私は、まず舞台公式のSTORYを読み、アニメ「Wake Up, Girls!七人のアイドル」のストーリーが、アニメのキャラクターを演じる声優から成るユニットWake Up, Girls!をメインとするキャスト陣によって再現されるものと思って鑑賞した。

【良かった点】
・キャスト陣の演技
キャスト陣演じる登場人物はアニメのキャラクターそのもの。
スポットライトが当たっていない人物も演技をしていて、そちらに注目しても楽しめた。
また、演技からはキャラクターの感情がすごく伝わった。

・お笑い要素やI-1clubのライブ
シリアスなストーリーの中に、中の人要素を取り入れたパートなどの笑いどころがあったり、I-1clubのライブが差し込まれていたりすることで、アニメ視聴済でストーリーを知っている人でも飽きずに楽しめる。

【納得のいかなかった点】
・メッセージ性
追加エピソードにおける「他人を幸せにできたら自分に返ってくる」という言葉。
佳乃と菜々美の「目標がないとモチベーションが上がらない」という問題への解決案であるが、真夢が話をするだけで説得できてしまうことには違和感があり、共感できなかった。

・アニメWake Up, Girls!との齟齬
上記のメッセージは「他人を幸せにするためには、まず自分が幸せになる必要がある」というTVアニメWake Up, Girls!において真夢が導き出した結論と完全に逆のことを言っている。
また勾当台公園ライブで7人全員が完全に立ち上がることができてしまったら、TVアニメにおいて直面した様々の問題、特にI-1club時代の話を真夢にきくのがタブーとされていて、真夢もなかなか話そうとしなかったのは何だったのか。

・大田組
我々の代表のような存在として登場する大田組。
彼らは盛り上げたいのか知らないが、WUGコールを強要してくるし、WUGは色々あったにせよ勾当台公園でライブをしてデビューするのだから、WUGを案じているのがよくわからない。

【結論】
キャスト陣の演技やシーン一つ一つの舞台演出、それによる七人のアイドルの再現は良かったが、追加で描かれた部分に納得いかない点が多く、自分にとってはあまり感動できなかった。
だから追加で描かれたシーンは要らない。松田の「伊達藩士の名折れだからな」の後は、アニメ同様に、佳乃の「伊達藩士が聞いて呆れる」に繋がれば良い。
















そう思っていた。
途中までは。













5回目にして、新しい視点を取り入れて鑑賞した。
それは、この舞台は、アニメWUGのキャラクター達によって演じられている、WUG結成時のドキュメンタリーであり、我々観客はWUGがどのような逆境を乗り越えて結成されたかを知らない「アニメの世界のワグナー」という視点である。

すると納得いかなかった部分が腑に落ちた。

アニメの世界のワグナーにとっては「7人は大きな苦難を乗り越えて勾当台公園ライブに至り、そして自分を幸せにしつつ、多くの人を幸せにしたいという志をもってアイドルをやっている」ということを知ることで感動できてしまうのだ。

でもドキュメンタリーをやる上で問題があって、アニメシリーズで描かれていたように「勾当台公園ライブでデビューしたけど、しばらくの間は7人の絆なんてものはなかった」なんて言えないでしょ?
だから追加のエピソードは「ドキュメンタリー用に考えられた作り話」。とはいえ、佳乃が真夢に対して突っかかったことは内容は違えど事件としては確かにあったわけで(アニメ8話)、ファン向けの優しい嘘ってところかな。


さらに、納得できなくはなかったが、少し疑問に感じていた点についても合点がいった。

例えば大田による「島田真夢じゃないか」が登場しないことや、出演者は頑なにキャラクターを役扱いしないし、役者としての名前を名乗らないことなどがある。




【まとめ】
舞台Wake Up, Girls!「青葉の記録」は最高の2.5次元舞台だった。