ジム・ホール(g)がボブ・ブルックマイヤー(tb)と作り上げた
もう一つの「アンダーカレント」。
ジャズ・ファンならばジム・ホールがビル・エヴァンス(p)とデュオを組み、
名作「アンダーカレント」を作ったことはご存じでしょう。
↓ジャケットも有名なこれです。
異色の楽器の組み合わせながら、見事なインタープレイが記録された
歴史的な名作です。
今回ご紹介するのは、そこまでの傑作とは言えないながら、
巨匠の二人が共通の友人・エヴァンスの傑作を(たぶん)意識しつつ、
デュオにトライしたという、愛すべき作品です。
実際、選曲が「アンダーカレント」とけっこうダブっています。
①スケーティング・イン・セントラルパーク
「アンダーカレント」でも実は一番人気がある(?)この曲が
冒頭に来ています。
ボブ・ブルックマイヤーがいつもの「ボーッ」とした音で
優しくメロディを吹いていきます。
この人の切れ味はないながらも柔らかい音色、
トロンボーンらしくて私は大好きです。
ブルックマイヤーのソロに続くジム・ホールは、
曲のリズムから離れそうで離れない、複雑ながら音楽的という、
不思議なソロをとっていきます。
ブルックマイヤーの「相の手」やホールのバックも巧みで
(エンディングでのバックのつけ方は特に素晴しい!)、
見事なインタープレイとなっています。
②アイ・ヒア・ア・ラプソディー
これも「アンダーカレント」で取り上げられている曲です。
当初、ホールがメロディの断片を交えた
抽象的なイントロを演奏をします。
ブルックマイヤーも加わって、対話をするような
形が続きます。
ライナーノートではバッハの対位法の影響を挙げていますが、
なるほどという感じです。
やがてブルックマイヤーのメロディーから本格的に曲に
入っていきますが、①のリラックスした雰囲気に比べると、
ここでの二人は熱気を帯びてきます。
本作の中でも「ガチンコ勝負」のトラックでしょう。
④ボディ・アンド・ソウル
ここでの聴きものはやはりホールか。
ブルックマイヤーが朗々と吹く中、バックのつけ方が
本当にうまい!
時に4ビート的なリズム、時に背景の空間を広げるカッティング、
やっぱり相手の演奏をちゃんと聴いているんですね。
ソロではシングル・トーンで浮遊感のある演奏をしたかと思えば、
やがて速度を落としてメロディーをまぶしてまとめ、
最後にメロディー本編につなげるという展開力もすごい。
脱帽です。
⑤イン・ア・センチメンタル・ムード
ブルックマイヤーがいい味を出しています。
きっと曲調と、ここで選択したリズムが彼にちょうど合っていたんでしょう。
やや無骨とも言える音色がここでは好ましく聞こえ、
ソロが終わると観客が大きな拍手を送っています。
メロディー部分での二人の息のあったところも聴きものです。
⑧セント・トーマス
最初のイントロ、いったい何の曲が始まったの?と思わせて
さりげなくメロディーに入っていくところが、
「さすがベテラン」と感心してしまいます。
ここでのホールはすごい!
解体したメロディーを織り交ぜたり、ウィンとうならせてみたり、
コードの連続で緩急をつけたりと、まさに変幻自在。
知的な風貌ですが、頭の中で鳴っている音楽は
相当過激なのでは・・・・・。
改めてその才能に感服です。
結果的に、「アンダーカレント」とは全く違うタッチの作品になっています。
もちろん、二人はこの傑作を意識しつつも、
全然別のものを作ろうとしていたのでしょう。
その思いきりのよさ、新しいことへの挑戦の意欲があふれていることが
この作品の魅力となっています。
1979年の録音。
2か月ほど前、吉祥寺のディスクユニオンで購入しましたが、
その後売場で全く見かけません。
人気があるのか、ないのか?
個人的にはジャズの対話を楽しむ盤としておススメです。

