ハル・マキュージック・カルテット | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

ハル・マキュージック



この作品を聴いている時、ふとジャケットを見て驚きました。

「イースト・コースト・ジャズシリーズNo.8」とあるではありませんか。

どうやらニューヨークで録音されたようです。

今まで、何となくこの作品は西海岸で吹き込まれたと考えていました。

カルテットの編成はアルトサックス、ギター、ベース、ドラムス。

ピアノレスの知的なサウンドで、

アレンジも計算され尽くしているところが

西海岸っぽいのです。

リーダーのハル・マキュージック(as)自身が書いた

オリジナルのライナーを読むと、

「ジェリー・マリガン(bs)のピアノレス・カルテットに触発された」

とあります。

なるほど、1955年という時代にあっても、

優れたミュージシャンというのは遠く離れた才能を意識し、

研究するのだなと感心しました。


ハル・マキュージックは1950年代後半にリーダー作を

次々に出したものの、あまり人気が出ないままシーンから

遠ざかってしまったようです。

本作を聴くと、強烈な個性にこそ欠けるものの、

さわやかな風を思わせるフレーズが次々に出てきます。

もう少し突き抜けていたらリー・コニッツ(as)みたいに

なってたんじゃないかなと想像してしまいます。


この作品の聴きどころはギターとアルトの絡み具合。

実際、オリジナル・ライナーを読むと、ハル自身はギターと

アルトの組み合わせに無限の音楽的可能性があると

考えていたようです。

ここではバリー・ガルブレイスがソロにバッキングに、

そしてアルトの共鳴役として多彩な役割を担っています。


例えば③「ゼイ・キャント・アウェイ・フロム・ミー」。

ここではメロディーをアルトとギターが共に奏でる

ところから始まります。

その後、いったんアルトがメロディーを引き取ったかと思うと、

再びハモリ出す。

親しみやすい曲に様々な工夫を重ねていますが、

決してそれが嫌味になりません。

ここでのハルのソロは静かな炎を燃やしていて、

それがこのトラックに生命力を与えています。


私の個人的なおススメは④「ララバイ・フォー・レスリー」です。

このバラードでハルはクラリネットを吹いていますが、

その音色が非常に美しい。

ガルブレイスも控えめなバックを付け、

いい意味で室内楽的なジャズになっています。

ジャケットでハルがクラリネットを吹いている写真が

使われていますが、

この一曲のためにこうしたデザインに

なったんじゃないかと思ってしまいます。


他のメンバーはベースがミルト・ヒントン、

ドラムスがオジー・ジョンソン。

二人とも名手と言えるでしょう。

この作品におさめられた10曲のうち、

8曲はファースト・テイクでOKだったそうです。

これだけの実力があるメンバーが1955年に優れた作品を作りながら、

一般的な評価にはつながらなかった・・・・。

ちょっと寂しい気がすると共に、

もしもハル・マキュージックが60年代まで活躍の場を

広げていたらどんな音楽を作っていただろうと考えてしまいます。

ジャズの世界、地味ながらキラリと光る才能を持った人が

たくさんいるんですね。

こうした才能に目をつけたベツレハムというレーベルにも

敬意を表したいと思います。