今日も藤子・F・不二雄先生のSF短編作の紹介です。


「山寺グラフティ」というタイトルの通り、山形県の山寺という土地を舞台にしたマンガです。

藤子・F・不二雄先生のSF短編というのはサイエンス・フィクションのSFではなく、少し不思議のSFなのですが、まさにこの作品こそその完成形かなと思わせます。


山寺で子供の頃から一緒に育った幼馴染の加藤広康と木地かおる。

特に恋愛関係として特別な意識をしたことはなかったが、二人はいつも仲良く一緒にいた。

しかし二人が高校生のある日、かおるは若くして亡くなってしまう。

広康は高校卒業後、上京してイラストレーターとして働き始める。

そんなある日、広康はかおるにそっくりな女の子を見かけるのだ。


東京で出会ったかおるにそっくりな女の子と広康の不思議な日々。

そこにはどこか懐かしい青春の思い出に包まれた、不思議ながら幸せな日々。

一体彼女は何者で、二人はどうなっていくのか。


こんなふうに書くと、ミステリアスな展開、一見ホラーじみて聞こえますが、そういった感じはまったくしません。

そこには山寺という土地の不思議な雰囲気と、青春の甘く切ない感じが上手に紡がれていて、読んでいてとても心地良さを感じます。

読後感の良さは人の死と言うものを扱っている作品としては最上級ではないでしょうか。


この作品は藤子・F・不二雄大全集(少年SF短編1)に収録されています。