デイブ・ブルーベック(p)の作品にしては
地味なのを選んじゃったかな・・・・と思ってCD裏を見ると、
何とダウンビート誌で5つ星を獲得したとあるではありませんか!
アメリカでは評価が高い作品のようですが、
日本では「テイク・ファイブ」が入っている「タイム・アウト」などの
陰に隠れて、あまり注目されていないように思います。
録音されたのは1953年、
ブルーベックもポール・デスモンド(as)も
まだ30歳ぐらいの若さ。
大学構内でのライブということもあって、
後の演奏に比べややアグレッシブなのがこの作品の
興味深いところ。
ブルーベックが時折見せる重たいタッチは、
「スイングしていない」という批判もあったようですが、
いま聴くとこんなアプローチもあるんだ、と新鮮に感じます。
キース・ジャレット(p)にも影響を与えたと言われる彼のスタイル、
実は非常にブルージーであることが分ります。
①ディーズ・フーリッシュ・シングス
デスモンドが「アルトのスタン・ゲッツ」になってしまったのか?
と思わせるほど淀みなく滑らかにメロディーを吹きます。
この音の密度だけでも相当すごいものがあります。
と、そこに拍手が巻き起こりブルーベックが登場。
ソロは最初のうち、音数が少ない非常に落ち着いたものですが、
やがてタッチが強くなり、リズミックに展開していきます。
その後の盛り上げ方はブルースと洗練が入り混じった
不思議なもの。
時に「フリーの先駆けでは?」とまで思ってしまう音の組合せに、
彼の並はずれた才能を感じてしまいます。
最後はデスモンドと共に再び静かな状態に戻りますが、
こうして聴いてみると「ジャズって何でもありなんだなあ」と
改めて実感です。
②パーテッド
デスモンドがいつも「ほんわか」吹いているかと思ったら大間違い。
ここでの彼は時に振り絞るように、パワフルに吹いています。
ソロが終わった後の観客の拍手からも熱気が伝わります。
ブルーベックも快調なソロ。
ここでは古典的なストライド奏法の影響を受けているかのような
ソロでぐいぐい引っ張っていきます。
ここでも観客は大盛り上がり。
④ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト
アルト・ソロのバックでピアノがメロディーをつけるという
大胆なアレンジからスタート。
デスモンドは途中、高音を駆使したソロで疾走します。
こんなプレイも後年は少なかったのでは。
逆にブルーベックは低音を生かしたソロで攻めてきます。
重たくなりすぎないギリギリのところで、テンポを変えながら進む
ソロは独特で、時にクラシック?とも思えるフレーズも。
この頃の彼はアイディアが泉のように湧き出していたのでは
ないでしょうか。
聴き直してみると、全然「地味な」作品ではないですね。
今回はご紹介しませんでしたが、③スターダストの美しさも
素晴らしいです。
1953年に、彼らの音楽は学生たちにどう響いたのでしょう。
まだエルヴィス・プレスリーも活躍していない時代に、
洗練とノリの良さを併せ持つ音楽はものすごく斬新に聞こえ、
若者の心を鷲づかみにしたのではないかと想像してしまうのですが。
