、彼女の「さよならコンサート」が東京で行われましたが、

私は仕事で行けませんでした。残念・・・・


独特のハスキー・ヴォイスが魅力の彼女ですが、

技術を磨くにあたってホーン奏者から多くを学んだそうです。

そのせいか、彼女はいつもバンド全体のサウンドをとても大切にし、

歌うにあたって、各奏者のソロに強く影響を受けているように思えます。


この作品も、普通の歌手ならありえない豪華なバックがついています。

長くなりますが、メンバーを書いていきましょう。


Thad Jones(cor)

Hubert Laws(fl)

Gary Bartz(as)

Dick Katz(p,Arrangements)

Jim Hall(g)

Richard Davis(b)

Ron Carter(b)

Elvin Jones(ds)


誰がリーダーになってもおかしくない、すごい人たちばかりです。

彼らみたいな人たちがバックにつくと、緊張してしまいそうですが、

そこはさすがヘレン・メリル、ミュージシャンとの会話を楽しんで

余裕の歌声を聴かせます。

バンドとしての完成度と、ヴォーカルの充実ぶりが素晴らしい佳品です。


いくつかおススメ曲を。


③Never Will I Marry

メリル、サド、ロウズ、カッツ、ホール、カーター、エルヴィンによる演奏。

このアルバムを通じ、この編成が一番「しっくり」いっているように

私には思えます。

おそらく、カッツのアレンジが生きる組み合わせなのでしょう。

ピアノ、フリューゲルホーン、ギター、フルートが折り重なる

凝ったイントロから、「何かが始まる」という予感がしてしまいます。

続くメリルのリラックスしながらもしっとりとしたヴォーカルも快調。

ブレイクを何度かはさむ、凝ったバックにも難なくついていき、

「音楽的」なノドを披露します。

ホール~サドの渋いソロの後、カッツのソロが続きますが、

ここでのギターやフルート、フリューゲルホーンの絡み方がうまい!

おしゃべりが絶妙な音楽になってしまったかのようなこの演奏、

アルバムのハイライトの一つです。


④I Should Care

メリル、カッツ、ホール、カーター、エルヴィンの編成。

ここではメリルのかすれた声を生かした、

ちょっとだけ粘着性のある歌唱が聴きもの。

メリルによるスロー・バラードから、

バンドによるスインギーな演奏へ転換し、

ギターやピアノのソロについないでいくという構成も

素晴らしいものです。

ここでも、ブレイクを随所で生かしたアレンジがあります。

よくこんな大胆なことをさりげなくできるなと感心しきりです。


⑧My Funny Valentine

メリルとカーターのデュオ!

この超有名曲をヴォーカルとベースの組み合わせで、

しかも全く違和感なくできてしまうとは・・・・感服です。

二人とも無駄な音を発さず、つかず離れずの間合いでプレイしています。

途中、「Are you smart?」の歌詞のところでベースがテンポアップし、

グルーブ感が増す展開など、すごいよなぁ・・・

ジャズを聴いてて良かった。


1968年の録音。

全体に知的な雰囲気もあるのは、カッツのアレンジのせいでしょう。

実は、このアルバムには演奏者がかなりダブっている

「The Feeling is Mutual」(1965年録音)という名作があります。

ここでもカッツがアレンジをしているので、

興味のある方は聴き比べてみてください。

私はどちらも聴けて幸せです。