「全ての三角形は二等辺三角形であることの証明」という数学の面白いネタがあります。
どんな三角形も二等辺三角形であることが、なんと証明できちゃうんですよね。
もちろんそんなはずがないんですが、うまく書かれていて証明の誤りになかなか気付かないようになっているんですね。
この証明は有名なので気になる人は自分で検索してみて、どこが間違っているか考えてみてください。
今日書きたいのはこっち。
同様のネタで「全ての鈍角は直角である」の証明もあります。
こっちはあまり知られていないようですので、書いておこうと思います。
似たようなものなんですけど、こっちの方が命題の文章が無茶言ってて面白いですね。
直角より大きいのが鈍角って習ったんですけど、それは全部直角なんですってよ。
鈍角とは?って問われていますね。禅っぽいです。
証明の前に余談ですが、
この本
「数学の精神・思想・方法」 米山國蔵 著 (東海大学出版会)
まさか、この超真面目な本の中に「全ての三角形は二等辺三角形である」の証明が付録として書かれているんですね。
ほらね
まあ鈍角は直角の方は文献は無いでしょうね。
以下の証明は、昔友達から教えてもらったものを思い出しながら書きました。
全ての鈍角は直角であることの証明(どこかに誤りがあります)
下図のように点ABCDをAB=CD(長さが同じ)で∠ABCを90度に、そして∠BCDを鈍角にとります。
この∠BCDが直角になることを証明します。
AとDをつなぎ、ADの垂直二等分線をとります。さらにBCの垂直二等分線をとります。
ADとBCの二等分点をそれぞれP、Qとしておきましょう。
この2つの垂直二等分線が交わる点をOとすると、Oは四角形ABCDの内部にあるか外部にあるかになります。
(1)Oが四角形ABCDの内部にある場合、OA、OB、OC、ODをつなぐと次の図になります。
△AOP と△DOPを見ましょう。PがADの二等分点であることからAP=DPとなります。
OPは共通であり、∠APO=∠DPO=90度です。
よって△AOPと△DOPは合同になります。よってAO=DOとなります。
△BOQと△COQも同様に考えると、
QがBCの二等分点であることからBQ=CQ、OQは共通、∠OQB=∠OQC=90度ですから、△BOQと△COQは合同になります。
よってBO=COとなり、さらに∠OBQ=∠OCQもわかります。
次に△ABOと△DCOに注目します。
上の議論よりAO=DO、BO=COとなり、AB=DCは初期条件から成り立ちます。
よって△ABOと△DCOは合同となります。
ここから、∠ABO=∠DCOがわかります。
よって、
∠ABC=∠ABO+∠OBQ=∠DCO+∠OCQ=∠BCDとなるので、∠BCDが90度であることが示されました。
(2)Oが四角形ABCDの外部にある場合、OA、OB、OC、ODをつないだものが次の図です。
先ほどと同様に、
AP=DP、OPは共通、∠APO=∠DPO=90度から△AOPと△DOPは合同となり、AO=DOが導かれます。
BQ=CQ、OQは共通、∠OQB=∠OQC=90度から、△BOQと△COQは合同となり、BO=CO、∠OBQ=∠OCQが導かれます。
さらに同様に続けて、
AO=DO、BO=CO、AB=DCから△ABOと△DCOが合同となり、∠ABO=∠DCOとなります。
よって、
∠ABC=∠ABO-∠OBQ=∠DCO-∠OCQ=∠BCDとなり、∠BCDが90度であることが示されます。
(証明終わり)