ロードムービーが好きだ。


最近だと韓国映画の「ベイビーブローカー」も、胸を締め付けられるような切なさの中に最後は希望が見えて、とても良かった。


私のロードムービー好きの原点は「レインマン」だと思う。

「カクテル」のトム・クルーズのかっこよさに惚れ込んで、友達と「レインマン」を観に行った。カクテルはビデオで観たと思う(我が家のビデオデッキはベータだった)。


あの頃、私も含め、周りの友達の中でトム・クルーズは大人気だった。

そんな中ショーン・コネリーが好きという子がいて、なんであんなおじいちゃんを?と不思議だったけど、今思えばあの子は見る目があったんだな。私は男の渋いかっこよさが全然分かっていなかった。


とにかくトム・クルーズ目当てに見に行った「レインマン」で、ダスティン・ホフマンに魂を持ってかれた。


久しぶりにスクリーンで見るダスティン・ホフマンはやっぱり圧巻だった。


この映画の好きなところはたくさんあるけれど、冒頭の曲がまず好き。

The Belle SistersのIKO IKO(アイコアイコ)。

この曲を聴いたらすぐに、トムクルーズとダスティンホフマンが並んで歩いている場面が頭に浮かぶくらいIKO IKOと言えばレインマンと刷り込みされちゃってる。



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トム・クルーズが演じるチャーリーは、なかなか強欲で嫌な奴だ。口から出まかせを並べて商売をする車のディーラー。

若いけれどお金はそれなりに稼いでいそう。

恋人と週末旅行へ出掛けても楽しい会話をするわけでもなく終始ピリついている。

そんなチャーリーの元に、長い間縁を切っていた父親が亡くなったとの連絡が入る。お葬式に参列して、遺言書の開封が済んだらさっさと帰って仕事をしようと思っていたチャーリーだけど、遺言書の内容は想像していたものと全然違っていた。

資産家の父親がチャーリーに遺したものは、二人が喧嘩別れする原因ともなった車と、父が丹精込めて育てていた薔薇だけ。残りの300万ドルは何者かに譲られ信託財産として管理されることとなる。

300万ドルもの遺産が、息子の自分ではなく、誰のものになるのか。怒り狂うチャーリー。


遺産を手にする者を確認する為に、ある施設へ押し掛ける。

そこで出会ったのは「兄」のレイモンド。

レイモンドは自閉症のため、施設で暮らしていた。

毎日同じ時間に起きて、同じ時間に食事をする。曜日ごとに決まった食事内容で、調味料の種類も配置もすべていつも通りでなければならない。毎日決まったテレビ番組を見て、同じ時間に眠りにつく。

全てが自分なりのルールに則って行われる生活。

イレギュラーが発生するとパニックを起こしてしまう。


チャーリーは、今まで誰も兄の存在を教えてくれなかったことに怒り、その兄が会話もまともにできないような人物であることに怒り、お金の価値もわからないような兄が300万ドルもの遺産を手にすることに怒りまくる。

そしてレイモンドを施設から連れ出してしまう。

ロサンゼルスに戻って、遺産の半分150万ドルを自分のものにする為裁判を起こそうとしたのだ。


ここまでは、チャーリーはとにかくいけすかない嫌な奴だ。すごく偉そうだし。恋人のスザンナはとても優しくて魅力的なのに、なんでチャーリーなんか好きになったんだろうと思うくらいに、チャーリーのいいところが見つけられない。


だけど、レイモンドと2人でモーテルに泊まりながら旅をするうちに愛情が芽生え始める。


私はこの映画で初めて自閉症という症状があることを知った。

自閉症にもいろいろな症状があるのだろうけど、何かの能力に秀でている場合があるということを知った。


レイモンドは記憶力に優れ、特に数字に強い。

そのことに気付いてカジノで大儲けして、チャーリーのビジネスのピンチを救う。

カジノの場面に続く一連のエピソードで、2人の絆が深まっていくのが押し付けがましくなく描かれていく。


チャーリーが幼い頃、辛いことや寂しいことがあるといつもレインマンが歌を歌ってくれた。いわゆるイマジナリーフレンドだ。

いつしかチャーリーも成長し、レインマンは現れなくなるのだけど、そのレインマンが兄のレイモンドだったと気がつく瞬間のトム・クルーズの表情はとても素晴らしいと思う。


今までに何十回も観ているレインマンだけど、今回初めて「レイモンドがレインマン」、幼い子がレイモンドを上手く発音できなくてレインマンになっちゃってたのかな、と思った。今更だけど。

私、気がつくの遅すぎるかも。


雨の日は外に出ないと言って、旅の途中でモーテルから出ない日があったりしてチャーリーを激怒させるレイは、全然レインマンじゃないじゃんと思っていたけど、レインマンてそういうことじゃなかったのね。ずっと勘違いしてたわ。


こういうことは、今の時代ならネットで検索すれば、考察もさまざま出てくると思うけど、敢えてしない。

今回のように、何十回目かのレインマンを観て「ああっ!」と突如気が付くような体験をしたい為に敢えて調べない。

だから、私が思ったのが正しいかどうかも分からないけど、分からないままでいいと思ってる。


最後のお別れのシーンは、切なくもハッピーエンドで、しみじみと良い。

重度の自閉症のレイモンドはやっぱり施設に戻っていくけれど、チャーリーはまたすぐに会いにいくと約束をする。

会いに行ける家族ができたことで、チャーリーが救われたんだろうなぁ。


それにしてもこの時代の映画の翻訳はほぼ戸田奈津子さん。戸田奈津子さん全盛の時代が、私の青春時代と被るせいか、戸田さんのお名前をスクリーンで見るたびになんとも言えない懐かしい気持ちになる。

最近は、翻訳家の方もたくさんいらっしゃるから、お名前を全然覚えられないんだけど、私にとって映画翻訳といえば戸田奈津子さんなんだよなぁ。

そういえばトムクルーズも戸田さん大好きよね。

最近の映画のスクリーンで戸田さんのお名前を拝見することはほとんどなくなってしまったけれど、いつまでもお元気でいてほしい。