Black Lives Matter、この言葉を覚えていますか?

 

 

今年の5月25日、アメリカのミネアポリス州にてジョージ・フロイドというアフリカ系アメリカ人が、警察官の不適切な拘束方法によって死亡させられた事件が発端となり、アメリカ全土で人種差別とそれに付随する残虐行為に抗議する組織的な運動の総称です。

HIP HOPというジャンル、及びカルチャーは、アフリカ系アメリカ人が過去に受けた人種差別なども含めた歴史とは切っても切れない物で、そのHIP HOPに影響を受けたアーティストの数は自分自身も含めてラッパー・DJ問わず世界中に計り知れない数がいると思います。

 

だからこそ普段の生活では人種差別問題とは程遠い島国・日本で暮らす僕らも、彼らの存在や主張を尊重するために、自分たちもBlack Lives Matterに声を上げるような感覚で、当時SNSに #BlackOutTuesday #TheShowMustBePaused と言った言葉と共に真っ黒な画像を貼っていた。

過去にアフリカ系アメリカ人が受けていた差別や歴史的背景をストーリーに上げたり、「フォロワーのみんなもHIP HOPに影響を受けた音楽を聴いてる人がいると思う!差別がなくなりますように・・・」などと言ったコメント共にポストする人もいたと思う。

あまりこの問題に興味がない人もアーティストや著名人が真っ黒な画像を上げている時期があったのを覚えているでしょう?

そしてほとんどの人がそれ以降、このBlack Lives Matterに対する運動や意見を表明している所をSNS上では見ていない。

そりゃそうだ、言ってしまえば俺たちには直接的には関係のない問題であり、理解しがたい思想なのだから一過性のポーズで終わるのも仕方ないことだと思う。

やっとかないとまずいみたいな同調圧力は間違いなく働いてたでしょうね。

 

一方、アメリカではBlack Lives Matterの名を借りた主にアフリカ系アメリカ人による略奪・暴力・強姦などの大規模な暴動が起こった。

アフリカ系アメリカ人が受けてきた差別は痛ましい歴史的事実なのはもちろん理解出来るのだけど、これでは言ってることとやってることがめちゃくちゃでは?

過去の自分の先祖の恨みを晴らす為に、なんの罪もない白人女性をレイプして良いのか、店を破壊して商品を略奪していいのか、その暴動によって小さな子供の命が失われていることには目を瞑っていいのか。

報復が報復を呼び、繰り返していく中で、俺の中ではBlack Lives Matterに対して「?」マークが付いていった。

 

それから2ヶ月ほどして、コロナの影響でシーズンが中断していたアメリカプロバスケットボールリーグ「NBA」が再開した。

無類のバスケ好きとしてこれ以上嬉しいニュースはなかったのだけど、「この人種差別問題はバスケットをプレイするより重要な問題だ」と主張して、カイリー・アービングなどの有名選手がリーグ不参加を表明した。

更にスター選手、レブロン・ジェームスの意見もありNBAはリーグ全体でBlack Lives Matterをサポートするという方針で、実際に選手たちがプレイするコート上には大きくBlack Lives Matterと書かれ、言わずもがなスポーツ界にも色濃く影響を及ぼす社会問題に発展していった。

 

そんな中で先日、スロベニア人(白人)のルカ・ドンチッチ選手に対してアフリカ系アメリカ人のモントレル・ハレル選手が試合中に浴びせたとされる言葉が物議を醸している。

試合中に熱くなったハレルはトラッシュトーク(NBAではよくある煽り合い)の最中にドンチッチに対して「bitch ass, white boy」と放ったと言われている。

NBAがBlack Lives Matterをサポートしシーズンを再開したにも関わらず、アフリカ系アメリカ人の選手が白人選手に対して差別的発言をしたというリーグの方針をひっくり返す大きな矛盾を生むこの行為はSNSを中心に多くの反響を生んだ。

有名なコメンテーターのチャールズ・バークレーもInside the NBAという番組で「この発言が事実で、もし彼らの立場(白人とアフリカ系アメリカ人)が逆だったとしたら大変なことになっていた」というようなコメントもしている。

所謂Double Standardということだ、もしドンチッチが「bitch ass, N**ga」とハレルに発言していたらこの問題はこんな物じゃ済まなかっただろう。

ハレルは既にドンチッチに謝罪しているそうだけど、この行動を考えてもBlack Lives Matterに、そしてそれをサポートするNBAに対しても「?」がつく。

 

そして現在。

8月23日にジェイコブ・ブレイクというアフリカ系アメリカ人の男性が、アメリカ・ウィスコンシン州で警官に七発撃たれて死亡した。

この事件の模様はSNSに動画も上がりすぐさま全世界に飛び火、既に #JusticeForBlake というハッシュタグがSNSで多く見られる。

この事件を受けてウィスコンシン州に本拠地を置くNBAのミルウォーキー・バックスは今日の試合をボイコットした。もちろん前代未聞。ありえない。

「バスケットをプレイすることより大切なことがある、こういった問題が解決されないのならプレイ出来ない」というような意思だと思う。

ボイコットのリーダーになったのはバックス所属のジョージ・ヒル選手で、これを受けてNBAは今日の試合を急遽全て中止、今シーズンの中断も視野に入れて緊急会議を開くらしい。

 

ジェイコブ・ブレイクが警官に七発撃たれて死亡した事件は、なぜ警官はそんなに発砲したのか、更に後部座席には彼の子供が三人乗っていたことからその残虐性もこの問題に火に油を注いでいる。

しかしながら警官が彼を抑止しても車に戻ろうとしたこと(銃で応戦しようとした?)、前科が多くあったことから、仕方のない事件(?)という意見も少なからずあるよう。

更にNBAのファンからは「この事件を受けてなぜ試合までボイコットするのかわからない」、「それなら差別がなくなるまで一生シーズンを再開しないのか」、「バスケ選手じゃなくて政治家になれ」みたいな声も上がっています。

確かにこの一試合のみのボイコットであればポーズと思われても仕方ない(そんなことはないだろうけど)かもしれないし、プレイしたい選手もいただろうし、尚且つバックスが勝手に決めたことでリーグ全体に影響を及ぼしたこと、更にコロナもあってNBAはめちゃくちゃになってしまった。

 

5月に真っ黒な画像をSNSにアップしてから、自分のつたない知識で考えた結果、この3ヶ月間で感じたことはこの問題を理解するのは余りにも難しい。

簡単にBlack Lives Matterとか言ってSNS上でも参加するべきじゃない。理解したとしても彼らの立場になって考えることは不可能に近い。

「男はみんな浮気する」とか「女は結局浮気する」とか言うと「男って一くくりにするな」とか「女ってだけでそういう目でみるのやめて」っていうのと同じで、アフリカ系アメリカ人全員が暴動したり略奪してるわけじゃないし、白人全員が差別主義者じゃないし、みんなが人殺ししてるわけじゃないし、本当に難しい問題。

 

ただ唯一言えるのは、「知ろうとする」こと、「理解しようとする」こと、は間違ってないと思う。

 

好きな芸能人のYouTubeとか、モデルのインスタ眺めて〇〇しか勝たんとかぴえんとか言ってる時間を否定はしないけど、世界で起こっている問題について理解を深める時間に充てるのも悪くないのでは。

 

#NBA #WholeNewGame #knowledgeispower