この作品を聴いている時、ふとジャケットを見て驚きました。
「イースト・コースト・ジャズシリーズNo.8」とあるではありませんか。
どうやらニューヨークで録音されたようです。
今まで、何となくこの作品は西海岸で吹き込まれたと考えていました。
カルテットの編成はアルトサックス、ギター、ベース、ドラムス。
ピアノレスの知的なサウンドで、
アレンジも計算され尽くしているところが
西海岸っぽいのです。
リーダーのハル・マキュージック(as)自身が書いた
オリジナルのライナーを読むと、
「ジェリー・マリガン(bs)のピアノレス・カルテットに触発された」
とあります。
なるほど、1955年という時代にあっても、
優れたミュージシャンというのは遠く離れた才能を意識し、
研究するのだなと感心しました。
ハル・マキュージックは1950年代後半にリーダー作を
次々に出したものの、あまり人気が出ないままシーンから
遠ざかってしまったようです。
本作を聴くと、強烈な個性にこそ欠けるものの、
さわやかな風を思わせるフレーズが次々に出てきます。
もう少し突き抜けていたらリー・コニッツ(as)みたいに
なってたんじゃないかなと想像してしまいます。
この作品の聴きどころはギターとアルトの絡み具合。
実際、オリジナル・ライナーを読むと、ハル自身はギターと
アルトの組み合わせに無限の音楽的可能性があると
考えていたようです。
ここではバリー・ガルブレイスがソロにバッキングに、
そしてアルトの共鳴役として多彩な役割を担っています。
例えば③「ゼイ・キャント・アウェイ・フロム・ミー」。
ここではメロディーをアルトとギターが共に奏でる
ところから始まります。
その後、いったんアルトがメロディーを引き取ったかと思うと、
再びハモリ出す。
親しみやすい曲に様々な工夫を重ねていますが、
決してそれが嫌味になりません。
ここでのハルのソロは静かな炎を燃やしていて、
それがこのトラックに生命力を与えています。
私の個人的なおススメは④「ララバイ・フォー・レスリー」です。
このバラードでハルはクラリネットを吹いていますが、
その音色が非常に美しい。
ガルブレイスも控えめなバックを付け、
いい意味で室内楽的なジャズになっています。
ジャケットでハルがクラリネットを吹いている写真が
使われていますが、
この一曲のためにこうしたデザインに
なったんじゃないかと思ってしまいます。
他のメンバーはベースがミルト・ヒントン、
ドラムスがオジー・ジョンソン。
二人とも名手と言えるでしょう。
この作品におさめられた10曲のうち、
8曲はファースト・テイクでOKだったそうです。
これだけの実力があるメンバーが1955年に優れた作品を作りながら、
一般的な評価にはつながらなかった・・・・。
ちょっと寂しい気がすると共に、
もしもハル・マキュージックが60年代まで活躍の場を
広げていたらどんな音楽を作っていただろうと考えてしまいます。
ジャズの世界、地味ながらキラリと光る才能を持った人が
たくさんいるんですね。
こうした才能に目をつけたベツレハムというレーベルにも
敬意を表したいと思います。
